こころ・宗教をめぐって

 比較的最近、本ブログでは、「こころ・宗教」というテーマに関連して、脳、AI、社会心理学、子ども、といった多様な問題設定、アプローチを取り上げてきた。心という謎について、現代的知の営みは再度、本格的な前進を成しつつあると言うべきであろう。こうした中に位置づけられるべきは、人間以外の霊長類との比較を通した心の進化という問いである。今回取り上げるのは、日本におけるこの分野の研究者による著書であり、丁寧でかみ砕いたわかりやすい内容である。

松沢哲郎
『分かちあう心の進化』
岩波書店、2018年。

はじめに

 1 心の進化を探る
 2 アイ・プロジェクト
 3 アフリカに行く
 4 ボッソワの森で
 5 親と子と仲間と
 6 子どもを育てる
 7 相手の心を理解する
 8 仲間とかかわる知性
 9 文化を生み、引き継ぐ
10 言語の起源
11 芸術の誕生
12 暴力はどこからきたか
13 希望を生み出す知性

あとがき──そして月に行く
もっと知りたい人のために

 本書を含めた、「岩波科学ライブラリー」は、高校生や大学1・2回生あたりを念頭におかれたシリーズでしょうか。研究者の研究へ関わるようになった経緯を含めた、良い入門書(200頁程度あるいは、未満)と言えます。
 霊長類学(サル学、ゴリラ研究)、認知科学、脳科学(社会脳研究)は、相互に結び付き、それがAIやロボットと繋がるとき、宗教研究は大きく進展することになるだろう(あるいは、進展しつつある)。キリスト教研究も、こうした現代的知の展開を踏まえたものとなることが期待されているように思われる。
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AIと宗教

 生前にホーキング博士が、自律型AIの危険性について警告していたことは、しばしば言及されるところであるが、AIがもつ宗教的意味(個々の宗教にとっての、人間の宗教性にとっての、また宗教研究にとっての)は、必ずしも明瞭ではない。あるいは、まだ見通しが立たないというべきかもしれない。
 ともかくも、知見を集める必要がある。今回は、目に付いてた文献を一つ、紹介。タイトル(副題)は、この種の本にありがちなセンセーショナルなものであるが、中身は読み応えのあるもので、しかも、大著。

ニック・ボストロム
『スーパーインテリジェンス──超絶AIと人類の命運』
日本経済新聞出版社、2017年。

スズメの村の、終わりが見えない物語
原著まえがき
謝辞

第1章 人工知能の発展、現在の能力
第2章 スーパーインテリジェンスへの道程
第3章 スーパーインテリジェンスの形態
第4章 知能爆発の速さ
第5章 戦略的優位
第6章 卓越した認知能力を持つスーパーパワー
第7章 スーパーインテリジェンスの意思
第8章 人類滅亡:脅威は命運か
第9章 コントロール問題:超絶知能を制御できるのか
第10章 AIシステムの四つのタイプ:「オラクル」「ジーニー」「ソブリン」「ツール」
第11章 多極シナリオ:複数のスーパーインテリジェンスの世界
第12章 価値観の獲得
第13章 選定基準の選択
第14章 戦略的展望
第15章 試練の時

原著あとがき
訳者あとがき
原注
参考文献
索引

 AI問題は、少なくともインテリジェンスについて、つまり人間について、本質的に再考する機会になり得る点で、意義深いと言えるかもしれない。

ロボットをどうイメージするか

 ロボットは、鉄人28号などSFやアニメから始まり、産業用ロボットとして実用化し、今や日常生活へと広がりつつある。ロボットは、人工知能や脳科学などを考える上でも重要なテーマであるが、一般的なロボットのイメージは、強くて便利ということだろうか。
 しかし、別の発想のロボットも可能ということで、今回は次の文献を取り上げる。

