授業紹介1

 今年度、わたくしが担当の授業としては、すでに本ブログにおいて、南原繁演習の紹介を行ってきた。もちろん、このほかにも、少なからぬ授業を担当しており、それについても、簡単な紹介を行ってみたい。

 前期の演習としては、南原繁以外には、ティリッヒのドイツ語テキストの演習を行っている。テキストは下に示すものであるが、中期ティリッヒのはじめの時期の講義テキストであり、近年ドイツ語版全集の補遺遺稿集に収録されたものであり、したがって、これまで、ほとんど研究されてこなかった。しかし、内容的には、ティリッヒの代表的著作である、後期の『組織神学』へ向かう思想展開のプロセスを知る上で、きわめて重要なものである。また、アメリカ亡命当初にティリッヒが自らの思想をどのようにアメリカに紹介し、また自分の新しい思想展開を試みたのかということも、具体的かつ詳細に分析できる。
 キーワードは、人間学あるいは人間論である。

Die Lehre vom Menschen als der egenwärtige Zugang zur Theologie
(Union Theological Seminary, New York, 1934/35)

Griederung
Einleitung
1.Die Lage der Wissenschaften und die Lehre vom Menschen
2Methoden und Gegenstäne der Lehre vom Menschen

I. Die Endlichkeit des Menschen als der grundlegende Charakter menschlicher Existenz
A. Essenz und Existenz des Menschen
1.Die Lehre von der Essenz des Menschen als philosophische Anthropologie
2.Menschliche Freiheit und die Gefahr in der menschlichen Essenz
3.Menschliche Existanz und menschliche Endlichkeit
4.Die Methoden der Analyse der menschlichen Endlichkeit
B. Die Grundqualitäten der menschlichen Endlichkeit
1.Angst und verwandte Begriffe
2.Sorge und verwandte Begriffe
3.Schwermut und verwandte Begriffe
4.Verweiflung und verwandte Begreffe

II. Die Endlichkeit des Menschen als der Ausgangspunkt der Theologie
A.Anthropologische Frage und theologische Antwort
1.Endlichkeit des Menschen und Glaube
2.Glaube als Überwindung der endlichen Existenz des Menschen
3.Glaube als Bedingungen der endlichen Existenz des Menschen
B. Die vier Hauptlehren des Christentums als Antworten auf die Grundeigenschft der Endlichkeit des Menschen

 以上のほかの授業にも連動している。たとえば、わたくしは、「特殊講義」において、かなりの期間、「キリスト教思想における社会・政治・民族」「キリスト教と社会理論の諸問題」「キリスト教思想の新しい展開──自然・環境・経済・聖書」という一連のテーマを取り上げてきた。これは本ブログに則して言えば、「自然神学の社会科学への拡張」に関わるテーマ群である。
 しかし、そろそろ、このテーマ群から別のテーマへの展開を試みる段階にさしかかっており、「特殊講義」の内容も、今年度後期から下記のように大きく変化することになっている。「キリスト教思想と宗教哲学」。これは、京都大学におけるわたくしの「特殊講義」の最後のテーマ群となるはずであり、これと、先の「ティリッヒ」演習とは、かなり密接に繋がっている。

キリスト教思想と宗教哲学(1)──「哲学と神学」の歴史的概要──
(授業の概要・目的)
 現代世界において宗教は、深刻な対立要因の一つと見なされている。この対立図式自体の問題性は別にしても、キリスト教がこうした文脈で問われていることは否定できない。本講義では、こうしたキリスト教思想を取り巻く思想状況を念頭に置きながら、キリスト教思想の新なる展開の可能性について議論を行いたい。扱われる問題圏は、自然・環境・経済・聖書で構成されるものである。
 そのために本講義では、キリスト教思想とその宗教哲学的基盤の探求というアプローチが試みられる。キリスト教思想の新たなる展開には、こうした根本からの議論の組み立てが要求されるからである。2016年度後期は、まず、「哲学と神学」の歴史的概観が行われる。
0.オリエンテーション
1.哲学と神学、あるいはキリスト教神学の起源
2.オリゲネス
3.アウグスティヌス
4.トマス・アクィナス
5.ルターとカント
6.シュライアマハーとヘーゲル
7.キルケゴールとシェリング
8.ティリッヒとハイデッガー
9.リューサーとアーレント
10.モルトマンとハーバーマス
11.神
12.人間
13.宗教と文化
14.死
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キリスト教思想史と科学史、ピーター・ハリソンの場合

