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社会脳研究の現状

 本ブログでは、これまで「脳科学とキリスト教思想・宗教思想」という問題を扱ってきたが、その際に、特に社会脳研究に注目した。社会脳は現在、脳科学と社会科学・人文科学とをつなぐ上で重要な研究領域とされてきているが、しかし、日本では、宗教という問題領域が取り上げられることはほとんどないように思われる。この点をどう分析するかは、今後の問題点として、今回は、社会脳研究の動向に関わる文献を紹介したい。
 日本学術会議における心理学・教育学委員会の脳と意識分科会が2017年に出した提言「融合社会脳研究の創成と展開」が元になったものであり、日本における研究動向を知るには、重要な意味を持つと言えよう。

苧阪直行ほか
『社会脳から心を探る──自己と他者をつなぐ社会適応の脳内メカニズム』
日本学術協力財団、2020年。

発刊に寄せて (山極壽一)
発刊にあたって (苧阪直行)

1 自己と他者をつなぐ社会脳
   苧阪直行
2 社会脳から見た発達障がい
   菊知充
3 協力と公正を支える社会脳
   大平英樹
4 社会脳とギャンブル
   高橋英彦
5 精神疾患と社会脳
    ──認知機能障害からみた統合失調症  
   松井三枝
6 社会脳から見た自己と身体意識
    ──新学術領域研究「身体性システム」の成果から

附録
 日本学術会議 提言「融合社会脳研究の創成と展開」
 用語の解説
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創造と進化

 創造と進化をめぐっては、この150年間に多くの議論がなされてきた。それは、いまだ継続中の問題系を作っている。本ブログであつかわれている主要テーマにも密接に関わっており、繰り返し取り上げられていた。今回紹介するものは、最近邦訳が出版されたものであり、早速、取り上げて見ることにした。

デニス・アレクサンダー
『創造か進化か──我々は選択せねばならないのか』
YOBEL、2020年。

初版に対する序文
第2版に対する序文
図表

第1章 創造とは何か?
第2章 創造に関する聖書的教義
第3章 進化とは何か?──年代決定、DNA、遺伝子
第4章 進化とは何か?──自然選択、繁殖成功、協力
第5章 進化とは何か?──種形成、化石、情報の問題
第6章 進化に対する異議
第7章 では、創世記は?
第8章 進化的創造主義
第9章 アダム、エバとは何者か?──その背景
第10章 アダム、エバとは何者か?──創世記と科学の対話
第11章 進化と死についての聖書的理解
第12章 進化と堕落
第13章 進化、自然悪、神義論的疑問
第14章 知的設計(ID──インテリジェント・デザイン)と創造の秩序
第15章 進化──それは知的で、設計されたものか?
第16章 生命の起源

あとがき
注釈
訳者注釈
索引

訳者あとがき 


脳科学と宗教

 1980年代頃から、宗教研究の分野でも、脳科学と関連付けた研究が行われるようになり、現在に立っている。20世紀のこうした研究を代表する、ニューバーグの著作は、日本でも紹介されてきているが、今回取り上げるのは、ウォルドマンとの共著で一般向けの読みやすい著作である。

アンドリュー・ニューバーグ、マーク・ロバート・ウォルドマン
『「悟り」はあなたの脳をどのように変えるのか──脳科学で「悟り」を解明する』
ナチュラルスピリット、2019年。

賛辞
著者のノート

Part 1 悟りの根源
1 問題児の悟り
2 悟りとは?
3 悟るときにはどう感じるのか
4 神なしの悟り
5 人の認識の段階

Part 2 悟りへの道
6 超自然の存在をチャネリングする
7 他人の意識を変える
8 ハートをワンネスに向けて開く
9 自己変革を信じるということ

Part 3 悟りに向けて動く
10 悟りの準備
11 体験を激しいものにする
12 万人向けの祈り

付録 悟りを導くためのツールとソース
参考文献
訳者あとがき

 本書は、悟りをめぐる脳科学的な研究の紹介と言うよりも、そうして得られた知見に基づく悟りの勧めといった内容である。わかりやすいが、ややスピリチュアリティ系とでも言うべきものであり、その辺で評価が分かれるかもしれない。

脳科学の射程

 脳科学は、現在きわめて広範な問題領域をまきこんで展開中である。その中には、宗教研究も含まれる。宗教研究と脳科学とを関連づける上で注目すべきテーマはいくつか考えられるが、その一つは、病であろう。病における身体と心の繋がりあるいは人格は、脳と宗教とに共通の問題であり、両方の研究分野の知見を相互参照することは、有益な展開を可能にするかも知れない。そうした中で、次の文献は、興味深い問題を提起している。

恩蔵絢子
『脳科学者の母が、認知症になる──記憶を失うと、その人は〝その人〟でなくなるのか?』
河出書房新社、2018年。

はじめに 医者ではなく脳科学者として、母を見つめる

1 六五歳の母が、アルツハイマー型認知症になった
2 アルツハイマー型認知症とはどんな病気か
3 「治す」ではなく「やれる」ことは何か──脳科学的処方箋
4 「その人」らしさとは何か──自己と他者を分けるもの
5 感情こそ知性である

おわりに 父母と竿灯まつりに行く

参考文献

 認知症は、人間の核心的問題を問うている。その人は何者か、わたしとは何者か、人格とは知性とは。
 人格やその人らしさという問題は、個に集約できる問題ではなく関わり・関係性を視野に入れる必要がある。「認知能力が失われても、残るものは何か」との問いは重い。「感情こそ知性である」「感情が知性を生み出している」が脳科学の知見であるとすれば、それは宗教研究から遠くない。

ゲノム編集と現在

 ゲノム編集された受精卵からの子供の誕生というニュースが世界を駆け巡ったのは、ちょうど1年前である。この間、キリスト教の議論はどのように深まり展開したのだろうか。また、日本における法的な対応はどこまで進んだのだろうか。
 このうち、後者の日本の法をめぐる問題に関連して、朝日デジタルの次のような記事が掲載された。最初の部分を引用したい。

「ゲノム編集して妊娠、禁止へ デザイナーベビー懸念」

「ゲノム編集技術を人間の受精卵に使い、子宮に戻す臨床利用について、厚生労働省の専門委員会は4日、禁止するための法規制を含めた制度をつくるべきだとする報告を大筋でまとめた。政府は、具体的な規制の内容について検討し、法律や指針づくりを進める。
・・・」

 この一年間の動きを、どう評価するかは様々と思われるが、日本の議論・取り組みがきわめてゆっくりであり、本当に、ゲノム編集の問題へ対応できるのか、不安になるのは、わたくしだけであろうか。法や制度というレベルではなく、指針による対処、というパターンはよく聞くものであるが、すべてこれで問題なしとするのだろうか。
プロフィール

LogosOffice

Author:LogosOffice
 これまで本ブログは、2013年度より2015年度まで科学研究費の交付(代表者・芦名定道)を受けて行われた研究を中心に、キリスト教思想研究に関わる情報を発信してきました。しかし、内容的にこの科研のテーマ(「自然神学・環境・経済」)に限定されない諸問題を扱うことが多くなったため、本ブログのタイトルと趣旨を変更したいと考えました。新しいタイトルは「自然神学・宗教哲学・自然哲学」となります。もちろん、これまで同様にさまざまな問題を取り上げます。
 なお、本ブログにもしばしばコメントが寄せられますが、多忙のため、原則として応答その他の取り扱いはいたしません。

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