聖書と哲学

 「聖書と哲学」というテーマにおいてはきわめて多くの問題を論じることが可能であるが(今年度後期に、特殊講義でこのテーマを取り扱う)、わたくしとして、すぐに思い浮かべるのは、「ヨハネ福音書とドイツ観念論」という古典的な問題であり、いつか正面から論じてみたいと考えている。そのための参考文献となるのは、たとえば、次の文献。

Troels Engberg-Pedersen,
John and Philosophy. A New Reading of the Fourth Gospel,
Oxford University Press, 2017.

Preface

Ⅰ. A Return to the Text
Ⅱ. The Unity of Logos and Pneuma in John 1
Ⅲ. Logos and Pneuma in the Body of the Gospel
Ⅳ. The Philosophical Search in John 2-4
Ⅴ. The Son Equals the Father and His Pneumatic Body Gives Life (John 5-6)
Ⅵ. Two Types of Belief and the Role of Pneuma in John's Epistemology of Faith (John 7-8)
Ⅶ. Who Can See What Jesus' Acts Signify (John 9-10)?
Ⅷ. From Believing in Jesus to Possessing His Logos (John 11-12)
Ⅸ. The Farewell Discourse as Paraklesis (John 13-17)
Ⅹ. The Execution of the Plan (John 18-20)
Ⅺ. The Gospel as a Whole --- Mark, Paul, and the Jews
Ⅻ. The Gospel as a Whole --- Imagery and Eschatology

Bibliography
Index Locorum
Gegeral Index

 こうした問題に取り組むには、まとまった思索の時間が必要である。
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現代日本人の宗教意識

 現代人の宗教意識という問題は、現代日本で宗教を論じる上で、関心事とならざるを得ないものであり、わたくしも、しばしばこうした点に講義などで触れることがある。特に、現代宗教学と方法論でキリスト教学を解説するときなど、である。しかし、「現代人の、現在日本の宗教意識」とは、直観的に個人の感想を述べるだけでよいならば、それあるのことであるが、学問の場でそれを論じるというのは、決して簡単ではない。少なくとも、しっかりしたデータの裏付けなしに行う発言は無責任であろう(無意味ではないとしても)。
 こうしたときに、頼りになるのが、継続的に行われてきている意識調査のデータである。わたくしは、NHKが40年間にわたって継続している意識調査のデータを参照することが多いが、その最新版を取り上げておきたい。

NHK放送文化研究所編
『現代日本人の意識調査 第八版』
NHKブックス、2015年。

はじめに

Ⅰ 序章
 1 「日本人の意識」とは
 2 「日本人の意識」調査の基本設計
 3 分析方法

Ⅱ 男女と家庭のあり方
 1 結婚観──「結婚しなくてもよい」が再び増加
 2 子どもをもつこと──「必ずしももたなくてよい」が再び増加
 3 婚前交渉について──増加した開放的な考え
 4 夫婦の姓──最近は揺れる意見
 5 理想の家庭──夫婦で協力が定着
 6 家庭と仕事──「両立したほうがよい」が過半数に
 7 夫の家事──手伝いは当然だが、中心は妻が多数
 8 子どもの教育──依然と残る男性優先
 9 父親のあり方──子どもと距離をおく人が増加
10 老後の生き方──子ども離れが進む

Ⅲ 政治
 1 政治の対する態度──有効性感覚の低下が止まる
 2 結社・闘争性──対立を避ける現代人
 3 政治課題──福祉か経済発展か
 4 政党支持態度──自民党支持が三〇%台に回復
 
Ⅳ 国際化・ナショナリズム・宗教
 1 国際化の現状と意識──増加が止まった外国人と接触経験
 2 日本に対する愛着──変わらぬ高い水準
 3 日本に対する自信──再び上昇し過去最高水準に
 4 天皇に対する感情──過去最高に並んだ「尊敬」
 5 信仰・信心──仏は四割、神は三割の人が信じる
 6 宗教的行動──最も多い「年に一、二回は墓参り」