 最近は5回にわたって、芦名研究室所蔵のニュートン研究の関連文献を紹介してきたが、「研究室より」のジャンルでの文献紹介の主たる目的を確認しておきたい。ここでの文献紹介は、もちろん、読者(?)に、本ブログのテーマとに関連した研究文献を「紹介する」ことを目的にしているが、主たる意図は、芦名研究室の所蔵文献を整理することになる。「宗教と科学」関係論については、すでに長年取り組んできている関係上、収集した文献はかなりの数に上り、このままではカオス状態に移行する恐れすら感じられ、このあたりで、文献紹介をかねて、整理を行うことにしたわけである。おかげで、「宗教と科学」関係論における思想史研究と、個別の思想家何人かについては、一応の整理が完了した。しかし、問題は生命と環境に関わる文献であり、現時点では整理の方針が確定していない。そこで、この難題に入る前に、まだ残っている、思想史研究に関わるものを少しずつ整理し、紹介することにしたい。

 今回は、近代(17世紀から19世紀)における、キリスト教思想、哲学思想、科学思想の相互連関を研究テーマにして、重要な研究を発表している、ピーター・ハリソン(Peter Harrison)の文献(芦名研究室所蔵)を紹介することにする。なお、ハリソンについては、次のWebで本人による詳しい紹介がなされている。http://works.bepress.com/peter_harrison/

1.Peter Harrison,
'Religion' and the religions in the English Enlightenment,
Cambridge University Press, 1990.

2.Peter Harrison,
The Bible. Protestantism and the rise of natural science,
Cambridge University Press, 1998.

いずれも、ハリソンが、オーストラリアのBond University で研究を行っていた当時の研究書であるが、1990年の著作は、イギリス理神論に関わる分析が詳細になされており、また1998年の方では、「二つの書物」説についての説明が優れている。いずれも、この分野の研究を行う者には参照すべき研究文献である。






テッド・ピータースと「科学と神学の調和(Consonance)」

 ニュートン関連の文献紹介が一段落下したので、そろそろ別の文献紹介に移りたいと思う。今回取り上げるのは、現代神学において、科学と神学との一致・調和という仕方で、両者の関係を論じ、また生命倫理(遺伝子工学関連)の問題にも積極的に発言している、テッド・ピータース(Ted Peters, 1941-)である。ピータース神学の一つの前提となっているのは、パネンベルクの神学であり(以下紹介するピータース編集のパネンベルク論文集が示すように)、パネンベルク神学の展開という観点からも興味深い。また、ピータースの生命倫理をめぐる神学的議論は、現在の問題状況においておそらく最重要文献の一つであり、日本における同様の議論を行う際に、まず参照すべきものの一つである。

(1)著書・論文
Science,Theology,and Ethics, Ashgate, 2003.
Introduction
Part I:From Conflict to Consonance
1 Theology and Science: Where Are We?
2 Scientific Research and the Christian Fatih

Part II:Physics, Cosmology,and Creation
3 The Terror of Time
4 God as the Future of Cosmic Creativity
5 David Bohm, Postmodernism and the Divine
6 Exothology: Speculations on Extraterrestrial Life

Part III:Genetics, Ethics and Or Evolutionary Future
7 Genetics and Genethics: Are We Playing God with Our Genes?
8 Cloning Shock: A Theological Reaction
9 The Stem Cell Debate: Ethical Questions
10 Designer Children: The Maket World of Reproductive Choice
11 Multiple Choice in Baby Making
12 Playing God and Germline Intervention
13 Coevolution: Pain or Promise?

