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日本基督教学会と生命倫理(1)

 本日から、二日の日程で、日本基督教学会・第59回学術大会が、同志社大学を会場に始まった。日本宗教学会から一日をおいただけの強行日程との感もあるが、台風もすぎ、気持ちの良い晴天の中での学術大会である。日本基督教学会学術大会も、独特の雰囲気があり、個人発表についても紹介したいとっころであるが、そちらは明日にでもまとめてブログに記事を書くことにして、今日は、午後のプログラム、一日目の講演と二日目のシンポジウムについて雑感を述べたい。
 
 今回の学術大会は、講演とシンポジウムで生命倫理の問題を取り上げている点に特徴がある。

 講演:木村利人(恵泉女学園大学学長)「いのちのつながり──多文化共生とバイオエシックス」
 シンポジウム:「生命科学・倫理・キリスト教」
  井原康夫(同志社大学生命科学部)「認知症と倫理問題」
  葛原茂樹(鈴鹿医療科学大学保健衛生学部)「高齢者の終末期医療と生命倫理──日本の特殊性と欧米との違い」
  土井健司(関西学院大学神学部)「どこまでケアを続けることがキリスト教的だと言えるのか」
  小原克博(同志社大学神学部)「人格と尊厳をめぐる神学的・倫理的考察──古代世界の葛藤から現代の認知症まで」

 生命倫理に関わる二日間にわたるかなり本格的な取り組みであり、聞き手としてはきわめて興味深い内容である。本日の木村先生の講演からいくつか印象に残った点をコメントを交えて紹介したい。

・生命倫理はアメリカにおいて誕生し、その後世界に広まったものであるが、その成立にはキリスト教神学が大きく関与していたことはよく知られている。こうした経緯から、現在でも、生命倫理についてのいくつかの潮流の中にはキリスト教的問題意識と密接な関わりをもって展開してきたものがある(日本の、多くの大学における生命倫理の教育と研究において、こうした点がどれほど生きているかはやや疑問ではあるが)。講演者である木村先生は、こうしたキリスト教的関わりの中で生命倫理を考えている代表者であり、これまで生命倫理全般、医療行政などついて、貴重な提言を行い、大きな影響を及ぼしてきた人物である(わたくし個人にとっても、父芦名直道と木村先生との親しい交わりは父から聞いており、今日も懇親会で木村先生とそのことなどを話すことができた)。
・生命倫理は一方で現代的な普遍的な問題を扱いつつも、たとえば日本という特殊な文化的背景に応じた展開が求められる。欧米の議論のたんなる輸入では、欧米の生命倫理の問題パズルの解説に終わる。問題は、日本の医療の現場と思想とをいかに積極的に媒介するかであり、それが今回の学術大会の企画の意図と思われる。たとえば、医学教育をどのように良い方向へと転換するのか、宗教アレルギーが顕著な医学界にスピリチュアルな視点の重要性を理解してもらえるのか、これはきわめて重要な問いであり、キリスト教的な文脈を踏まえた生命倫理の課題はここにあると言えよう。
・生命倫理の基本原則として自己決定を挙げることができるが、日本においてはこの原則が定着する前にはやくもそれが後退しつつあるという現実が存在する(臓器移植法の改正を見よ)。日本の文脈でこの自己決定原則を生かすには(インフォームドコンセントをどのように生かすか、運用するか)、自己決定で主体である「自己」をどうとらえるかが問題になる。それは抽象的な近代的自己ではなく、木村先生の言い方を借りれば、relatedな自己(関係の中で生きる自己)となるであろう。

 考えるべき問題は多岐にわたる。明日のシンポジウムが楽しみである。
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Author:LogosOffice
 これまで本ブログは、2013年度より2015年度まで科学研究費の交付(代表者・芦名定道)を受けて行われた研究を中心に、キリスト教思想研究に関わる情報を発信してきました。しかし、内容的にこの科研のテーマ(「自然神学・環境・経済」)に限定されない諸問題を扱うことが多くなったため、本ブログのタイトルと趣旨を変更したいと考えました。新しいタイトルは「自然神学・宗教哲学・自然哲学」となります。もちろん、これまで同様にさまざまな問題を取り上げます。
 なお、本ブログにもしばしばコメントが寄せられますが、多忙のため、原則として応答その他の取り扱いはいたしません。

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