FC2ブログ

H・R・ニーバー神学13

 ニーバーについての研究書の紹介を続けます。やはり、プロテスタント倫理は、中心テーマです。

William Werpehowski,
American Protestant Ethics and the Legacy of H. Richard Niebuhr,
Georgetown University Press, 2002.

Preface
One  Questions in Christian Ethics
Two  A Theology of Permanent Revolution
Three Love, Justice, and the Whole Idea of God
Four  Political and Medical Ethics
Five   Keeping Faith in Good Company
Six   Politics, Creation, and Coversion
Seven God Will Be God
Eight  Questions for Theocentric Ethics
Nine   Transcendence, Culture, and Ethics
Ten   Realism, Identity, and Self-Defense
Eleven Eight Theses for Theological Ethics

Index

 第1章では、ニーバーにおける「キリスト教的な道徳的生への4つのアプローチ」として、次のものが挙げられる。
 Covenant Love, A Community of Character, Theocentric Ethics, The (Progressive) Politics of God
 その上で、最後にさらなる問いが立てられてる。
 そして、最後の第11章では、これらの問いを念頭に、「キリスト教的倫理に対する8つのテーゼ」が示される。
 Church and World / Christian Communities and Liberalism / Nonviolent Discipleship and the Violent Nation-State / Christian Ethics and Public Morality and Politics / Christian Ethics and Nature, History, and Culture / Christian Particularity and Universal Intent / The Emancipatory Potential of Christian Belief / Our Dignity before God    
スポンサーサイト

死海文書刊行始まる

 「ナグハマディ文書」(こちらはすでに岩波書店から翻訳刊行されています)とともに、20世紀の聖書学関係の最大の発見といえる、「死海文書」がいよいよ日本語で読めることになりました。全12巻の規模で、今月から順次刊行されるという企画です。この数年、聖書の新しい翻訳が登場しましたが(これについては、いずれ本ブログでも取り上げます)、それらとは別の仕方で、日本における聖書学の水準を示す企画と言えます。

死海文書翻訳委員会訳
勝村弘也・上村静訳
『死海文書 VIII 詩篇』
ぷねうま舎、2018年。

序にかえて 死海文書とは何か (死海文書翻訳委員会)
略号表
凡例

感謝の詩篇 (勝村弘也)
  感謝の詩篇
    篇解説
  感謝の詩篇類似文書

バルキ・ナフシ (上村静)
  4Qバルキ・ナフシa,b,c,d,e

外典詩篇 (勝村弘也)
  外典詩篇A-B
  4Q外典詩篇と祈り
  11Q詩篇外典a-b
  4Q詩篇外典f

外典哀歌 (勝村弘也)
  4Q外典哀歌A、B

神の諸々の業と共同の告白 (上村静)
  4Q神の諸々の業
  4Q共同の告白

整理番号・文書名一覧

アメリカ現代神学の航海図

 2015年に逝去された、栗林輝夫んの二冊目の遺構論集(栗林輝夫セレクション)が刊行された。「アメリカ現代神学の航海図」を描く力量を有した第一人者によって練り上げられた論考が収録されており、表題にふさわしい充実した内容の論集である。現時点で、日本語で読める最良の現代神学の動向分析であり、これを越えるものは、そう簡単には現れないものと思われる。編集者による「解説」も、栗林神学を理解するに有益である。

栗林輝夫(大宮有博、西原廉太編)
『栗林輝夫セレクション2 アメリカ現代神学の航海図』
新教出版社、2018年。

第1章 フェミニスト神学からウーマニスト神学へ
     ──多元化するポストモダンの女性神学
第2章 アメリカのアジア神学とアジア系アメリカ神学
     ──オリエンタリズムからポストコロニアルへ
第3章 ポストモダン神学の航海図
第4章 ポストリベラル神学が語る共同体の物語
     ──キリスト教新保守主義が目指すもの
第5章 修正神学はリベラルの再構築を目指す
     ──リベラルによる近代主義の超克
第6章 神と世界の神学を説くプロセス神学
     ──新古典神論から解放主義への脱皮

解説 (大宮有博)
人名索引

 それぞれも章は通常の論文のサイズから言えば、かなり大きなものとなっており(特に、第1章は80頁に及んでおり、日本におけるフェミニス神学論としては、きわめて充実している)、栗林さんが、きわめて多くの情報を集約しようとした姿勢がよく現れている。情報の豊富さと分析の鋭さが際立つ論考であるが、しかし、そこには、解説者が述べる次のような意図・考えが存在している。

「本書は日本の文脈で神学を構築しようとする者の手助けとなるように書かれている。・・・しかし栗林が意図しているのは、アメリカ現代神学の書物を猟歩ためのガイドマップではない。むしろ氏は本書を読んだ読者が、自分の神学をどう構築して、どこに向けて発信するかを定めること意図している。次に、本書はアメリカ現代神学の潮流の要点を紹介した上で、それぞれの神学を日本で解放を志向して神学する者の視点で評価している。」(450)