Part IV: Muclear Waste and Earth Ethics
14 Whole and Part: The Tension between the Common Good and Individual Freedom
15 Not In My Backyard! the Waste-Disposal Crisis

Part V: The Human Body: A Theological Prognosis
16 Wholeness in Salvation and Healing
17 The Physical Body of Immortality

・「神学と科学 私たちは何処にいるのか」(楚輪松人訳)、
   金城学院大学キリスト教文化研究所編『宗教・科学・いのち 新しい対話の道を求めて』新教出版社、
   2006年、52-101頁。
 この論文は、上の論文集の第一論文の訳である。

(2)編著
・Wolfhart Pannenberg,
Towards a Theology of Nature. Essays on Science and Faith,(Edited by Ted Peters),
Westminster/John Knox Press, 1993.
本書は、標宣男・深井智朗訳で、教文館より邦訳が出版されている(『自然と神 自然の神学に向けて』1999年)。
・Ted Peters (ed.)
Science & Theology. The New Consonance,
Westview Press, 1998.

Introduction
1 Science and Theology: Toward Consonance (Ted Peters)

Part One: Physics and Faith
2 Logic and Uncertainties in Science and Religion (Chales H. Townes)
3 From Phsicist to Priest (John Polkinghorne)
4 Is the Universe Absurd? (Paul Davies)
5 Does the "God Who Acts" Really Act in Nature? (Robert John Russell)
6 Theology, Cosmology, and Ethics (Nancy Murphy)

Part Two: Evolution, Ethics, and Eschatology
7 So Human an Animal: Evolution and Ethics (Francisco J. Ayala)
8 Human Life: Creation Versus Evolution? (Wolfhart Pannenberg)
9 Evolution and the Living God (Pope John Paul II)
10 Evolution and the Human Person: The Pope in Dialogue (Grorge V. Coyne, S.J.)
11 Biological Evolution and the Human Soul: A Theological Prpposal for Generationism (Anne M. Clifford,C.S.J.)
12 Biocultural Evolution and the Created Co-Creator (Philip Hefner)
13 A Map of Scientific Knowledge: Genetics, Evolution, and Theology (Arthur Peacocke)
14 The Greening of Science, Theology, and Ethics (Audrey R. Chapman)
15 Evolution, Tragedy, and Hope (John F. Haught)

 寄稿者の顔ぶれからしても、きわめて魅力的な論文集である。

(3)研究文献
・金承哲『神と遺伝子 遺伝子工学時代におけるキリスト教』教文館、2009年。

 本書は、テッド・ピーテースの研究書ではないが、ピータースの思想の要点を的確に説明し、遺伝子工学をめぐる現代キリスト教思想の全体像とその中におけるピータースの位置を明解に論じている。現時点で、「キリスト教と遺伝子工学」というテーマに関して、日本語で読める最良の文献である。
 なお、この文献についてのより詳しい説明は、『日本の神学』49号(日本基督教学会)に掲載されたわたくしの書評をご覧いただいきたい(http://www.bun.kyoto-u.ac.jp/user/sashina/sub3b22.pdf)。

ニュートン関連文献・洋書(5)

 クルヴァー社叢書188号の紹介をいたします。これで一応、完了です。

J.E.Force and S. Hutton(eds.),
Newton and Newtonianism,
Kluwer Academic Publishers, 2004.

