キリスト新聞から

キリスト新聞 (第3436、2017. 4. 1) が届きました。新聞の発行日としては2017年度となりますが、わたくしの方は、本日から3日間、翻訳検討会という作業を行います。これで、わたくしは2016年度の仕事が区切りとなるはずなので、年度内の仕事にぎりぎりまで追われる状況です。先週の土曜日の宗教哲学会のシンポジウムが終わったあたりから、風邪ぎみという自覚がありましたが、その後も忙しく過ごしたため、あまり状況はよくありません。なんとか、3日間を乗り越えて、2017年度を気持ちよく迎えたいものです。

<第一面>
・「神戸国際支援機構 開学の被災孤児ら支援」
 「孤児の意志継ぎ「カヨ子基金」創設」
 「ネパールでの支援通じて決意」「ボランティア教わった〝祈りの人〟」

 「被災地へのボランティアなどを中心に活動してきた神戸国際支援機構」はこのほど「ネパール、バヌアツ、ベトナムなど、海外の被災地で親や住居を失った子どもたちを継続的に支援するために、「カヨ子基金」」を創設した。昨年10月にがんのため逝去さえた岩村カヨ子(理事長の岩村義雄さんの妻)の名を冠したもの。

「Headline/ヘッドライン」:
・「スコットランド聖公会は同性婚司式容認へ?」
・「メキシコ政府は米大統領に弱腰 カトリック教会が批判」
・「米の慈善団体「コンパッション」 インドから全面撤退」
・「「復興会合同祈願式」に宗教者らが参列 石巻市雄勝町でWCRP日本委が開催」

<第二面>
「Topics/トピックス」:
・「聖書」:「新翻訳聖書のパイロット版発行」「来年の完成目指し日本聖書協会が意見募集」
 3月9日に埼玉・大宮で聖書事業懇談会(住谷眞氏が講演)、7日に同志社大学で聖書事業懇談会(石川立氏が講演)。

・「教会」:「〝誤解されてきた「テオシス」〟」「正教会・西日本主教教区で公開セミナー」
 3月20日、講演会「」神に近づく──聖人たちの歩む道」を大阪ハリストス正教会信徒会館で開催。「テオシス」は本来は「神の愛に与り、神の道行に参加すること」。

・「文化」:「〝『沈黙』で人間の悲しみ描いた〟」「遠藤に師事した作家が町田市で講演」
 加藤宗哉氏による講演会「いま読み直す『沈黙』」が町田市民文学館ことばらんどで開催。

「Satellite/サテライト」:
・「バプ連「共同アクション」 5月3日に「憲法フェス」」
・「潜伏キリシタン文化資料館 長崎市下黒崎町にオープン」
・「「マレガ文書」研究チーム 大分県臼杵市で公開研究会」
・「福島と熊本の復興に向け WCRP日本委が団体を支援」
・募集「グリーフケア・サポートプラザ 電話ボランティアの研修実施」
・人事「国際NGOワールド・ビジョン」

<第三面>
「終活:なんでも相談室Q&A」
Q:「遺族が待たされて困惑」
A:「すべて葬儀社側の問題」
 今回のお相手:岡田守生さん(有限会社ディーズ代表取締役)

葬儀業者のモラルということらしいが。

・連載「 『沈黙』への道、 『沈黙』からの道──遠藤文学を読み解く」:金承哲(南山大学)
 「10 『死海のほとり』」「「痕跡」に悩まされた小説家の「巡礼」」
 「フォークナー」の「新しい小説の形式」「二重小説」「二つの別々の物語を経と緯として作品を織るという書き方。『死海のほとり』は、エルサレムを訪れイエスを行跡を追う「私」の物語と、2000年前にイエスに出会った人々の物語が二重螺旋のように入れ替わり、ついに一つのポイントで合一する。
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ユダヤ教の歴史

 ユダヤ教の歴史は、キリスト教研究にとっても、重要な隣接分野であり、常に気になる研究領域である。
 今回紹介するのは、「図説」とあるように、図表写真を多数使ったものであり、資料を直接眼にずる楽しみがある文献である。

市川裕編
『図説 ユダヤ教の歴史』
河出書房新社、2015年。

はじめに (市川裕)

第一章 ラビ・ユダヤ教までの歩み (市川裕)
第二章 ラビ・ユダヤ教の成立と特徴 (市川裕)
第三章 イスラーム社会のユダヤ教 (嶋田英晴)
Column 中世のユダヤ教賢者の横顔 (嶋田英晴)
第四章 カバラー (山本伸一)
第五章 中近世西欧のユダヤ人ゲットー (李美奈)
第六章 近代尾区民国家におけるユダヤ教の多様性 (市川裕)
第七章 二〇世紀のユダヤ教──ショアーとアメリカとイスラエル (市川裕)

