イヴォネ・ジェバラ

 この2年ほど、学部の講読では、前期が日本語訳でティリッヒを、後期はリューサー・ヘッセル編の Christianity and Ecology 所収の論文を取り上げてきた。今年度後期は、リューサーの論文「エコフェミニズム──神学への挑戦」を読んだ。その中で、参照されていたのが、イヴォネ・ジェバラである。日本では、それほどの知名度かもしれないが、エコフェミニスト神学においては、重要な思想家の一人である。
 今回取り上げるのは、主著(David Molineaux による英訳)の一つである。

Ivone Gebara,
Longing for Running Water. Ecofeminism and Liberation,
Fortress, 1999.

Preface
Introduction

1. Knowing our Knowledge: The Issue of Epistemology
 Epistemology in Search of Meaning
 Knowledge and Ethics
 The Hierarchical, Anthropocentric, and Androcentric Bias of Patriarchal Epistemology
 Patriarchal Epistemology in Theology
 Ecofeminist Epistemology

2. The Human Person from an Ecofeminist Perspective
 Beginning to Talk about the Human Person
 Questioning the Autonomy of the Human Person
 The Patriarchal Perspective:
   Its Value and Limitations
 "Person" in an Ecofeminist Perspective:
   A Tentative Construction

3. God: An Ecofeminist Approach to the Greatest of Mysteries
 Relatedness as a Language and an Experience of the Divine
 Issues Raised about Ecofeminist Discourse on God
 God: Models and Mystery
 God: My Hope

4. Ecofeminism and the Trinity
 Feelings and Associations Related to the Trinity
 What Human Experience Is Described by Trinitarian Language?
 Religious Language and Its Crystallization in Institutions
 Reconstructing Trinitarian Meanings and Celebrating Life

5. Jesus from an Ecofeminist Perspective
 The Road I Have Walked with Jesus
 Ecofeminist Challenges to Our Relationship with Jesus of Nazareth

6. That All may Have Life: The way to a New Understanding of Religion
 The Issue That Concerns Us
 The Destruction of Green Things, of Diversity, and of Our Synbols
 Religion and Community Life
 A Religion That Isn't in Crisis
 Religious Biodiversity

Epilogue: As the Deer Longs for Running Waters

Notes
Bibliography
Index

 2000年の時点で、リューサーは、エコフェミニスト神学の構築は今後の課題と述べており、そこで、ジェバラを参照したわけであるが、ジェバラにおいて、本格的な神学形成への動きを見ることは十分に可能と思われる。


 

  



 
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環境と経済2

 昨日に続き、『これがすべてを変える──資本主義 VS. 気候変動』の後半=下巻を紹介します。第二部途中からです。

ナオミ・クライン
『これがすべてを変える──資本主義 VS. 気候変動 下』
岩波書店、2017年。

 第7章 救世主はいない
   ──環境にやさしい億万長者は人類を救わない
 
 第8章 太陽光を遮る
   ──汚染問題の解決法は・・・汚染?

第三部 何かを始める
 第9章 「抵抗地帯」
   ──気候正義の新たな戦士

 第10章 愛がこの場所を救う
   ──民主主義、投資撤退、これまでの勝利
 
 第11章 ほかにどんな援軍が?
   ──先住民の権、世界を守る力

 第12章 空を共有する
   ──待機という共有資産、気候債務の返済

 第13章 命を再生する権利
   ──採掘から再興へ

 終 章 跳躍の年
   ──不可能を成し遂げるために残されたぎりぎりの時間

訳者あとがき
原注/索引

 「新たな戦士」が求められている。それには、ネットワーク以外に、強力で持続的な核が必要になる。それは、何か。そして、透徹した科学性(自然科学から社会科学、人文科学まで)も。キリスト教はどこに立つのか。

環境と経済1

 環境問題と経済とは、相互に密接に関わっており、環境危機を論じるには、経済システムの問題に触れざるを得ない。これは、本ブログの基本的な立場であるが、こうした問題意識は決して特定の思想家を越えて、多様な立場において共有されつつある。今回紹介するのは、まさにこの問題意識を共有する文献である。著者は、あのナオミ・クライン。紹介は、上下巻のそれぞれについて、2回にわけて、行う。

ナオミ・クライン
『これがすべてを変える──資本主義 VS. 気候変動 上』
岩波書店、2017年。

序章 気候変動によってすべてが変わる

第一部 最悪のタイミング
 第1章 右派は正しい
   ──昨日変動にはらまれた大変革のパワー
 
 第2章 ホットマネー
   ──自由市場原理主義はいかにして地球の温暖化を促進したか

 第3章 民間から公共へ
   ──新しい経済への移行を阻むイデオロギー的障害を克服する

 第4章 計画と禁止
   ──見えない手を叩き、運動を起こす
 
 第5章 搾取/搾取主義を超えて
   ──内なる気候変動否定派と対峙する

第二部 魔術的思考
 第6章 根ではなく実
   ──大企業と大規模環境保護団体の破壊的一体化

原注

 本書は、三部構成であるが、邦訳ではそれを上下2巻にわけため、上巻が第二部の途中で終わることになっている。第二部は、あろ二つの章を含むが、これらは下巻に収録されている。
 もちろん、ナオミ・クラインの議論のすべてに同意できるわけではない。気候変動の中身とその要因はもっと複雑な議論を要するはずであり、経済活動から気候変動の全体が説明できるというのは、それ自体、新自由主義的イデオロギーの中から形成され、現在はやや変質しつつある議論であろう。しかし、環境危機が人間の経済活動とさまざまに結び付いており、人間の責任は経済と政治というレベルで果たされるべきであることはその通りであろう。

