社会心理学3

 今回取り上げるのは、かなりの自伝的な要素も含む、やや一般的むけ(?)のエッセイである。学術書というジャンルのものではないが、内容は考えさせられるとkろおが少なくない。

小坂井敏晶
『答えのない世界を生きる』
祥伝社、2017年。

はじめに

第一部 考える道しるべに
  第一章 知識とは何か
      知識が思考の邪魔をする/当たり前なことほど難しい/
      矛盾の効用/異質性の金脈
      独創性神話/答えではなく、問いを学ぶ
  第二章 自分の頭で考えるために
      型が自由を生む/比喩と型/古典から型を学ぶ/
      開かれた社会の論理構造/
      社会変化と進化論/自己防衛が理解を助ける/思考枠を感情が変える
  第三章 文科系学問は役に立つのか
      教育の弊害/授業の役割/師と弟子は別/
      教育の二つの任務/大学教員の実態/知識とは、変革する運動
      大学改革/競争が個性を殺す/普遍的価値というイデオロギー
      開かれた社会の意味/<正しい世界>と闘うために

第二部 学問と実存
  第四章 フランスへの道のり
      日本を離れるきっかけ/初めての海外/悪印象のフランス/アジアを歩く
      アルジェリアに飛び立つ/通訳とは名ばかり/ドストエフスキーと出会う
      通訳の思い出/偶然の不思議/新興宗教に入信/退路を断つ
  第五章 フランス大学事情
      留学事始め/社会科学高等研究院/一冊目の本/大学就職事情/
      幸運に助けられる/フランスの大学制度/学位の内情/茶番劇の学位審査
      縄張り根性
  第六章 何がしたいのか、何ができるのか、何をすべきか
      国際人と異邦人/四十代の不安と焦り/二流の人間/
      できる人は演じ、できない人は教えたがる/手品に夢中だった日々
      科学とマジックの共通点/教授にならなかった理由/なぜ書くか
  終章 異邦人のまなざし
      多数派の暴力/フランス人の結婚観/自分勝手と多様性/
      フランス人にとっての日本人/偽善/西洋人への劣等感/名誉白人

あとがき
現代書館版「あとがき」(二〇〇三年)

 現代書館版「あとがき」にもあるように、「私は学者になることを目指していない」ということであるが、現代の学者・研究者の置かれた状況を知るには参考になる点の少なくない、かもしれない。
 本書は、『異邦人のまなざし』の改訂ということであるが、改訂版という仕方での出版スタイルも、この著者の特徴かもしれない(わたくしと同じ世代の「研究者」としては。自伝もそうであるが)。おそらく、小坂井の重要な著作もと言える、『民族という虚構』も増補された形で文庫化(ちくま学術文庫)されており、これから読むのならば、文庫版がよいだろう。
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社会心理学2

 前回に続き、小坂井さんの文献ですが、今回は、ずばり、社会心理学です。

小坂井敏晶
『社会心理学講義──〈閉ざされた社会〉と〈開かれた社会〉』
筑摩選書、2013年。

はじめに

序 社会心理学とは何か

第1部 社会心理学の認識論
 第1講 科学の考え方
 第2講 人格論の誤謬
 第3講 主体再考
 第4講 心理現象の社会性

第2部 社会システム維持のパラドクス
 第5講 心理学のジレンマ
 第6講 認知不協和理論の人間像
 第7講 認知不協和理論の射程
 第8講 自由と支配

第3部 変化の謎
 第9講 影響理論の歴史
 第10講 少数派の力
 第11講 変化の認識論

第4部 社会心理学と時間
 第12講 同一性と変化の矛盾
 第13講 日本の西洋化
 第14講 時間と社会

あとがき
引用文献

 小坂井さんらしい講義のようにも思いますが(問題意識がよくもわるくも一貫している)、パラドクスとか矛盾とか、ここで使うには、それ自体の議論が必要だろう。謎や不協和は良いとしても。