あとがき (市川裕)
参考文献・図版出典一覧
ユダヤ教の歴史 関連年表

文化の神学23

 文学へとテーマを移行しつつあったわけであるが、今回は音楽に話題を戻したい。昨日、京都コンサートホールで、マーラーの交響曲8番変ホ長調「千人の交響曲」を久しぶりに聴いた。ベートーベンの第9という同様に、大規模な合唱をついた交響曲で、第9以上の大作である。
 マーラーを聴くのは久しぶりであり、「千人の交響曲」は生では始めてであったが(CDではかなり聴いた作品である)、今回は、広上淳一指揮の京都市交響楽団の演奏も充実しており、8人のソリストも、合唱も聴き応えのある演奏であった。
 曲は、ラテン語の歌詞が歌われる、第1部「イムヌス(賛歌):来たれ、創造主たる聖霊よ!」と、ゲーテの有名な『ファイスト』の最終場がドイツ語で歌われる、第2部から、構成されている。
 これは西欧ヨーロッパの1000年におよぶ文化・伝統を背景したものであり(第1部の賛歌は9世紀のベネディクト会士、ラバヌス・マウルス・マグネンティウスの作)、まさにキリスト教文化のエッセンスが凝縮されたものである。マーラーの音楽は、まさに文化の神学の題材に相応しいものである。
 特に、第2部は、ゲーテの文学と組み合わせて味わべきものと言える。
アルト1が「サマリアの女」として歌う、ヨヘネ福音書四章や、ソプラノ3が「栄光の聖母」として歌う「Komm! hebe dich zu höhern Spären!」。そして合唱(神秘の合唱)が歌う、「Alles Vergängliche ist nur ein Gleichnis」、「das Ewig-Weibliche zieht uns hinan」など、聴くどころは多い。
 西洋のクラシック音楽を楽しみ、深く味わう上で、 宗教的感性は重要な意味をもっており、これは文化の神学の基盤となる。

脳神経科学と宗教哲学

 昨日、宗教哲学会の第九回学術大会が京都大学文学部を会場に開催されました。
 午後は、例年通り、公開シンポジウムが企画され、今回は、「脳神経科学と宗教の未来」というテーマで行われました。
 司会とコーディネーターは、わたくしの担当ということで、わたくしも、シンポジウムで趣旨説明や講師紹介、講演へのコメントなどを行いました。
 脳神経科学と宗教というテーマは、わたくしのこの10年あまり取り組んできた問題であり、それを宗教哲学を専門にする研究者と共有できることは、うれしい体験です。
 二人の講師も、こうしたテーマに相応しい研究者です。
 以下、二人の講師による講演のテーマを概要を掲載します。

1.冲永宜司(帝京大学)「超越的次元のゆくえ―宗教経験の脳神経科学をふまえて」

 科学技術は、人間が理解不能、制御不能であったものを因果的に説明、予測、制御可能にし、同一の事柄を反復的に再現、産出可能にすることを特徴としている。その点では、人間を圧倒的に超えた制御不可能な実在への怖れや、その予測不可能な力を認める古くからの営みとは大きく異なっている。そこにおいて、科学技術には宗教とは真逆の性質がある。特に脳神経科学は、これまで制御する側にあった主体の働きを解明し、意識状態を予測、制御可能し、宗教の領域で扱われていた様々な精神的な病理や死の怖れまでも、物理、化学的な手段によって繰り返し制御、統制可能なものにしようとしている。これは物質の因果律の中に心や超越者までもあてはめ、超越者の働きを科学技術によって再現可能にしようとする試みにも相当する。こうした脳神経科学の発達によって、未来の宗教の領域はどうなるのか。
 本発表では大きくふたつの方向から考察を試みたい。ひとつは決定性、制御可能性、再現可能性という科学技術の特色に対して、それらの特色とは本質的に異なる性質を意識の内に見出す、科学の側の立場である。具体的には、意識の非決定性や自由意志の可能性を、決定性が支配する古典的法則が未成立の量子的な領域に見出し、基本的な粒子とその決定論的な運動ではなく、活動と自発性に実在性を見出そうとするR・ペンローズ、H・スタップや中込照明などの量子論的な意識論の立場である。そこでは脳状態は粒子的基本単位の配列状態ではなく、量子の重ね合わせの状態として考えられる。また脳作用に量子論は不要とする批判に対しては、古典的立場では、物質の機械的運動からは意識の生成が原理的に説明できないという再反論が試みられる。
次に、超越者の不在化という宗教的な問題に対して、生活世界における経験の現場そのものに超越性を見出して行こうとする立場を検討する。これは、精神を物質化し、対象として制御し、決定論的操作に従属させる枠組みを前提とする態度を括弧に入れ、抽象化された世界から生きた経験そのものへと帰還し、自発性や目的性をこの世界において再び実在化させる立場である。ここから見ると心を物質化する世界の方が、科学技術によって抽象化されているに過ぎない。すると超越の場所は抽象化を除かれたこの世界自体であり、超越者やこことは別の世界は要求されない。現代ではD・キューピットなどに代表され、禅思想をひとつの出所とするこの立場は、超越者との合一という意味での宗教経験をも否定する。しかし、現実世界を抽象化する枠組みの除去によって、生きた世界へと帰還する意味での宗教経験は、そこではむしろ否定されていない。それは、古典的決定論の枠組みを取り払い、活動と計算不可能性の世界へと意識を引き戻す、量子脳理論の試みにも重なると考えられる。