Ⅴ 仕事と余暇
 1 理想の仕事の条件──「仲間と楽しく」がトップを維持
 2 仕事と余暇のバランス──「仕事も余暇も」の定着
 3 余暇の過ごし方──現状も将来も「好きなことをして楽しむ」

Ⅵ 日常生活
 1 四側面からみた生活の満足感──物質面で高まる
 2 生活全体についての満足感──久しぶりに上昇
 3 生活充実の手段──変わらない〝健康第一〟
 4 貯蓄・消費態度──なくなった世代による違い
 5 欠かせないコミュニケーション行動──最近五年間で変化

Ⅶ 生き方・生活目標
 1 人間関係──あっさりとした関係を望む人がさらに増加
 2 能率・情緒──やや増加した情緒志向
 3 生活目標──増加した身近な関係重視

Ⅷ 終章──強まる伝統志向
 1 意識の変化量からみた四〇年
 2 東日本大震災は日本人の意識に影響を与えたか
 3 日本人の構造

付録Ⅰ 「日本人の意識」調査
付録Ⅱ 解析方法
付録Ⅲ 日本社会の変化

 この調査は、全国16歳以上の国民5,400人(450地点×12人)に対して、個人面接法で行われ、有効数は、3,070人(56.9%)である。個人面接法という方法に関わる問題など気になる点はあるが(質問項目によっては、ある一定の範囲内の「日本人」に限定された調査に終わっていないか)、40年の継続的データはきわめて重要なである。

挑戦し続ける宗教研究

 昨日は、國學院大学で開催の日本宗教学会の庶務委員会と理事会に出席のため、東京に出張した。新しい方向に向けたさまざまな試みが感じられる会議であったが、帰り際に、井上順考さんより、一冊の本をいただいた。宗教情報リサーチセンターの季刊の『ラーク便り』に連載のエッシをまとめ直したものとものとのことであるが、新しい研究動向に常に関心を広げて宗教研究を行っている井上さんの研究姿勢が溢れているエッセイ集である。小見出しを入れて紹介できれば、より内容が想像できるわけではあるが、その点は簡略化して以下に目次を記載したい。

井上順考
『さすらいの宗教研究』
非売品、2018年。

(1) ミーム論との出会い
(2) 環境は百面相
(3) 突然変異の大胆なチャレンジ
(4) 宗教を病に喩えると?
(5) 予言が外れてもなんとかできる話
(6) 「三人市虎を成す」にはワケもある
(7) 「父母未生」のとき自分はどこにいる?
(8) "winner-take-all"の仕組みが意識を生む?
(9) 「邯鄲の夢」は簡単な話ではない
(10)儀礼のアフォーダンス
(11)祈りのリバースエンジニアリング
(12)ロボットの宗教行為

 全体として、生命から情報・認知・脳へという関心の広がりが背後にあるエッセイのように感じられる。今後も、日本の宗教研究を牽引し刺激を与えるお働きに期待したい。
 なお、「あとがき」によれば、「「さすらい」という言葉をタイトルに含めたのは、自分の歩みはあてどもないが、しかし常に何かを目指している、という気持ちを込めたつもりである」と述べられている。研究と生き方とが結び付くというであろうか。

寛容論とキリスト教

 キリスト教思想、特に近代以降のキリスト教思想において、宗教的寛容・信教の自由・政教分離という問題は、基礎的な問題であり、繰り返し、さまざまな観点から研究がなされてきた。わたくしも、比較的最近、宗教的寛容に関して、エッセイを書いたばかりである。
 さて、近代のとくに哲学・宗教の領域を中心とした諸問題に関連して、「寛容」をあつかった諸論考が収録された論集が刊行された。紹介したい。

