ソウル研究調査6

 昨日報告した韓国カトリック教会の環境司牧委員会とともに、今回は、貧困司牧委員会の担当者に対するインタビューを行った。すでに報告したように、前回の訪問の際の担当者と同一の方にこの間の様子をお伺いすることができた。
 
 この間の動きとしては、2009年のソウル駅北側の再開発における商店街の強制撤去によって、6名の死者が出て、それによって強制退去禁止法が制定されたということである。ここに従来この委員会が取り組んできた、住宅撤去という問題とはレベルの違う問題状況が確認できる。韓国でも、非正規労働者や解雇といった労働問題が貧困に結び付いている現実がある。
 また、今回のインタビューでわかったのは、貧困司牧委員会の活動がさまざまな委員会や組織との連携で進められていることである。インタビューで登場したのは、労働司牧委員会、正義と平和協議会であり、こうしたカトリック教会内部の連携が重要になっている(もちろん、カトリック外部のNGOや労働組合との協力、情報交換もあるが)。しかし、これは、貧困司牧委員会が独自の活動を推進する上で、マイナスに作用することがあり得るということを意味しているようにも感じられた。

 インタビューの後半では、日本における少子高齢問題が深刻になってきており、キリスト教界で地域福祉への取り組みの必要性が意識され、その取り組みがはじまっていることを指摘して、韓国の場合について質問した。貧困司牧委員会内部でも、問題ねの取り組みの必要性が話題になってきているが、まだ具体的な活動としては展開されていないという回答であった。おそらく、韓国でも、少子高齢に関連した諸問題は、数年後には韓国カトリック教会でも取り組みが始まることになるのではないだろうか。貧困司牧委員会は、これに関しても重要な働きをすることになるように思われる。

 最後に、新教皇になっていの感想が伺ったが、雰囲気の変化は感じられるものの、貧困司牧委員会の活動がそれでやりやすくなったということはまだないとのことである。
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ソウル研究調査5

 今回の調査の主要な目的の一つは、韓国のカトリック教会における、環境と経済をめぐる取り組みについてインタビューし、資料を収集することであった。どうようの調査は、2010年にもほぼ同様の調査を行ったことがあり(本ブログの2010.12.16の記事を参照)、今回は、この4年間の展開についての調査が中心になった。

 調査は、環境司牧委員会と貧民司牧委員会の担当者へのインタビューを中心に進められた。前者の委員会の担当者はこの4年で交代していたが、後者の貧民司牧委員会に方は、同じ担当者にインタビューに応じていただくことができた。今回は
まず、環境司牧委員会(Cho Hae Bung氏らにインビュー)について報告したい。 

 4年前の調査でも取り組みとしてあがられた、四つの川の開発をめぐる問題(四大河川開発問題)は継続的な取り組みが行われ、現在、調査委員会の調査が進みつつある。また漢江上流部の生態系保護の取り組みや、「生命の川のためのミサ」(20~30名)が毎週水曜日に行われている。あるいは、太陽光パネルの導入やLED照明への切り替えによって、エネルギー効率の10%アップを実現するなど(ソウル市とカトリック教会との協約が結ばれている)、環境問題への取り組みの着実な進展が見られる。

 さらに、神学的な取り組みとしても、聖書を根拠として、被造物の保全(Integrity of creation)が教会の社会的責任であることが論じられる。
 
 この4年間の変化としては、フクシマ原発事故を受けて、韓国カトリック教会の宗教会議において、キリスト教の立場からの公式の反対が表明されたことが挙げられるが、原発への信仰に立った反対の動きは、韓国キリスト教全体において広がっているように思われる。
 また、最近韓国のカトリック教会については、教皇の韓国訪問を含めて活発な動きが見られ、信徒数の増加とした表れている。新教皇フランシスコの選出が、韓国カトリック教会における環境や貧困などの諸問題への取り組みにとって、プラスの影響を及ぼしていることは明らかである。

 今回は、環境司牧委員会から多くの資料をいただくことができたので、いすれ、翻訳などによって紹介を行ってゆきたいと考えている。

ソウル研究調査4

 今回の調査は、YMCAとカトリック教会の二箇所を主要な調査先にしていたが、YMCAについては、韓国YMCA 全国連盟を訪問し(11月24日午前11時~12時)、YMCA Life-Peace Center のLee, Yunheeさんにインタビューを行った。なお、今回の全国連盟とは、2012年の調査の際に、インタビューを行ったソウルYMCAであり(本ブログの2012.8.26の記事で報告)とは区別されるものであり、韓国全国の各地域各地区YMCAに対する上部組織と位置づけられるものである。

 Leeさんによれば、YMCAにおける環境問題との取り組みは、1980年代からはじまり、1991年以降、例えば雑誌「緩急レポート」を刊行(1993-1995)するなどの活動を行ってきたが、2011年のフクシマ原発事故以降、核問題が大きなテーマとなっている。核の問題を信仰の問題と位置づけ、KNCCとの協力で、2011~13年に、「核のない世界の運動」を推進した(2012年で23団体参加)。
 もちろん、韓国のすべてのキリスト教教派や団体が一致できているわけではないが、核問題ネットワークはエネルギー運動として確実に展開しているとのことであり、各教会レベルでのエネルギー削減となって表れている。YMCAの活動は、さまざまなNGOと協力する一方で、各地域の独自の取り組みとしても進展している(たとえば、釜山の例)。

