キリスト教関係研究所2

 「キリスト教関係研究所」という連載を考えるきっかけは、以前に解放の神学を扱った際に、国際シンポジウム「解放の神学」(1985.11.29-12.1)を企画した、上智大学社会正義研究所について調べ、その後、上智大学グローバルコンサーン研究所に改組されたことがわかったことである。日本のキリスト教研究において、研究所や研究センターという名称で呼ばれることが多い機関が地道ではあるが重要な役割を果たしてきたことはこれまでも理解はしていたが、研究所の改組などを含めて諸研究所の足跡を把握しておくことが必要であると感じられた。これがこの連載の動機である。

 今回は、この連載のきっかけになった、上智大学社会正義研究所とグローバルコンサーン研究所について。

 この改組については、「2009年度活動報告書 社会正義からグローバル・コンサーンへ」という「社会正義研究所活動報告書(2009年度)」に説明がなされている。この報告書「巻頭言」の冒頭は次のようになっている。この報告書は、グローバルコンサーン研究所のHPのフロントページからPDFファイルをダウンロードできるようになっている。

「新たにグローバル・コンサーン研究所として 中野 晃一 (上智大学社会正義研究所所長代行) ここ数年、下川雅嗣所長のもとで、社会正義研究所を「Center of Global Concern」として改組するべく努力を重ねてまいりましたが、ついに2010年4月1日から本研究所は新たにグローバル・コンサーン研究所(Institute of Global Concern、略称IGC)として再出発することになりました。新年度からは研究所のホームページを充実させ、研究成果や活動報告を発信していく計画ですが、今回は、社会正義研究所として最後となるこのニュースレターの刊行によって、皆さまに研究成果のご紹介と活動内容のご報告を行いたいと考えました。」

 この社会正義研究所の成立の経緯については、調査が必要であるが、解放の神学との関わりや、1967年に教皇パウロ6世のよって設立された「政治と平和委員会」(日本では、1970年に「政治と平和司教委員会」が発足し、74年に現在の「日本カトリック正義と平和協議会」(正平協)がスタート)が背景にあるものと想像される。
 おそらく、この研究所の改組は、「解放の神学」の変遷という歴史の中に位置していると解釈できるかもしれない。

 ブローバル・コンサーン研究所については、HPのフロントページで、次のように説明されている。
「上智大学グローバル・コンサーン研究所は、グローバル化する社会で生じる貧困や暴力に関わる諸問題についての調査研究、講演会等を通じて学生や社会の意識化を図るとともに、世界のひとびとの尊厳と連帯の実現、またそれを脅かす様々な問題をグローバルな視点から研究することを目的としています。

その時代時代に応じて、取り組むニーズが高いと思われる社会問題をテーマとして、国内外の諸大学、人権・難民・環境などに関連する国際機関、さらには諸問題の現場で活動している人々との学際的研究交流を広めながら、キリスト教的 ヒューマニズムに基づいた「人道と人権」の観点から分析 し、どのように社会正義の促進といった実践につなげていくかをテーマにシンポジウムを行ってきました。また、設立当初の全学的な関心事であった難民問題については、設立当初から長年にわたってアフリカ難民現地調査研究活動を継続すると同時に、近年では日本の難民受け入れ政策等の問題についての研究も行っており、難民問題研究に関しては大きな蓄積があります。 それ以外にも適宜、個人研究、学際的共同研究を短期・長期にわたって行っております。

教育活動としては、研究所所員が中心となって全学共通科目「グローバル・コンサーンと平和の促進」が開講されています。また、他に国内外の研究者や諸問題の現場で活動している人を招聘し、学外にも開かれた講演会やワークショップを開催しています。」

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キリスト教関係研究所1

 日本にも、大学を中心にさまざまな「キリスト教」に関連した研究所が存在し、研究を活発に行っている。それらの研究所の活動を視野に入れることは、日本でキリスト教研究を行う場合に、大いに意味があるように思われる。
 二日前の本ブログでは、東京基督教大学附属の共立基督教研究所について、触れた。

 研究所HPのフロントページでは、次のように説明されている。

「私たちの研究所では、「宗教が人間文化に占める重要な位置」を基本に置いて研究を進めています。特に現在、キリスト教が市民社会の形成に果たす役割を、「宗教の私事性と公共性」をキーワードに研究し、近年盛んになってきた公共哲学という学問ジャンルの確立に力を注いでいます。
 また、英国オックスフォード大学神学部のA・マクグラス教授の主催する「科学と宗教」セミナー(テンプルトン財団支援)と連携した研究をおこなうなど、キリスト教と現代諸科学・諸文化との深く広い対話をとおした新たな知の創発を求めて研究活動を展開しています。こうした研究においては、学術的アプローチのみならず市民社会への実践的コミットメントを重視し、これらの活動を通して、日本と世界のキリスト教界との協力のもとに、平和を創造する働きに携わっていきたいと願っています。」

