N・T・ライト1

 ボウカムの次に、イギリスの聖書学でとなると、やはりN・T・ライトでしょうか。イギリスではかなり影響力のある神学者であり、日本においても知名度が上昇中といったところでしょうか。

N.T.Wright,
The Paul Debate. Critical Questions for understanding the Apostle,
SPCK, 2015.

Preface

1 Paul and the Messiah
   Knowing the Name or Having the Mind?
2 How to Begin with Jesus
   What Did Paul Know, and How Did He Come to Know It?
3 Apocalyptic
   Covenantal Narrative or Cosmic Invasion?
4 The Justified People of God
   Messianic Israel or Saved Sinners?
5 Theology, Mission, and Method
   Paul's and Our

Review Citations

Paul and the Faithfulness of God
The five chapters represent a response to the five most questioned elements in my book. (vii)
The first chapter thus takes up the question of Paul's theological coherence, particularly the way in which his Jewish context, and the story about Israel he inherited, interacted with what he came to believe about Jesus, a christological story. Chapter 2 follows on by tackling the debate over the background, origin, and implications of Paul's Christology. The third chapter addresses the questions of covenant and cosmos, narratives and apocalyptic. Chapter 4 focuses on the debate over Paul's view of who constitutes the people of God ; this chapter also addresses the question of whether justification belongs to Paul's soteriology or to his ecclesionlogy, or somehow to both. The final chapter then traces debates about method, both Paul's and ours, as well as questions of discovery and presentation, again, both Paul's and ours. (vii-viii)

 以上のように、本書は、コンパクトな本ですが(100頁を少し超えるくらい)、現在のパウロ研究の問題点とそれについてのライトの見解が明解に確認できるようになっています。
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ボウカム2

 リチャード・ボウカムを取り上げます。前回に続き、2回目ですが、今回の文献が、ボウカムを取り上げた目的です。つまり、本ブログでのボウカムへの注目は、「聖書学における政治的テーマ」という点にあり、ボウカムはその姿勢が明確です。モルトマンとの関わりがあるということでしょうか。

リチャード・ボウカム
『聖書と政治──社会で福音をどう読むか』
いのちのことば社、2017年。

はじめに
日本語版への序
第二版への序論

第1章 解釈における問題点
第2章 民の聖さ レビ記一九章
第3章 強者のための知恵 箴言三一章一─九節
第4章 虐げられている人々のための歌 詩篇一〇篇と一二六篇
第5章 税金の問題 徴税における人々
第6章 倒れた都 ヨハネの黙示録一八章
第7章 出エジプト記と礼拝 聖書における自由
第8章 エステル記とユダヤ人大虐殺
第9章 創世記の大洪水と核のホロコースト
第10章 政治的キリスト 結びの省察

訳者あとがき

聖書を本来の政治的な意味を明らかにする形で論及し提示することは、現代の聖書学の課題であり、そのために多くの仕事がなされている。これは聖書学の役割であると同時に、限界でもある。断片的な洞察をまとまった、場合によっては体系的な形にもたらし、それを継続的で形成的な実践へともたらすには、専門的な「神学」が必要になる。とすれば、聖書学と神学との現在における関連性が問われることになる。そして、その先には、さらに隣接する関係諸学問領域が広がっている。
 

キリシタン研究より

 東アジアのキリスト教という問題にとって、キリシタン研究は一つの研究領域として存在し、キリスト教研究と隣接の諸研究領域との接点となっている。そのようなわけで、わたくし自身は、キリシタンについて何かを研究しているわけではないが、比較的近くには、キリシタン研究の専門家がおり、研究上の刺激を受け、キリシタンにも関心をもち続けている。
 先日、次の論集の寄贈いただいたので、キリシタン研究の動向を一端を、本ブログでも紹介したい。

五野井隆史編
『キリシタン大名──布教・政策・信仰の実相』
宮帯出版社、2017年。

巻頭口絵 (編集部)

序章 総論 
  キリシタン大名とキリシタン武将 (五野井隆史)

第一章 イエズス会の宣教活動
  ザビエルとその後継者たち (岸野久)
  イエズス会の通信について (五野井隆史)
  布教と貿易 (岡 美穂子)

第二章 キリシタン政策の推移
  信長とキリスト教 (松本和也)
  秀吉とキリスト教──宣教統制令から禁教令へ (清水有子)
  家康・秀忠とキリスト教 (大橋幸泰)

第三章 キリシタン大名
  大村純忠 (久保松和則)
  大友宗麟・義統 (大津祐司)
  有馬晴信 (清水紘一)
  高山飛騨守・右近 (中西裕樹)
  小西行長──領内布教の様相を中心に (島津亮二)
  蒲生氏郷 (狹間芳樹)
  黒田孝高 (中野等)
  毛利秀包 (鹿毛敏夫)
  筒井定次 (清水紘一)
  織田信秀・秀信 (清水有子)
  京極高次・高知 (清水有子)
  津軽信枚 (長谷川成一)
  蜂須賀家政 (須藤茂樹)
  宗 義智──キリシタンとなった対馬領主 (島津亮二)
  寺沢広高 (安高啓明)

第四章 キリシタン領主(国人領主)

第五章 キリシタン武将

付録 (五野井隆史)
  キリシタン大名・領主の受洗当時の所領地および異動地
  キリシタン大名・領主・武将関連年表/参考文献

 帯に、「キリシタン大名研究の決定版」とあるが、キリシタン大名について、その全貌をまとまって把握できる貴重な論集である(キリシタン大名だけでもこれだけの人物が存在するわけである)。
 なお、上の目次紹介では、第四章、第五章は、記載人名が多いため、省略した。