福島清紀
『思想史的考察 寛容とは何か』
工作舎、2018年。

編者はしがき

第一部 近代西欧におけるか寛容思想の展開
  第一章 政教分離の思想的基礎づけ
        [ジョンロックの『寛容についての書簡』を中心に]
  第二章 相互的寛容への隘路
        [ピエール・ベール論覚書]
  第三章 17世紀西欧における教会合同の試み
        [ライプニッツとボシュエとの往復書簡に関する一考察]
  第四章 《狂信》と《理性》
        [ヴォルテール『寛容論』再考]
  第五章 党派性の克服はいかにして可能か
        [レッシング『賢者ナータン』を中心に]

第二部 宗教・国家・市民社会の近代的構造連関と帝国憲法下の不寛容との闘い
  第六章 国家と宗教
        [カール・マルクス「ユダヤ人問題によせて」に関する試論]
  第七章 明治期の政治・宗教・教育
        [「内村鑑三不敬事件」と「教育と宗教の衝突」論争を中心に]
  第八章 一九三〇年代の日本における「転向」の一様相
        [文学者中野重治の軌跡]
 
補章 寛容は共存の原理たりうるか
        [ザルカ「寛容、あるいは共存の仕方」に寄せて]

解題 森川輝一
特別寄稿 福島清紀氏の思想研究
        [法政哲学会をめぐって]  澤田直

編者あとがき 奥田太郎
索引
著者略歴  

諸学問の父アリストテレス

 もちろん、アリストテレスが多くの学問の創始者というわけではないが、アリストテレス全集を見るだけでもあきらかなように、アリストテレスは古代の諸学問を包括的に論じ、それを後世に伝えたという点で、諸学問の父と呼ぶにふさわしい内実を有している。現在進行中で、いよいよ完成に近づいている、邦訳のアリストテレス全集の意義はきわめて大きいと言わねばならない。先日、届いた全集17巻を紹介してみたい。
 以下に示すように、今回配本された17巻は、アリストテレスが現代に至る社会科学の中でいかなる位置を占めるのかを論じる上で欠くことができないだけでなく、その射程はさらに遠くまで及んでいる。

『アリストテレス全集17 政治学・家政論』
岩波書店、2018年3月。

凡例

『政治学』 (神崎繁・相澤康隆・瀬口昌久訳)
『家政論』 (瀬口昌久訳)

解説
 『政治学』 (中畑正志)
 『家政論』 (瀬口昌久)

政治学関連地図
索引

 旧版のアリストテレス全集では、『家政論』は「経済学」というタイトルで訳されていた。「オイコノミアー」の意味の問題であるが、現代の経済学との関わりで言えば、『経済学』という訳はミスリーディングかもしれない。詳細は、解説を参照。
 また、キリスト教思想との関連でも、家政は、より適切かもしれない。キリスト教思想では、オイコノミアとカタカナ表記にするか、あるいは「経綸」という訳がつく。実際、このオイコノミアがキリスト教思想あるいは西洋思想全体においていかなる意義を有するかは、アガンベンの一連の著作が論じる通りであり、今回の配本に付けられた「月報」には、山本芳久さんが、「三大一神教とアリストテレス」というエッセイを寄せているが、アリストテレスの意義はキリスト教思想にとってもそのとおりと思われる。
 
プロフィール

LogosOffice

Author:LogosOffice
 これまで本ブログは、2013年度より2015年度まで科学研究費の交付(代表者・芦名定道)を受けて行われた研究を中心に、キリスト教思想研究に関わる情報を発信してきました。しかし、2016年度からの新しい研究プロジェクトに関連した事柄は、主に別のブログで取り扱うことにし、本ブログでは、これ以外の記事について継続的に内容を更新します(新しい科研に関するものも、記事の継続性の観点から一部はこちらでも扱います)。
 なお、本ブログにもしばしばコメントが寄せられますが、多忙のため、原則として応答その他の取り扱いはいたしません。

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