Preface (Force and Hutton)
Introduction (Margaret C. Jacob)

Essay 1. The New Newtonian Scholarship and the Fate of the Scientific Revolution (Margaret J. Osler)
Essay 2. Plans fir Publishing Newton's Religious and Alchemical Manuscripts, 1982-1998 (Richard H. Popkin)Essay 3. Digitizing Isaac : The Newton Project and an Electronic Edition of Newton's Papers (Rob Iliffe)
Essay 4. Was Newton a Voluntarist? (Peter Harrison)
Essay 5. Providence and Newton's Pantokrator: Natural Law, Miracles, and Newtonian Science (James E. Force)
Essay 6. Eighteenth-Century Reactions to Newton's Anti-Trinitarianism (Scott Mandelbrote)
Essay 7. Prosecuting Athanasius: Protestant Forensius and the Mirrors of Persecution (Rob Iliffe)
Essay 8. Lust,Pride, and Ambition: Isaac Newton and the Devil (Stephen D. Snobelen)
Essay 9. Women, Science, and Newtonianism: Emilie de Châtelet versus Francesco Algarotti (Sarah Hutton)
Essay 10.Reflections on Newton's Alchemy in Light of the New Historiography of Alchemy (Lawrence M. Principe)
Essay 11.The Trouble with Newton in the Eighteenth Century (Larry Stewart)

 これまで紹介してきたクルヴァー社叢書におけるニュートンの思想史的研究の進展は、「近代」を、キリスト教との関わりで問い直す際にも、様々な点で参照されるべきものである。近代批判が盛んな中で、日本においても本格的な近代思想研究が必要になってきているのではないだろうか。

ニュートン関連文献・洋書(4)

 引き続き、クルヴァー社叢書の紹介です(161巻)。

James E. Force and Richard H. Popkin (eds.)
Newton and Religion. Context,Nature, and Influence,
Kluwer Academic Publishers, 1999.

Foreword (J.E.Force)
Introduction (R.H.Popkin)

Essay 1. Alchemy and Eschatology: Exploring the Connections between John Dee and Isaac Newton (D.E.Harkness)
Essay 2. Newton and the Rosicrucian Enlightenment (A.P.Coudert)
Essay 3. From Paracelsus to Newton: The Word of God, the Book of Nature, and the Eclipse of the "Emblematic World View" (J.J.Bono)
Essay 4."Acceptable to inquisitive men": Some Simonian Contexts for Newton's Biblical Criticism,1680-1692 (J.A.I.Champion)
Essay 5. Those "Whose Business It Is To Cavill": Newton's Anti-Catholicism (R.Iliffe)
Essay 6. Newton, Corruption, and the Tradition of Universal History (R.Markley)
Essay 7. Newtion's Of the Church: Its Contents and Implications (M.Goldish)
Essay 8. The Seven Trumpets and the Seven Vials: Apocalypticism and Christology in Newton's Theological Writings (S.Hutton)
Essay 9. Interpretive Strategies in Newton's Theologiae Gentilis origines philosophiae (K.J.Knoespel)
Essay 10.Newton's Apocalypse (M.Murrin)
Essay 11.Newton and the Guaranteeing God (G.A.J.Rogers)
Essay 12.Newton, the "Ancients," and the "Moderns" (J.E.Force)
Essay 13.The Logic of Millennial Thought: Sir Isaac Newton Among His Contemporaries (R.Smolinski)

 ニュートンの思想研究という点で、きわめて興味深い論文集である。このような研究論文集を積み重ねることができるということは、日本ではほとんど期待できない。日本が思想研究の不毛の地にならないような努力が必要なのかもしれない。
プロフィール

LogosOffice

Author:LogosOffice
 これまで本ブログは、2013年度より2015年度まで科学研究費の交付(代表者・芦名定道)を受けて行われた研究を中心に、キリスト教思想研究に関わる情報を発信してきました。しかし、2016年度からの新しい研究プロジェクトに関連した事柄は、主に別のブログで取り扱うことにし、本ブログでは、これ以外の記事について継続的に内容を更新します(新しい科研に関するものも、記事の継続性の観点から一部はこちらでも扱います)。
 なお、本ブログにもしばしばコメントが寄せられますが、多忙のため、原則として応答その他の取り扱いはいたしません。

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