医療資源の倫理学

 応用倫理学の守備範囲は人間の活動領域全体に及んでいる。人間の行為は、倫理的な問いのなり得るからである。先日、監訳者からご寄贈いただいた次に書籍は、副題に「医療資源の倫理学」と記されており、この問題が今後、重要なテーマになるとの印象を受けた。

グレッグ・ボグナー、イワオ・ヒロセ
『誰の健康が優先されるのか──医療資源の倫理学』
岩波書店、2017年。

日本語版への序文
謝辞

序章
第1章 倫理学と医療
第2章 健康の価値
第3章 倫理と費用対効果
第4章 差別の問題
第5章 健康利益の集計
第6章 健康に対する責任
結論

用語集
参考文献
索引

 各章は、その最後の「章のまとめ」「議論のための問い」「読書案内」が付されており、個人で読む、授業などで共同で読む、といったさまざまな読み方が可能なように配慮指されている。日本語版への序文も、丁寧である。医療問題を思想という観点から考える手掛かりになると思われる。

『学術の動向』より

『学術の動向』 2017. 10 (日本学術会議)が届きました。
 今回も、通常の二つの特集を中心とした構成です。今回は、日本におけるキリスト教思想も共有すべき、している社会状況が取り上げられています。日本の現実は、深刻であり、来る選挙結果は日本の命運を決するものになるかもしれません(予想はきわめて暗い・・・)。

【特集1】 子どもの貧困─成長県境に及ぼすその影響と対策─
・「子どもの貧困問題への社会科学的アプローチ」 (阿部彩)
・「子どもの貧困の見えづらさ」 (松島京)
・「子どもの貧困と小児医療・小児保健」 (五十嵐隆)
・「子どもの貧困と学力格差──貧困は超えられるか?」 (内田伸子)
・「子どもの貧困と学術研究の隠れた枠組み」 (佐々木宏子)
・「外国籍等の子どもの貧困問題にみる多文化共生への課題」 (田中稲子)
・「「子ども時代の逆境的体験(ACEs)」と貧困──逆境的体験から子どもを救う目と耳と心」 (仲真紀子)
・「子どもの貧困にどう地方行政は取り組むのか──荒川区・武蔵野市を事例として」 (小澤紀美子)
・「子どもの貧困問題と子どもの「居場所」」 (仙田満)
・「子どもの貧困と遊びに関わるNPOの連携──ドイツの事例から」 (木下勇)
・「子どもの貧困と成長環境──日本学術会議シンポジウムの討議を受けて」 (矢田努)

 子どもの貧困の深刻さについては、マスメディアレベルでもかなりの報道があり、まさに「目と耳と心」があれば、目える事態である。実態と影響は十分にわかる、しかし、「対策」は? 学術研究はこの対策について、いかなる貢献をなし得るのか。わかりきった議論、少し想像力を働かせれば自明なこと、そのレベルでの討論ではどうしようもない。学術研究を次のレベルへと接続することが求められている。やはり、政治と行政を動かすことが問題ではないだろうか。

【特集2】 現代社会における分断と新たな連帯の可能性─階層・世代・民族・情報の視点から─
・「日本社会における格差と不意平等の動向をめぐる理論」 (竹ノ下弘久)
・「社会保障制度の受益者と負担者という分断──特に世代対立をめぐって」 (岩田正美)
・「地域間格差と地域間連帯の可能性──「平成の大合併」から考える」 (丸山真央)
・「移民・外国人の社会的統合の社会学」 (宮島喬)
・「アメリカ社会における社会的分断と連帯──メディアと政治的分極化」 (前嶋和弘)
・「科学技術革命、社会変動、もう一つのモダニティ」 (矢澤修次郎)
・「リスクと移民からみる連帯の可能性」 (安達智史)
・「社会的な分断と連帯の現代性」 (正村俊之)
・「〈正義〉の分断──世界を持続可能とするために」 (遠藤薫)

 ここでも、分析と理論化が研究の課題となる。しかし、それはどのように現実にアプローチし、何を変え生み出すことになるのかが、見えてこない。これは研究者だけの役割ではないが、社会貢献を語るのならば、ここまで議論を詰めて欲しい。また、「宗教」というテーマがスルーされるのは、日本の議論の特徴か? それで大丈夫なのか? 

◆科学と社会──科学者の集まりについて
・「はじめに」 (吉川弘之)
・講演「世界のアカデミーの動向と日本学術会議」 (花木啓祐)
・「総合討論」 (大戸範雄)

◆第17回アジア学術会議(SCA)年次大会 報告 (吉野博)

◆日本学術会議全国縦断サイエンスカフェ
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Author:LogosOffice
 これまで本ブログは、2013年度より2015年度まで科学研究費の交付(代表者・芦名定道)を受けて行われた研究を中心に、キリスト教思想研究に関わる情報を発信してきました。しかし、2016年度からの新しい研究プロジェクトに関連した事柄は、主に別のブログで取り扱うことにし、本ブログでは、これ以外の記事について継続的に内容を更新します(新しい科研に関するものも、記事の継続性の観点から一部はこちらでも扱います)。
 なお、本ブログにもしばしばコメントが寄せられますが、多忙のため、原則として応答その他の取り扱いはいたしません。

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