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医学とはどのような学問か

 医学・医療は、わたしたにとって身近な存在であり、多くの人の関心事です。しかし、医学がいかなる学問なのか、あるいは医学は広い意味での科学に属しているとして、たとえば、それは理学(物理学など)に近いのか工学に近いのか、など、必ずしも明確な理解が得られているわけでもないように感じられます。こうした基本的な問題を、医学教育また医療の現場で、追求した論考が刊行されました。キリスト教を含めた宗教とも、密接な関わりの後問題が扱われています。

杉岡良彦
『医学とはどのような学問か──医学概論・医学哲学講義』
春秋社、2019年。

はじめに

第1講 医学哲学とはⅠ
      医学の哲学と科学の問題
第2講 医学哲学とはⅡ
      医学哲学と農学原論の比較を通じて医学の全体像を問う
第3講 医学の科学論Ⅰ
      分子生物学と臨床疫学/EBM
第4講 医学の科学論Ⅱ
      臨床疫学/EBMの意義とNBM
第5講 医学の人間観Ⅰ
      医学は人間をどのように考えるのか
第6講 医学の人間観Ⅱ
      フランクルの人間観と次元的人間論
第7講 医療倫理と医療制度Ⅰ
      医療倫理はなぜ必要なのか
第8講 医療倫理と医療制度Ⅱ
      医療技術の発展と人間の尊厳
第9講 医学における「価値」の問題Ⅰ
      医学は何を目指しているのか
第10講 医学における「価値」の問題Ⅱ
      健康とは苦しみを取り除くことなのか
第11講 現代医学の諸問題Ⅰ
      研究不正の問題を考える
第12講 現代医学の諸問題Ⅱ
      代替医療や統合医療は疑似科学か
第13講 医学教育における教養科目の意義を考える
      医学概論の観点から
第14講 孤独に関する医学的研究と人間の孤独性
第15講 生物心理社会
      スピリチュアルモデルと精神的人格

事項索引
人名索引

 筆者も医学概論・医学哲学は、前著『哲学としての医学概論 方法論・人間観・スピリチュアリティ』(春秋社、2014年)において、公にされているが、本書は、講義・講演に基づき、医学概論の入門書という意図で執筆されました。著者の考える医学概論の構想が多様で整理された諸問題において、明快に示されています。本書の「はじめに」の冒頭で、説明されている通りです。

「本書は、「医学とはどのような学問か」を考える医学哲学(医学概論)の講義であり入門書です。医学部をはじめ医療系大学の多くでは、一年目に医学概論や医療概論という名の講義が行われます。それらは、ほとんどの場合「医学の入門」を意味しますが、本書では医学概論の創始者である澤瀉久敬の考えに倣い、「医学の哲学」としての医学概論を取り上げます。」
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生物学の動向から2

 長谷川眞理子さんの著作について、続けます。比較的最近のものとして、次の著作が存在するが、長谷川さん自身の生物学を志す姿勢が良く現れたエッセイ集であり、現代の生物学者の考え方を知る上で、興味深い。

長谷川眞理子
『世界は美しく不思議に満ちている』
青土社、2018年。

序 文明の先を見る

Ⅰ 世界へ出る
 情報過多と好奇心のゆえに/人生は楽しいし、世界は美しくて不思議に満ちている/なぜ「若く」見られたいのだろう?/進化論から考える「心」の誕生/ダーウィンの淘汰による進化の理論/北極紀行、その一(フィールド篇)/北極紀行、その二(歴史篇)

Ⅱ ヒトを知る
 ヒトの「はじまり」/ヒトは共同繁殖/利他の心の進化/進化心理学から考える「共感」/女性が閉経後も長く生きるわけ 

Ⅲ 社会で生きる
 生態学から考える「持続可能」な社会/行動生態学から考える「子どもの虐待」/進化生物学から考える「宗教」/ヒトの進化と現代社会

結 科学技術文明はどこへ向かうのか

おわりに
初出一覧

生物学の動向から1

 前回は、コンウェイ・スミスの著作を取り上げたが、現代の生物学の議論は、宗教研究の視点からも教務深いものが多く存在する。今回は、人文系のシンポジウムにもしばしば登場し、わかりやすく解説することでも有名な方の著作から、次のものを紹介。