岡田美智男
『〈弱いロボット〉の思考──わたし・身体・コミュニケーション』
講談社現代新書、2017年。

プロローグ

第1章 気ままなお掃除ロボット〈ルルン〉
   ゆきあたりばったりのなかから生まれてくるもの

第2章 ロボットと〈環境〉との出会い
   〈フレーキー〉と〈ゲンギス〉の振る舞いをめぐって

第3章 自らの視点から描いた自画像
   わたしたちの身体にまつわる〈弱さ〉の起源を探る

第4章 〈ことば〉を繰りだしてみる
   相手の目を気にしながらオドオドと話す〈トーキング・アリー〉

第5章 小さなドキドキを重ねながら
   〈静歩行〉から〈動歩行〉へ、そして〈地面〉から〈他者〉へ

第6章 〈引き算〉から生まれるもの
   〈トーキング・アイ〉と〈む~〉そして原初的コミュニケーション

第7章 〈弱いロボット〉の誕生
   子どもたちを見方にしてゴミを拾い集めてしまう〈ゴミ箱ロボット〉

第8章 〈対峙しあう関係〉から〈並ぶ関係〉へ
   一緒に並んで歩くだけのロボット〈マコのて〉

エピローグ

参考文献

脳、こころ、宗教

 脳、こころ、宗教は、本ブログにおけるテーマの一つであり、そこには脳のめぐる、脳科学の動向が関連し、脳からこころに広がる問題が宗教とどのように繋がるかについて、考察を深めることが必要になる。こうして点で注目してきたのが、社会脳研究であるが、それは、昨日の社会心理学とともに、社会関係を介した脳の問題(特に病や障害)を視野に入れることが必要になる。今回取り上げるのは、こうした中で、話題に一冊である。

友田明美
『子どもの脳を傷つける親たち』
NHK出版新書、2017年。

序 章 健全な発達を阻害する脳の傷つき
第一章 日常の中にも存在する不適切な養育
第二章 マルトリートメントによる脳へのダメージとその影響
第三章 子どもの脳がもつ回復力を信じて
第四章 健やかな発育に必要な愛着形成
終 章 マルトリートメントからの脱却

あとがき
参考文献

 各章の中の節レベル(小見出し)のタイトルが入ると内容がはっきりするのは、今回も同様であるが、やや煩雑なため省略させていただいた。新書で、読みやすい本なので、関心ある方は、実際に手に取るとよいでしょう。

心と社会

 宗教は心の現象と密接な関わりにある、あるいは宗教は心を核にする。これは多くの宗教研究において共有された認識であり、それだけに、心理学はきわめて気になる研究領域である。とりわけ、心と社会(対人関係)は、宗教を理解するには欠くことができない。今回紹介するのは、こうした点で、まさに気になる一冊である。

唐沢かおり
『なぜ心を読みすぎるのか──みきわめと対人関係の心理学』
東京大学出版会、2017年。

第1章 対人認知を考える視点──他者をみきわめる目
第2章 性格特性からみる評価の役割
第3章 行動の原因としての心
第4章 心の推論方式
第5章 人間としてみる
第6章 道徳心の根拠としての心
第7章 互いにみきわけある私たち

あとがき
引用文献
人名索引/事項索引

 節タイトルまで示せば、内容が明瞭になるのだが、少し量が多いので省略。
 「心の奥を斟酌して他者のふるまいを評価する」は、最近流行の忖度とも、関わるか?
 ともかくも、こうした統計的な手法を含めたマクロな議論(社会心理学)が、宗教研究と脳科学・認知科学との間を繋ぐものとして位置づけられるものなのである。
 
プロフィール

LogosOffice

Author:LogosOffice
 これまで本ブログは、2013年度より2015年度まで科学研究費の交付(代表者・芦名定道)を受けて行われた研究を中心に、キリスト教思想研究に関わる情報を発信してきました。しかし、2016年度からの新しい研究プロジェクトに関連した事柄は、主に別のブログで取り扱うことにし、本ブログでは、これ以外の記事について継続的に内容を更新します(新しい科研に関するものも、記事の継続性の観点から一部はこちらでも扱います)。
 なお、本ブログにもしばしばコメントが寄せられますが、多忙のため、原則として応答その他の取り扱いはいたしません。

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