 第3章は、「アメリカ現代神学の航海図」という趣旨から言えば、冒頭に置かれることも編集の選択肢だったかもしれない(解説者もこの点に言及している)。第4章のポストリベラル神学(イェール学派)と第5章の修正神学のまとまった紹介・分析は、日本ではこれらが実質的にはほぼ初めてというべきではないだろうか。日本におけるアメリカ神学の紹介はかなり一面的で偏っている。

『福音と世界』から

『福音と世界』 2019. 1 (新教出版社)が届きました。
 11月が忙しくなることを見越して、先々月と先月の連載原稿を早めに書き上げたのが習慣化したのか、今月の原稿もすでに校正まで完了しており、原稿執筆は順調に進みました。しかし、予定外の仕事もときおり飛び込んでくるため、気持ち的には必ずしも楽な感じではありません。そうこうする内に、2018年もあとわずかになり、この1年何をしたのか心許ない感じでいます。授業も最終週までありますので、過ぎた一年を振り返っている場合ではありませんが。というわけで、1月号に驚いてしまいます。

 1月号の特集テーマは「生きるためフェミニズム」です。フェミニズムについては、本誌上でこれまでも繰り返し取り上げられてきたテーマでありますが、「生きるため」というのは、おそらく、かなり説明が必要ではないでしょうか。すぐに感じられるのは、「生きるため」の「生きる」は「だれ」なのか、ということです。女性? 男性を含めた人間? また、「生きる」というのも、わかったようでイメージが拡散する言葉です。収録された論考は、こうした初歩的な疑問を忘れさせる力作であり、それだけで十分かも知れませんが・・・。フェミニスト神学の分野に、もっと活発な議論が欲しいというのは、わたくしの昔からの願望ですが、今回は、読者にどんなインパクトを与えるのでしょうか。

 収録された論考は以下の通り。

・「ポストフェミニズムとネオリベラリズム──フェミニズムは終わったのか」
 (菊地夏野)
・「ほどほどに女性が生きていくために」
 (栗田隆子)
・「生き残るための神学──批判的フェミニズム神学の聖書解釈について」
 (渡邊さゆり)
・「共に在るためのフェミニズム──クィアとのつながりに目を向けて」
 (飯野由里子)
・「セックスワークを通して考える当事者論──個人的なことは政治的なことかつ個人的なこと」
 (要友紀子)
・「リベラルなモスクを建てた女性弁護士」
 セイラン・アテシュさんに聞く(聞き手:山下秋子)

 次に、「私はロックがわからない」:山口政隆「第4回シーナ&ロケッツ」。

 そして、連載へ。今回から、二つの新連載が始まりました。
・松本あずさ:「福音書記者たちの饗宴」、1「書き出しだけで二時間は語れる」
聖書学の当たらし試みとしてもおもいしろい。

・長谷川修一:「移籍が語る聖書の世界」、1「住まい」
聖書考古学が聖書の読みをどのような仕方で豊かにするか、興味津々。
 
「福音の地下水脈」第15回 石井光太(後編)
 「“ちいさなかみさま”をもつ人へのリスペクト」

 「いまの日本のキリスト教への問いを受け取ることができるだろう。」「目の前にいる人をまずリスペクトすること。」

・森宣雄「野に咲く民衆の神学──別所梅之助を読む」
 第十回「小鳥・誕生・あこがれ」

 今回は、別所梅之助「冬の小鳥」「生命の泉」「二つの魂」「生まれいずる喜び」の4編。解説は「クリスマスは女性のもの」とタイトルが付けられているが、「女性性を強く宿した男性」「芯のつよい女性」という表現は納得がゆくような印象。フロイトよりもアドラーに共感というの評も、別所を理解する上で、重要な指摘と思われる。「冬の小鳥」の、恋愛、結婚、新しい命の誕生は、「生まれいずる喜び」の結びの「ベツレヘムの飼い葉の桶」(クリスマス)へとつながっていくのだろうか。新しい命の誕生というモチーフは、ハンナ・アーレントを思い出させるものである。

 続くは、わたくしの連載 「現代神学の冒険──新しい海図を求めて」28。今回は、インターリュードとして、「科学技術の神学」系に関連した「科学論」を取り上げた。キリスト教神学の学問論という内容でもある。
  見出し語は次の通り。
 ・学問としての神学
 ・神学の地域性
 ・科学論から研究プログラムへ
 ・研究プログラムかパラダイム論か
 この連載ではしばしばあったように、最後の部分は紙幅切れで、「科学技術の神学」系