キリスト教思想における動物

 現代のキリスト教思想では、応用倫理の動物倫理に対応するものとして、動物についての神学的考察(動物神学)が、一つの研究テーマとして存在している。これまで、環境神学として多岐にわたる問題を含んで展開していた領域に属するという見方も可能であるが、これ自体を環境倫理一般から独立させた見方も存在する。
 本ブログでは、この数日、試問を話題にしてきたが、今年度の卒論では、動物神学に関連した論文が提出されたので、その論文でも取り上げられた、次の動物神学の文献を取り上げておきたい。

A・リンゼイ
『神は何のために動物を造ったのか──動物の権利の神学』
教文館、2001年(原著は1994年)。

精進神学に向かって(日本の読者に)
序論

第一部 神学的諸原理と確立
  第1章 畏敬、責任そして権利
  第2章 弱者の道徳的優先権
  第3章 僕の種としての人間
  第4章 動物のための解放の神学
  第5章 動物の権利と寄生的本質

第二部 倫理的習慣に挑戦する
  第6章 非神学的犠牲としての動物実験
  第7章 反福音的捕食としての狩猟
  第8章 聖書的思想としての菜食主義
  第9章 動物の奴隷化としての遺伝工学


参考文献
訳者あとがき
索引  

 動物神学は、確かに環境神学と深く関わるが、同時に、それは、本書の第4章からわかるように、解放の神学に関連し、また第9章からは、生命倫理(生命神学)とも重なり合っていることがわかる。つまり、動物神学は、動物を焦点とした神学諸分野の統合の問題なのである。

環境論と宗教

 環境論への関心は、キリスト教はもちろん、さまざまな宗教において共有されている。当然と言えば、まったく当然であり、また、本ブログでも、しばしば取り上げてきたとおりである。
 今回は、仏教と環境論について、やや古くなったが、ハーヴァード大学世界宗教研究センターのシリーズから、次の論集を紹介したい。

Mary Evelyn Tucker and Duncan Ryuken Williams (eds.),
Buddhism and Ecology. The Interconnection of Dharma and Deeds,
Harvard University Press, 1997.

Preface (Lawrence E. Sullivan)
Series Foreword (Mary Evelyn Tucker and John Grim)

Introduction (Duncan Ryuken Williams)

Overview: Framing the Issues
Buddhism and Ecology: Collective Cultural Perceptions (Lewis Lancaster)

Theravada Buddhism and Ecology: The Case of Thailand
The Hermeneutics of Buddhist Ecology in Contemporary Thailand: Buddhadasa and Dhammapitaka (Donald K. Swearer)
A Theoretical Analysis of the Potential Contribution of the Monastic Community in Promoting a Green Society in Thailand (Leslie E. Sponsel and Poranee Natadecha-Sponsel)

Mahayana Buddhism and Ecology: The Case of Japan
The Jeweled Net of nature (Paul O. Ingram)
The Japanese Concept of Nature in Relation to the Environmental Ethics and Conservation Aesthetics of Aldo Leopold (Steve Odin)
Voices of Mountains, Trees, and Rivers: Kukai, Dogen, and a Deeper Ecology (Graham Parkes)

Buddhism and Animals: India and Japan
Animals and Environment in the Buddhist Birth Stories (Christopher Key Chapple)
Animal Liberation, Death, and the State: Rites to Release Animals in Medieval Japan (Duncan Ryuken Williams)

Zen Buddhism: Problems and Prospects
Mountains and Rivers and the Great Earth: Zen and Ecology (Ruben L. F. Habito)
The Precepts and the Environment (John Daido Loori)

American Buddhism: Creating Ecological Communities
Great Earth Sangha: Gary Snyder's View of Nature as Community (David Landis Barnhill)
American Buddhist Response to the Land: Ecological Practice at Two West Coast Retreat Centers (Stephanie Kaza)
The Greening of Zen Mountain Center: A Case Study (Jeff Yamauchi)

Applications of Buddhist Ecological Worldviews
Nuclear Ecology and Engaged Buddhism (Kenneth Kraft)
Buddhist Resources for Issues of Population, Consumption, and the Environment (Rita M. Gross)
Buddhism, Global Ethics, and the Earth Charter (Steven C. Rockefeller)

Theoretical and Methodological Issues in Buddhism and Ecology
Is There a Buddhist Philosophy of Nature? (Malcolm David Eckel)
Green Buddhism and the Hierarchy of Compassion (Alan Sponberg)
Buddhism and the Discourse of Environmental Concern: Some Methodological Problems Considered (Ian Harris)

Bibliography on Buddhism and Ecology (Duncan Ryuken Williams)
Notes on Contributors

Index

「宗教とエコロジー」というテーマは、宗教倫理学会でも、2001年度と2002年度の研究プロジェクトのテーマであり、このハーヴァード大学の研究センターにおける共同プロジェクトといわば変更した取り組みが日本でもなされていた。
 しかし、宗教倫理学会での研究成果は一時論集刊行という議論もなされたが、その後立ち消えになって現在に至っている。こうした差は、どこから生じたのだろうか。







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Author:LogosOffice
 これまで本ブログは、2013年度より2015年度まで科学研究費の交付(代表者・芦名定道)を受けて行われた研究を中心に、キリスト教思想研究に関わる情報を発信してきました。しかし、2016年度からの新しい研究プロジェクトに関連した事柄は、主に別のブログで取り扱うことにし、本ブログでは、これ以外の記事について継続的に内容を更新します(新しい科研に関するものも、記事の継続性の観点から一部はこちらでも扱います)。
 なお、本ブログにもしばしばコメントが寄せられますが、多忙のため、原則として応答その他の取り扱いはいたしません。

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