社会心理学1

 社会心理学は、宗教を含めた人間の社会的営みを論じうるで、重要な位置を占める学問分野である。この夏(8月)に書き上げた論文で参照した文献に、小坂井敏晶の著作が含まれていたが、小坂井さんは、現在パリ第8大学心理学部で、社会心理学を担当している。参照した文献以外にも、小坂井さんの文献のいくつかが手元にあるので、その紹介を行ってみたい。
 今回参照したのは、『責任という虚構』(東京大学出版会)であるが、内容的に、それと重なるテーマを扱っているのが、次の文献である。新書ということで、小坂井さんの議論を把握するには、適当かもしれない。

小坂井敏晶
『人が人を裁くということ』
岩波新書、2011年。

はじめに

第Ⅰ部 裁判員制度をめぐる誤解
   1 市民優越の原則
   2 裁判という政治行為
   3 評議の力学

第Ⅱ部 秩序維持装置の解剖学
   1 自白の心理学
   2 自白を引き出す技術
   3 記憶という物語
   4 有罪への自動運動

第Ⅲ部 原罪としての裁き
   1 自由意志と責任
   2 主体再考
   3 犯罪の正体
   4 善悪の基準

結論に代えて ── 〈正しい世界〉とは何か

あとがき
引用文献

 記憶、自由意志、責任、主体、これらは、近代以降のキリスト教思想におけるキーワードであり、これらが再考されるべきであるとの主張である。これらは、虚構という問題に行き着くことになる。こうした議論は、宗教学やキリスト教思想、現代哲学とも重なるものであるが、社会心理学のポイントは、心理学という科学を土台にしている点である。
 

カント研究より

 カント哲学は、近代以降のキリスト教思想にとって、現代に至るまで重要な意義を持ち続けている。したがって、カントj研究は、キリスト教思想研究にとって関心事となるわけであるが、今回は、研究よりも広い観点から必要となった研究書を紹介したい。コンパクトな内容で、やや古い研究ではあるが、カントとキリスト教思想との関わりを考える上でも、参照すべきものと思われる。

Allen W. Wood,
Kant's Rational Theology,
Cornell University Press, 1978 (2009)

Preface
Introduction 
1.The Idea of Pure Reason
  The Ideal of Pure Reason
  The Ground of All Possibility
  The Divine Attributes
2.The Three Theistic Proofs
  Kant's Strategy
  The Ontological Proof
  The Cosmological Proof
  The Physicotheological Proof

Concluding Remarks
Index

民族、宗教、ナショナリズム

 以前、アフリカのキリスト教というテーマで、『アフリカのキリスト教──ひとつの解釈の試み』(教文館)を紹介したが、この文献の著者であるエイドリアン・ヘイスティングズのほかの著作を調べていて、次の文献が目にとまり、入手してみた。ヘイスティングズのアフリカ研究の宗教学的理論根拠とも言える内容であり、これについても、紹介しておきたい。

Adrian Hastings,
The Construction of Nationhood. Ethnicity, Religion and Nationalism,
Cambridge University Press, 1997.

Preface
1 The nation and nationalism
2 England as prototype
3 England's western neighbours
4 Western Europe
5 The South Slavs
6 Some African case studies
7 Ethnicity further considered
8 Religion further considered

Notes
Index

 ヘイスティングスは、イギリスとアフリカのキリスト教史を研究の中心においている研究者(Emeritus Professor of Theology, University of Leeds, -2001)であるが、歴史研究・事例研究は、それらを解釈する理論的な枠組みが必要となり、本書は、その一端に関わるものである。
プロフィール

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Author:LogosOffice
 これまで本ブログは、2013年度より2015年度まで科学研究費の交付(代表者・芦名定道)を受けて行われた研究を中心に、キリスト教思想研究に関わる情報を発信してきました。しかし、2016年度からの新しい研究プロジェクトに関連した事柄は、主に別のブログで取り扱うことにし、本ブログでは、これ以外の記事について継続的に内容を更新します(新しい科研に関するものも、記事の継続性の観点から一部はこちらでも扱います)。
 なお、本ブログにもしばしばコメントが寄せられますが、多忙のため、原則として応答その他の取り扱いはいたしません。

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