 この研究所では、いつくかのプロジェクトが並行して進められている。現在の研究所HPは更新が遅れており、最新のものではないと思われるが、たとえば、次のようなものが挙げられている。

・共立福祉研究センター
・Science for Ministry in Japan
・科学と宗教
・キリスト教と日本文化

 本来は、これらに並んで、「キリスト教と政治」が位置するはずである。
 この研究所は、日本のキリスト教関係としては、かなり活発に活動しており、研究会や講演・シンポジウムの開催、研究冊子(寄贈いただいたものについては、本ブログでも随時紹介してきている)の刊行などがそれぞれのプロジェクト単位で行われている。

日本学術会議について

 本ブログでも、日本学術会議『学術の動向』については、簡単な紹介を行ってきたが、第23期が終了になるので、別の角度から紹介を行っておきたい。
 それは、News Letterの発行であり、例えば、哲学思想関係の研究者が属する第一部会のニューズレターは、学術会議のHPで、公開されている。
http://www.scj.go.jp/ja/member/iinkai/1bu/index.html の頁の後半で部分からPDFファイルをダウンロードできるようになっている。(わかりにくい気もするが・・・。)

 ニューズレターの最新号の冒頭の杉田さんによる挨拶文は次の通り。

「第一部長 杉田 敦

 今期の活動も間もなく終わりとなります。この3年間を振り返りますと、何と言っても、人文・社会科学の振興に関して、第一部から発信したことが特筆すべき成果として挙げられます。ジェンダー平等の推進についても、重要な進展が見られました。
 現在の政治・社会状況では、ある限られた人間集団にとっての、ある限られた時間の中での「利益」が専ら追求され、人類の普遍的な価値の探究は等閑視されがちですが、こうした趨勢に抗して、人文・社会科学的な知見にもとづく、深い学術の展開が求められています。
 国立大学での運営交付金の減額や人文・社会科学分野の縮小は由々しき問題ですが、それに加えて、軍事研究のような特定分野への予算が劇的に拡大する一方で、他分野の研究は困難になりつつあります。このような、時の政府の恣意的な判断にもとづく学術への介入は、建設的な効果をもたらしません。
 今期は、日本学術会議全体の課題として、安全保障と学術との関係についても審議しましたが、そこで問題となったのも、まさにこうした、学術の「動員」に抗して「学問の自由」と学術の健全な発展をどう守るかという論点でした。
 10月からの次期においても、上記の諸課題には基本的には変化はないと思います。日本学術会議の中で、歴史的な視点、哲学的な視点、そして制度的な視点など、独自の視点を有する第一部の活動が必要です。
 会員として残る皆様のご活躍に期待します。そして、すべての皆様、本当にお疲れ様でした。
末筆ながら、小森田前部長と恒吉前幹事、私を支えていただいた三成副部長、小松幹事、藤原幹事、終始連携していただいた井野瀬副会長、そして事務局各位に感謝をささげます。」

 そのほかに、17頁からは、第一部幹事 藤原聖子さんによる、「世界人文学会議(World Humanities Conference)報告」も、掲載されている。

 日本学術会議について、必ずしも、一般の研究者の関心は高いとは言えないようにも感じているが、有益な情報も少なからず発見でき、たまに、HPを覗いてみるのはいかがであろうか。

近代日本・キリスト教・愛国心

 本日は、東京(日本教育会館)にて、京都大学文学研究科・思想文化学系の大学院進学説明会を行い、先ほど、帰宅した。
 この件については、すでに本ブログで何度かアナウンス済みであるので、ここでは省略したい。
 今回の記事は、昨日、東京基督教大学で行われた、研究発表のことである。それは、東京基督教学会付属の共立基督教研究所においてこの4月よりはじまった「キリスト教と政治」研究会での研究発表である。
 発表タイトルは、「戦中・戦後の日本のキリスト教と愛国心」というものであり、わたくしのこれまでの研究をまとめる機会とさせていただいた。発表後の質疑も活発に行われ、わたくしも得るところが多くあった。研究所の方々とも知り合えになることができ、今後も、機会があれば、研究上の交流を行いたいと思う。
 研究発表前に、キャンパスを案内していただいたが、落ち着いた雰囲気で、比較的低層の建物が、しゅったり配置されており、勉強と研究にとって、よい環境である。教員と学生の距離も近いように思われた。

 今回、研究発表の機会をいただいた、「キリスト教と政治」研究会の趣旨は、以下に掲載の通りであるが、わたくしの研究テーマとかなり近いことがおわかりいただけるものと思う。
毛入会の件きゅかいの

