ジジェク(2j)

10.十戒から人権へ
 いわゆるスピリチュアル・ブームとは? 現代のグノーシス主義、どこがキリスト教と違うのか。自己実現あるいは博愛との相違。

・「今日の〈ニューエイジ〉的な新-異教精神に対抗するには、ユダヤ-キリスト教的論理に執着するほうが理論的にも生産的に見えるし、政治的にも目覚ましいように思われる」(153)
 ジジェクの基本的なスタンス

・「〈十戒〉自体の書き換えする想像できる」、「まず消滅するのは、「厳然たる事実」ではなく、主体の心理的構造を形成する役割を担いながらそれによる象徴的な書き換えには永遠に抵抗しつづける、トラウマ的な邂逅という〈現実界〉である」(155)

・「ユダヤ-キリスト教の伝統は、〈ニューエイジ〉における、自己実現ないし自己充足に関するグノーシス主義的な問題連関と対立させてとらえるべきである」、「旧約聖書が、汝隣人を愛し敬えと命じるとき」「そのひとにとっての想像的な仲間」「ではなく、トラウマ的な〈もの〉としての隣人である。自分にとっての〈他者〉/〈隣人〉を自分の鏡像に、あるいは自分の自己実現のための道具に変えてしまう〈ニューエイジ〉的態度」「(ユング派心理学)」「とは対照的に、ユダヤ教が切り開く伝統においては、自分の〈隣人〉には異質でトラウマ的な核が永遠に残存しているのである」、「神秘的で精神的な自己実現という「内面の道」を通って〈神〉の次元にまっすぐ到達できるような近道は、存在しないのである」(156)
 これは、ジジェクのユダヤ教・キリスト教理解のポイント。波多野ならばイデアリスムと呼ぶものと他者との人格関係として説明する事態がここにある。しかし、波多野はトラウマとは言わない。畏怖すべき神聖性とは言うが。

・「人〈権〉とは結局、本質的には〈十戒〉を破る〈権利〉にすぎない」、「人〈権〉は直接的に〈十戒〉への背信を認めているわけではない」、「権力から隔離されてあるべき周縁的な「グレイゾーン」が人〈権〉によって開け放たれている、ということ」(157)
・「〈戒律〉を破らないような使用を邪魔しないでいるということが、〈権力〉にとっては構造的に不可能である、というなのだ」(158)

・「〈十戒〉と「隣人を愛せ」という命令との間の緊張関係」、「〈現実界〉の深淵のなかにいる〈他者〉としての隣人」、「〈善〉の領域を超えたきわめて非人間的なパートナーである〈他者〉としての隣人」、「徹底した「隣人への愛」から身を守る方法は、二種類ある」、「ひとつは、合理主義的/ヒューマニズム的「理解」」(159)「トラウマ的な思念を、社会的、イデオロギー的、心理的、云々といった条件から説明すること」、「もうひとつは」、「絶対的な〈他社性〉(たとえば、ホロコーストのような)として物神化することである」(160)

・「人権と〈現実的なもの〉としての「隣人に対する愛」が、〈十戒〉を超出するという同じ身振りの二つの側面であることは、いまや明らかである。究極の「人〈権〉の主体」とは、まさしく〈法〉の手を逃れた現実的な/不可能な〈もの Ding〉としての〈隣人〉である」、「「(人間の)権利」とは、〈法〉を超えた深淵とでもいうべき主体の、無限の権利である」、「ナルシシズムへの退行を阻止すると同時に〈法〉の枠の外部にとどまる〈もの〉としての〈他者〉への愛」「「隣人を愛せ」という命令に対する最終的な応答は、然り、である。想像的な鏡像関係と象徴的〈法〉は、〈現実界〉としての〈隣人〉から身を守る二つの形態なのだ」(160)
 これがジジェクにおいて考えるべきポイント。キリスト教はニューエイジとは違う仕方で「現実的なもの」にいかに向き合うのか。再度、愛とは?

・「人〈権〉は〈十戒〉と単に対立するだけでなく、その〈十戒〉から生み出された「内在的な逸脱」でもある」、「〈法〉と罪をめぐる」「聖パウロの有名な一節」(160)
・「あなたはわたしの顔の前では、他のなにものも〈神〉としてはならない」、「重要なのは仮象を保持することである」「ということを意味しているのか」、「キリスト教はここにおいて何をするのだろうか。それは、内在的な逸脱をも禁止すること」「だろうか」(161) さらに考察は続く。
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