2.井上順孝(國學院大學)「宗教研究は脳科学・認知科学にどう向かいあうか」

 広く知られているように、米国では1990年代にDecade of the Brain(脳の10年)と呼ばれるプロジェクトが立ち上げられた。また1990年にはヒトゲノム計画が公式にスタートし、2003年4月には完全解読が宣言された。ヒトのゲノムサイズは31億塩基対で、遺伝子数が2万2千余りであることが分かった。オバマ大統領時代の2013年にはBRAIN initiativeがスタートしたが、これは脳マップを作成し脳の働きの全容を解明することを目指すものとされている。
EUにおいても、2012年にThe Human Brain Projectが発表され、ニューロインフォマティクス、人工知能の発展に特化した研究を進める方針を定めた。日本でもこうした流れに沿って脳研究や遺伝子研究などが進められており、中国、韓国、シンガポールなどでも、同様の研究が活発になっている。
これらの研究は、学術的目的だけでなく、むしろ軍事、医療、ビジネスなどに直結するがゆえに、巨額の投資がなされていると考えられる。とはいえそこで得られた成果の影響は、社会科学、人文科学にも広く及んできている。fMRIの技術の幅広い応用、オプトジェネティクス(光遺伝学)の開発、コンピュータ技術の急速な進展といったテクノロジーの革新は今後も続くと考えられる。新しい技術に下支えされた研究は、心の領域の問題や人間行動の問題に関しても、従来と比べてはるかに緻密なモデルを提供してきている。宗教研究もこうした動向に正面から向かい合うべき状況になってきている。すでに2006年には国際認知宗教学会(IACSR)が設立されたが、これもこうした動向に対応したものと理解できる。
私は主に現代宗教を研究対象としているので、とりわけこの動向は非常な関心を抱いている。現代宗教を研究する際には、超越的存在、超常現象、死後の世界、他界、聖なるものなどと宗教研究で記述されている事柄を、実際に体験したとか信仰していると述べる人たちと直接的に向かいあう機会が多くなる。新宗教の教祖や熱心な信者との面談調査には、そうした内容が数多く含まれてくる。民俗信仰においては、巫者と呼ばれている人たちは、特別な体験をへて巫者になったと語る。科学技術が進歩し、高等教育が普及したと言われる日本社会でも、呪術的と総称される行為は広く見出される。厄年や占いの類は多くの人が関心を抱き、パワースポットの存在を信じる人も少なくない。とくに信仰を持たなくても聖地巡礼を行う人もいる。
このような現象の理解に際しては、多くの場合、宗教体験、宗教的行為、宗教活動という表現を使ってきている。だが脳科学・認知科学と総称されるような分野で提起されている仮説は、宗教現象と呼ばれてきた事柄に対して、従来とは異なった観点からの分析も可能になってきていると考える。たとえば宗教集団の形成、分派の形成、民俗宗教の変容と持続などは、同時代的に観察されるが、その理解に際して従来の教団類型論、社会変動論といった観点からは説明しにくい側面についても、新たな展望が拓ける可能性がある。

 沖永先生、井上先生、ご苦労様でした。


 

宗教改革関係文献12

 今年は宗教改革500周年ということで、さまざまな企画が行われているが、その中には出版企画も含まれ、すでに公刊されたものも存在する。今回紹介するのは、おそらく、こうしたものの中の最新のものの一つと思われるが、宗教改革がその後の近代世界(特にドイツ)にいかなる影響を及ぼしたのかを中心に論じたものであり、宗教改革を理解する重要な視点の一つを、しかも一般読者も視野に入れて明晰に解説している。

深井智朗
『プロテスタンティズム──宗教改革から現代政治まで』
中公新書、2017年。

まえがき

第1章 中世キリスト旧世界と改革前夜
第2章 ハンマーの音は聞こえたのか
第3章 神聖ローマ帝国のリフォーム
第4章 宗教改革の終わり?
第5章 改革の改革へ
第6章 保守主義としてのプロテスタンティズム
第7章 リベラリズムとしてのプロテスタンティズム
終 章 未完のプロジェクトとして

あとがき
参考文献一覧
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Author:LogosOffice
 これまで本ブログは、2013年度より2015年度まで科学研究費の交付(代表者・芦名定道)を受けて行われた研究を中心に、キリスト教思想研究に関わる情報を発信してきました。しかし、2016年度からの新しい研究プロジェクトに関連した事柄は、今後開設の別のブログで取り扱うことにし、本ブログでは、これ以外の記事について継続的に内容を更新します。
 なお、本ブログにもしばしばコメントが寄せられますが、多忙のため、原則として応答その他の取り扱いはいたしません。

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