最後は、次の連載です。
・内田樹「レヴィナスの時間論──『時間と他者』を読む」45
 冒頭で、フランソワ・ポワリエによるレヴィナスのインタビューが取り上げれ、ここに「「他者と時間」という主題が凝縮されている」と指摘されています。
 そのあと、議論は、マタイ伝からヨブ記へと進めれ、読みのポイントは、「ヨブはこの世界に遅れて登場した。にもかかわらず、世界に遅れて登場したという自覚を持っていない」とされる点にあります。
 「時間意識の発生と一神教の成立は同時的である」は、かなりむずかしい。
 「信仰とはこの「遅れ」の自覚のことである」は、なるほど。
 このあと、「応答する」というキーワードが、「「応答することができる」のは「遅れを覚知する」という仕方で時間意識が生成したからだ」と続けられる。
 以上が、「時間とは孤立した単独の主体にかかわることがらではなく、主体と他者の関係そのものである」というレヴィナスの命題への論者の解釈である。

 わかりにくいのは、「一神教の成立」という議論である。

『学術の動向』から

『学術の動向──科学と社会をつなぐ』 2018. 12(日本学術会議)が届きました。
 12月になり、1年の終わりを感じつつも、すでに来年度のことを考える時期になっています。シラバスの作成です。昔は、来年の授業については、新年を迎えてからで間に合ったようにも記憶しているのですが(やや漠然としたイメージです)、どうして、年々、書類の作成時期が早まるのか不思議です。しかも、今回は、シラバスの英訳を二科目について行う必要があり、些末なものであったも、仕事は累積すると、かなりの量になり、研究と教育を圧迫します。時代の要請ということで、納得せざるを得ないわけですが。
 今回も、通常の号のように、次の2つの特集が企画されています。

【特集1】ジェンダー視点が変える社会および科学・技術の未来
 ジェンダー視点は、次の特集の若手と、しばしばリンクしても取り上げられるものであり、理想と現実の乖離を感じさせる問題である。これを乗り越える議論は、現状の学問・研究の枠組み(制度的経済的)を解体・構築する議論をセットで行わないとなかなか実質に迫れない。今回はどうだろうか。

・「Gendered Innovations in Medicine, Machine Leraning, and Robotics」
 (Londa Schiebinger、小川眞里子)
・「シチズンサイエンスは学術をどう変えるか」
 (中村征樹)
・パネル討論「多様性の推進が私たちの閉塞感を打破する」報告
 (小林いずみ、髙橋裕子、濱口道成、山極壽一、渡辺美代子)
・「男女共同参画(ダイバーシティ)推進に関する評価手法」
 (藤井良一)
・「女性参画拡大によるイノベーション」
 (行木陽子)
・「ギース(GEAHSS)の取組み──人文学・社会科学系の挑戦」
 (井野瀬久美惠)
・「変容するGender概念──社会科学とGendered Innovation(性差研究に基づく技術革新)」
 (伊藤公雄)
・「ジェンダー視点からの政策をデザインするために」
 (武川恵子)
・「産業界の視点から」
 (西岡真帆)

 キリスト教研究の場は、なかなか動かない。なぜ。

【特集2】 若手科学者サミット──よい研究とは
 「若手とジェンダー、重要テーマであるが、どうやったら現実を動かすことができるのか。課題は多い。」は前回のコメントであるが、今回は・・・。
 
・「我が国の基盤となる研究力について」
 (中澤恵太)
・「研究力の測り方──「質」、「量」、そして「厚み」」
 (小川周)
・「産官学民連携による研究力向上──ランス・ディシプリナリー研究の重要性」
 (笹森奎穂、田中和哉、小村俊平)
・「若手科学者にとっての「よい」研究とは」
 (前川知樹)
・「若手アカデミー賞を受賞して」
 (河野暢明)

 「よい研究」? それは「若手」に特化したものなのか?

 そのほかに、次の記事が掲載。
・「科学と社会」:研究不正踏査に際しての着眼点および自己チェック項目──調査の手続きと報告書の標準化に向けて
 一般財団法人構成研究推進協会 医生命科学系分科会 研究不正調査標準化会議

 ここで述べられた条件は、大学ならばぜひこの方向でとも言いたくなるが、たとえば、人文系の学会でこれはできるのだろうか。あるいは行うべきなのだろうか。

・「提言要旨」1本
プロフィール

LogosOffice

Author:LogosOffice
 これまで本ブログは、2013年度より2015年度まで科学研究費の交付(代表者・芦名定道)を受けて行われた研究を中心に、キリスト教思想研究に関わる情報を発信してきました。しかし、2016年度からの新しい研究プロジェクトに関連した事柄は、主に別のブログで取り扱うことにし、本ブログでは、これ以外の記事について継続的に内容を更新します(新しい科研に関するものも、記事の継続性の観点から一部はこちらでも扱います)。
 なお、本ブログにもしばしばコメントが寄せられますが、多忙のため、原則として応答その他の取り扱いはいたしません。

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
Translation(自動翻訳)
FC2カウンター
カレンダー
11 | 2018/12 | 01
- - - - - - 1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 31 - - - - -
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR