ガリレオ研究

 ガリレオ研究は、宗教と科学というテーマを研究している立場からは、関心の対象とならざるを得ない位置を占めている。日本でガリレオについて考える際に欠くことができないのは野、基本的なテキストのしっかりした邦訳の存在であろう。
 このたび、『星界の報告』の新しい訳をいただいた。このテキストは、トスカナ大公の献呈されたもので、比較的小さなものである(邦訳で、80頁程度)。しかし、ガリレオの天体観測についての基本的な文献であり、興味深い(月面から木星の衛星へ。「ガリレオの科学、そして現代社会の基礎になっている自然科学の誕生過程について、できるだけ多くの方に理解を深める機会を持っていただけたらと思います」114頁)。新しい邦訳は、訳者の詳細な解説(30頁程度)と、文献案内が付されており、その点も、お勧めである。

ガリレオ・ガリレイ、伊藤和行訳
『星界の報告』
講談社学術文庫、2017年。

凡例

献辞
天文学的報告
  第一章 覗き眼鏡[望遠鏡]
  第二章 月の表面
  第三章 恒星
  第四章 メディチ星[木星の衛星]

訳者解説
  一 望遠鏡に出会うまで
  二 望遠鏡との出会い
  三 望遠鏡による天体観測
  四 『星界の報告』
  五 『星界の報告』刊行以後
 
文献案内・読書案内

 この文献案内・読書案内にも含まれているが、訳者自身によるガリレオ研究としては、次のものが存在する。

伊藤和行
『ガリレオ──望遠鏡が発見した宇宙』中公新書、2013年
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人工知能と心

 人工知能について、多くの議論・期待が飛び交っている。宗教研究の分野でも、脳と心、という問題連関で、しばしば人工知能について言及される。こうした議論に振り回されないためには、基本的な論点をしっかり押さえておくことが肝心であり、そのためには、宗教研究者にも一定の知識が要求される。
 たとえば、次の文献は、読みやすく、しかもしっかりした内容と思われる。

西垣通
『ビッグデータと人工知能──可能性と罠を見極める』
中公新書、2016年。

まえがき

第一章 ビッグデータとは何か
  1・1 データが主役の時代
  1・2 富とセキュリティ
  1・3 超えるべき壁

第二章 機械学習のブレイクスルー
  2・1 人工知能ブームの再来
  2・2 深層学習の登場

第三章 人工知能が人間を超える!?
  3・1 シンギュラリティ狂騒曲
  3・2 生物と機械の違い
  3・3 ロボットとのコミュニケーション

第四章 自由/責任/プライバシーはどうなるか?
  4・1 一神教の呪縛
  4・2 社会メガマシン

第五章 集合知の新展開
  5・1 ビッグデータと集合知
  5・2 人間と機械の協働

あとがき


おもな参照文献

なお、最後「5・2」の小見出しは、次の通り。
 AIからIAへ
 ハイブリッド・コミュニティ
 情報教育の刷新
 AIは仕事を奪わない

 さて、読後の印象は、どんな感じだろうか。「一神教の呪縛」など、気になる項目もある? 

心・脳・物理学

 脳科学の観点からの心へのアプローチは、さまざまな研究分野に及んでおり、宗教研究においても同様である。今月末の仕事の関係で、久しぶりに、次の本に目を通した。物理学から心へ、典型的な物理主義であるが、物理学の刷新を視野に入れた大胆な構想である。

ロジャー・ペンローズ、論争を挑む三人:アブナー・シモンズ、ナンシー・カートライト、スティーヴン・ホーキング
『心は量子で語れるか──21世紀物理の進むべき道をさぐる』
講談社、1999年。

マルコム・ロンゲアによる序文

第一部 宇宙と量子と人間の心と
第一章 宇宙の未完成交響曲
第二章 量子力学の神秘
第三章 心の神秘

第二部 ペンローズと三人の科学者
第四章 精神、量子力学、潜在的可能性の実現について アブナー・シモニー
第五章 なぜ物理学か? ナンシー・カートライト
第六章 恥知らずな還元主義者の反論 スティーヴン・ホーキング
第七章 それでも地球は回る ロジャー・ペンローズ

訳者あとがき
さくいん
 

コペルニクス入門

 コペルニクスは、近代科学への転換を象徴する人物の一人であり、キリスト教思想との関わりでも興味深い思想家である。16世紀は宗教改革の時代ではあるが、そこにはさまざまな知的動向が交差して動いており、機会があれば、研究者として本格的に取り組んでみたいところであるが。
 今回は、コンパクトな入門書を紹介。定評あるシリーズの最新の一冊である。

Owen Gingerich,
Copernicus. A Very Short Introduction,
Oxford University Press, 2016.

List of illustrations
Acknowledgements

Prologue
1 Copernicus, the young scholar
2 The architecture of the heavens
3 Copernicus's vision
4 Canon days and the Little Commentary
5 Competing with Ptolemy
6 Rheticus
7 De revolutionibus
8 The book nobody read

Appendix 1: Copernicus's alternative to the equant
Appendix 2: De revolutionibus as a recipe book for planetary positions

References
Further reading
Index

コンパクトな割には、よく出来た内容である。
 世界観と信仰とは、緊密にあるいは緩やかに(この間のどこに位置するかは、人によってさまざまな)、結び付いている。この状況は、20世紀にブルトマンを焦点とした議論を生み出すが、現在も係争中である。

進化論・人類学・脳

 進化論と人類学は、相互に補強し合う関係にあるとも言えるが(人類に至る霊長類の進化の系統)、最近、それに「脳科学」が組み合わされることによって、面白い議論の展開がなされている。「脳」を介することで、進化論・人類学が、宗教を含めた人間の文化的領域に、より実質的な仕方でコミットする可能性が開かれた。こうした可能性について、わかりやすい本として次のものが挙げられる。タイトルのイメージは別にして、宗教に関してもきわめて興味深い議論が見られる。

ロビン・ダンバー
『友達の数は何人? ──ダンバー数とつながりの進化心理学』
インターシフト、2011年。

Part I ヒトとヒトのつながり
  第1章 貞節な脳(男と女)
  第2章 ダンバー数(仲間同士)
  第3章 親類や縁者の力(血縁)
  第4章 ご先祖さまという亡霊(民族)

Part II つながりを生むもの
  第5章 親密さの素(触れ合い・笑い・音楽)
  第6章 うわさ話は毛づくろい(言葉・物語)
  第7章 今夜、ひとり? (魅力)
  第8章 エスキモーのあいさつ (キス・匂い・リスク)
  第9章 ずるいあなた (婚姻)

Part III 環境や人類とのつながり
 第10章 進化の傷跡 (肌の色・体質)
 第11章 進化の邪魔をするやつはどいつだ? (進化と欲望)
 第12章 さようなら、いとこたち (絶滅の罠)
 第13章 こんなに近くてこんなに遠い (人類の起源)
 第14章 ダーウィン戦争 (進化と創造)  

Part IV 文化・倫理・宗教のつながり
 第15章 人間ならではの心って? (思考意識水準)
 第16章 カルチャークラブに入るには (文化)
 第17章 脳にモラルはあるのか? (道徳)
 第18章 進化が神を発見した (宗教)
 第19章 頭を使って長生きしよう (健康・知性)
 第20章 美しい科学 (芸術)

謝辞
解説──我らデジタルエイジの石器時代人 (本書出版プロデューサー 真柴隆弘)

 ダンバーは、進化論・心理学・認知科学・人類学という諸分野がつながる領域で活躍の科学者であり、本書でも出てくる「ダンバー数」で有名になった人物である。ひらめきはかなりのもので、たとえば、次の発言は、同意できるだろうか。

「そこであえて憶測するのだが、記憶力の発達には幼いときの丸暗記がけっこう重要な役割を果たしているのではないだろうか。それによってニューロン接続を強化するのだ」(246)。

 とすれば、「楽に学ぶ」という方法論は、「学ぶ」ということについて人類が開発してきた重要な部分を切り落としており、結局は科学の発達には逆効果とも言えるだろうか。
 なお、「進化が神を発見した」はおそらく正しいと思われるが(昆虫にとっては宗教も神も存在しない、あるいは「意識」されないという意味で)。しかし、これと「神の実在」とは論理的なレベルがことなる議論であることにも留意する必要がある。認識論と存在論の関わりと言っても良い。
プロフィール

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Author:LogosOffice
 これまで本ブログは、2013年度より2015年度まで科学研究費の交付(代表者・芦名定道)を受けて行われた研究を中心に、キリスト教思想研究に関わる情報を発信してきました。しかし、2016年度からの新しい研究プロジェクトに関連した事柄は、今後開設の別のブログで取り扱うことにし、本ブログでは、これ以外の記事について継続的に内容を更新します。
 なお、本ブログにもしばしばコメントが寄せられますが、多忙のため、原則として応答その他の取り扱いはいたしません。

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