「冷戦後急速なグローバリズムで弱体化した市民社会は、各地で強力なリーダーシップを求めるポピュリズムを生んだ。だがこれは民主化を意味しない。国権と排外的なナショナリズムが強められてきたからだ。その結果、「安全」という名目のもとに「自由」や「平等」といった近代民主主義の理想は退けられ、「立憲主義」や「人権」といったこれまで自明であった概念が脇に追いやられるようになってしまった。本邦も例外ではない。現政権とつながりの深い日本会議の反動的な動きからも明らかであろう。このような状況において日本のキリスト教会は政治についてどのように考え、応答していくべきなのだろうか。

 政治との関係において、これまでの日本の教会にはふたつの異なる方向性があった。ひとつは、抗議やデモを通して直接的な行動をするものである。もうひとつは、福音を救霊に限定し、政治行動についてはそれぞれの裁量に任せるというものである。現代において両者の立場は対立しており、議論不可能な隘路に迷い込んだといってもよい。しかしながら、そのような対立は、神学的な議論を深めるよい機会である。まさにそこに政治的な対立があるからこそ、その背後にある神学的な原理を浮き彫りにし、その正誤を明らかにする必要が生まれるからだ。

 本研究会は、近代政治とキリスト教の関係を歴史・神学的に検証し、現代的な問題への提言を目的とする。そうするにあたって三つの軸が考えられるだろう。ひとつは、宗教改革以降のプロテスタント教会の政治との関わり方である。宗教改革の伝統は近代民主主義の理念とかならずしも調和的であったわけではない。自由、平等、寛容の精神は、19世紀以降の自由主義的なキリスト教が重んじてきたものではあれ、反リベラルな立場をとる諸教会は神学的な考察を深めてこなかった。とりわけアメリカのファンダメンタリズムや戦後の福音主義の流れをくむ諸教会は、政治から退き、二元論的な福音理解を提唱してきた。そうした教会のなかに、排外主義や極端なナショナリズムが広まりつつある。二つ目は、教会の政治参加に積極的な立場である。なるほど主流派やカトリック教会は、戦後日本における教会の政治参加を牽引してきたといってよいだろう。だがそれは現代においてひとつの運動と化し、神学的な批判や新しい世代に説得力をもつ神学的な主張を提示できていない。三つ目は、キリスト教世界観や神の国といった東京基督教大学が重んじてきた概念群である。これら三つの軸を近年の聖書学や歴史研究の成果をふまえてもう一度神学的に検討し、現代日本の状況に適した神学を紡ぎ出していかなければならない。

 本研究会では2ヶ月に一度程度の定例会を開き、聖書神学、歴史神学、組織神学、政治神学、宣教学、実践神学の異なる視点から本対象について議論を深めていく。研究所所員の発表に加えて、学外の研究者との交流も促進する。そのような議論を重ねることで、福音派にかぎらず、現代日本のキリスト教会が今後どのように政治を考え、参加し、批判すべきかの指針を提供していきたい。」

雑誌紹介16

 今回紹介するのは、わたくしが長年、編集委員として関わってきた、京都ユダヤ思想学会の学会誌です。充実した内容の学会誌ですが、編集担当者の努力によって支えられています。わたくしは、今回で、編集委員を離れることになりました。今後のいっそうの充実をお祈りいたします。

京都ユダヤ思想学会
『京都ユダヤ思想』第8号
2017年。

【巻頭言】 細見和之「私のブーバー研究、事始め」

【論文】 神田愛子「神の働きから見た神の本質と属性──『迷える者の手引き』:53-54より」

第九回学術大会シンポジウム
  聖戦と十字軍──現代・歴史・一神教が交差するところ

【基調講演】 山内進「十字軍と「正戦」の思想」
【提題】 勝村弘也「聖書における聖戦をめぐって」
      小原克博「「十字軍の思想」の現在──「浄化」への多様な欲求」
      中田 考「十字軍とジハード」
      合田正人「現代思想における「正戦」「十字軍」「聖戦」」
【所感】 小田淑子「イスラーム研究者によるシンポジウム所感」

【書評】 武藤慎一『宗教を再考する──中東を要に、東西へ』(評:新免貢)
      佐藤貴史「思想の歴史を書くこと─丸山空大氏の書評に対する感謝と応答」
プロフィール

LogosOffice

Author:LogosOffice
 これまで本ブログは、2013年度より2015年度まで科学研究費の交付(代表者・芦名定道)を受けて行われた研究を中心に、キリスト教思想研究に関わる情報を発信してきました。しかし、2016年度からの新しい研究プロジェクトに関連した事柄は、主に別のブログで取り扱うことにし、本ブログでは、これ以外の記事について継続的に内容を更新します(新しい科研に関するものも、記事の継続性の観点から一部はこちらでも扱います)。
 なお、本ブログにもしばしばコメントが寄せられますが、多忙のため、原則として応答その他の取り扱いはいたしません。

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