長谷川眞理子
『生き物をめぐる4つの「なぜ」』
集英社新書、2002年。

はじめに
第1章 雄と雌
第2章 鳥のさえずり
第3章 鳥の渡り
第4章 光る動物
第5章 親による子の世話
第6章 角と牙
第7章 人間の道徳性

あとがき
主要参考文献

 第7章の議論などは、進化論から道徳を論じる代表的なものである。こうした議論によって、たとえば、賀川の議論を再評価するとどうなるだろうか。

現代生物学と自然神学

現代の生物学の議論は、単純な「進化論と創造論」対立という図式にはおさまらない、面白い展開になりつつある。すでに本ブログでも述べたように、わたくしは、今年度前期に「外国文献研究(文・英)A-E1」という科目を担当しているが、そこでテキストとしているのが、次の文献である。

Alister E. McGrath,
Surprised by Meaning. Science, Faith, and How We Make Sense of Things,
Westminster/ John Knox Press, 2011.

 先週の水曜日に読んだ、「Chapter 10: The Accidents of Biological History?」で取り上げられたのが、進化論と目的論との関わりが問題となった。そこで、グールドとの対比で取り上げられたのが、サイモン・コンウェイ・スミスの、進化の過程がその偶然性にもかかわらず、比較的少ない数の可能な結果に収束する(converge)という議論である。これは、突然変異という偶然性を認めつつも、その役割を相対化する議論であり、自然神学的にも興味深いものである。コンウェイ・スミスは、日本でも著書が邦訳され、一定知られている高名な生物学者である。
 たとえば、次の文献など。

サイモン・コンウェイ・スミス
『カンブリア紀の怪物たち シリーズ「生命の歴史」──1 進化はなぜ大爆発したか』
講談社現代新書、1997年。

序 「生命の歴史」の五大事件 (松井孝典)

第1章 カンブリア紀への招待
第2章 バージェス頁岩の発見
第3章 タイムマシーンに乗って
第4章 新たなバージェス頁岩の探求
第5章 バージェス頁岩の重要性
第6章 門の起源
第7章 別の世界

おわりに
謝辞

ゲノム編集をめぐって

 遺伝子工学は宗教・キリスト教思想にとっても、無関心ではいられない問題であり、最近は、ゲノム編集が大きな話題になった。本ブログでも、「「ゲノム編集による子ども」の誕生についての日本学術会議の幹事会声明」(2018/12/7)などをこれまで取り上げてきた。
 こうした問題状況を把握する上で、参考になる文献として、次のものを紹介したい。

青野由利
『ゲノム編集の光と闇──人類の未来に何をもたらすか』
ちくま新書、2019年。

はじめに

序章 遺伝子組み換えの夜明け
第1章 クリスパー誕生物語
第2章 人工の遺伝子編集ツールを作る
第3章 遺伝子治療をこう変える
第4章 ヒト受精卵を編集する
第5章 種を「絶滅」に導く遺伝子ドライブの脅威
第6章 古代人の再生は可能か
終章 そおkにある「新世界」は素晴らしいか

おわりに
主な引用・参考文献
プロフィール

LogosOffice

Author:LogosOffice
 これまで本ブログは、2013年度より2015年度まで科学研究費の交付(代表者・芦名定道)を受けて行われた研究を中心に、キリスト教思想研究に関わる情報を発信してきました。しかし、内容的にこの科研のテーマ(「自然神学・環境・経済」)に限定されない諸問題を扱うことが多くなったため、本ブログのタイトルと趣旨を変更したいと考えました。新しいタイトルは「自然神学・宗教哲学・自然哲学」となります。もちろん、これまで同様にさまざまな問題を取り上げます。
 なお、本ブログにもしばしばコメントが寄せられますが、多忙のため、原則として応答その他の取り扱いはいたしません。

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