 今回の訪問では、環境や核問題以外に、YMCAが平和問題と取り組んでいることを知ることができた。Leeさんは、特にパレスチナ問題に取り組んでいる。
 また、2014年5月30日に刊行の「Korea YMCA Centennial Commemoration International Symposium Report」を資料としていただくことができたが、そこでも世界平和運動に関わる文章が多く収録されていた。

 韓国のキリスト教会の動向(特にプロテスタント教会の)についても、知ることができ、有意義なインタビューであった。

ソウル研究調査3

 今回の調査は、本ブログにおける「環境・経済」という部分に関わるものであり、一つのテーマはすでに一部報告済みの「教会建築と環境」である。実際、教会建築はさまざまな視点から興味深い研究対象であって、今回の調査では、韓国の代表的なカトリックの聖堂(ゴシック様式)を見ることが出来た。
 一つは、明洞聖堂であり、日本でももっともよく知られた韓国を代表する教会建築であり、観光スポットである。昨年は、聖堂の前(下)の部分が大規模な工事中であったが、今回はその完成した形を見ることが出来た。聖堂に昇る坂の部分が整えられ、右下の部分に大きな施設が完成していた。この施設は、地階と一階が一般の市民に開放されており、中央の広い空間の周辺に喫茶、書店、ギャラリーなどが配置されている。ゆっくりした時間を過ごすことが出来る雰囲気である。

 もう一つは、明洞聖堂(1898年)に先だって建設されたソウルで最も古いゴシック様式の聖堂、中林洞・薬峴聖堂(ヤッキョン・ソンダン、1891年)である。明洞聖堂よりも小さいが美しい聖堂である。この聖堂に関連して興味深いのは、1991年の100周年を記念して敷地内に建設された「西小門 殉教聖地展示館」である。16聖人の聖該が安置され、朝鮮時代のカトリックの殉教の歴史が展示物を通して辿ることができる(この場所は、朝鮮時代の公式処刑場であった)。
 わたくしは、これまでソウルと釜山でカトリクの殉教記念館を見学したことがあるが、日本や中国を含め、東アジアにおける殉教について、総合的な研究が可能ではないかと考えている。

 なお、ゴシック建築の思想的意義については、次の文献が面白い。

アーウィン・パノフスキー
『ゴシック建築とスコラ学』
ちくま学芸文庫。

ソウル研究調査2

 今回の研究調査では、キリスト教、特に教会における環境問題の取り組みが、おそらく教会建築の動向にも反映している予想のもとで、ソウル付近の教会の調査を行った。教会建築とは、単に効率性を追求するだけでなく、思想性が反映する問題だからである(ティリッヒの教会建築の神学)。
 実は、この問題意識における調査は4年前に行ったことがあり(本ブログ、2010.11.16の記事を参照)、その際には、メソジストに属するチョンパ教会(청파교회、青坡教会)で調査を行った。それによって、太陽光パネルの設置などの取り組みが明らかになった。

 今回は、その後の展開についての調査となったが、太陽光パネルの設置はすでに教会でも一定程度進められつつあり、取り組みは次の段階に進みつつあることがわかった。
 それは、教会建築のリフォームに関わるものである。訪問したのは、St. John's Catholic Church(Korea)である。この教会のリフォームを担当した建築設計者(Ki hyok, Kim氏)から直接説明を受けることができた。この教会の聖堂は25年前に建てられた大規模なものであるが、10年前にリフォームする際に、環境への配慮として、使用エネルギーの節約が試みられた。具体的には、2階部分の礼拝堂から4階部分へと空気が抜ける通り道を確保することなどによって、ダクトとファンによる機械的循環に出来るだけ頼らずに空気の循環を可能にする設計がポイントになっている。これによってエネルギー消費が35%削減されたとのことである。

 大規模な教会建築は冷暖房や照明にかなりのエネルギーを消費する必要があり、韓国では、これまで建築上の制約(容積率)で、礼拝堂などの大きな空間を地下に確保する例が多く、それを維持するために多くのエネルギー(電力)を消費する傾向があった。こうした従来の建築が古くなりリフォームを必要とする段階になった際に、環境に配慮したリフォームを行ういうのが、今回の調査で確認できる新しい動向である。設計者は、このようなリフォーム(Passive Solar Building Design)を、今後、普及させていきたいと述べていた。

 空気の循環を意識した建築とは、日本でもしばしば実施されるものであり、寒暖の差が大きく多湿な東アジアにおいて重要な試みと思われる。それを推進するキリスト教思想の構築も合わせて問われている。
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 これまで本ブログは、2013年度より2015年度まで科学研究費の交付(代表者・芦名定道)を受けて行われた研究を中心に、キリスト教思想研究に関わる情報を発信してきました。しかし、2016年度からの新しい研究プロジェクトに関連した事柄は、主に別のブログで取り扱うことにし、本ブログでは、これ以外の記事について継続的に内容を更新します(新しい科研に関するものも、記事の継続性の観点から一部はこちらでも扱います)。
 なお、本ブログにもしばしばコメントが寄せられますが、多忙のため、原則として応答その他の取り扱いはいたしません。

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