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ティリッヒ研究文献(37)

 第4回目の国際ティリッヒ・シンポジウムの報告として出版された研究論文集であるが、テーマは、自然神学と自然の神学というものである。1990年代頃と言えば、自然をめぐる理論と実践の問い直しが人文諸科学で行われ、どうようの問題意識が、神学・キリスト教思想においても取り上げられるようになった時期である。背景には、科学技術の進展がもたらした大きな変動、特に生命と環境をめぐる危機意識が存在している。キリスト教思想がこうした問題意識を共有するのは当然ではあるが、問題は、自然をめぐる伝統的な「自然神学」と、今求められている新たな学的営み(自然の神学?)との関わり(差異と類似)をどのように理解し、その上で新たな思索が展開できるということである。こうして「自然神学と自然の神学」となるわけであるが(同様の問題設定は、日本基督教学会の学術大会でも、ほぼ同じ時期に存在していたと記憶している)、問題は、神学あるいはキリスト教思想の側にこうした問いに正面から取り組むだけの学的蓄積が存在しないということである。20世紀のプロテスタント神学の中心テーマは、歴史・終末・言語とまとめられるが、これは、自然(生命、環境、性、身体)の問いを捨象してきわめて抽象的な仕方で展開していた。例外的なものは、イギリスの自然神学をめぐる思索の蓄積であるが、これが日本で紹介されのは最近であり、また必ずしも十分に認知されているわけではない。もし、自然の問題に本格的に取り組もうとするのならば、基礎的なレベルからの変革が必要であろう。人文諸科学が現代の科学技術の諸問題について行けないという傾向は、神学ではとくに著しい(もちろん、例外は常に存在はするが)。このブログの問題意識は、こうした思想状況を背景としている。

Gert Hummel (ed.)
Natural Theology versus Theology of Nature? Tillich's Thinking as Impetus fir a Discourse among Theologu, Philosophy and Natural Sciences. Proceeding of the IV. International Paul Tillich Symposium held in Ftrankfurt/Main 1992 / Natürliche Theologie versus Theologie der Natur? Tillichs Denken als Anstoss zum Gespräch zwischen Theologie, Philosophie und naturwissenschaft. Beiträge des IV. Internationalen Paul-Tillich-Symposions in Frankfurt/Main 1992.
Walter de Gruyter, 1993.

Vorwort

I. Probleme eines theologischen Zugangs und Umgangs mit der Natur
Von den Schwierigleiten und Grenzen einer Thelogie der Natur heute. Einige Bemerkungen im Blick auf Paul Tillich (Jean Claude Petit)
Protenstantisches Prinzip versus Natürlichen Theologie? Zu Paul Tillichs Problemen mit einer natürlichen Theologie (Werner Schüßler)
Tillich's Cosmology and Chaos Theory (Aevold Wettstein)
Nature and Sactament: An Analysis of Tillich's Theought form the Perspective of the Scientific Study of Religions (Terence Thomas)
Hat die Natur eine Subjektivität? (Zdenek Kucera)
Der ontologische Gottesbeweise als Voraussetzung einer Theologie der Natur? Descartes und Tillich (Günther Keil)
Das Gewebe. Oder: "Liebe, Macht, Gerechtigkeit"- Welchen Ort hat die Natur? (Yorick Spiegel)
The Potential for Dialohue with the Natural Sciences in Tillich's Method of Crrelation (Hans Schwarz)

II. Gestaltweisen eines theologischen Zugangs und Umgangs mit der Natur
Tillich, Hirsch and Barth: Three Different Paradigms of Theology ans its Relation to the Sciences (A. James Reimer)
Tillich's Approach to Theology and Natural Sciences: Issues of Truth and Verification (Mary Ann Stenger)
Word and Sacrament: The Religious Dialectic of Nature and Culture (Gabriel Vahanian)
Tillichs Verständnis von der "Macht des Seins" als natürliche Anthropologie (Katrin Gelder)
Tillichs Theologie der Natur als Theologie der Versöhnung von Geist und Natur (Hannelore Jahr)
Sein oder Werden? Paul Tillich und die Prozeßphilosophie (Erdmann Sturm)
Die Macht des Negativen. Paul Tillichs Ontologie und Theolgoie des Lebendigen (Joachim Ringleben)
Wie ist Gott göttlich und die Natur natürlich? Ansätze zu einer Naturtheologie im Sein und Nichtsein Gottes (Robert P. Scharlemann)
Theologie der Natur als "natürliche" Theologie? Interdisziplinäre und ökologische Überlegungen mit Tillichs Hilfe (Sigurd M. Daecke)
Natürliche Religion im Alltag Jugendlicher und Erwachsener? Gedanken im Anschluß an Paul Tillichs Begriff der ontologischen Angst (Reihold Mokrosch)

・ティリッヒは、例外的に、特に晩年に自然や科学の問いにかなり本格的な議論を展開しかけた思想家であり、自然神学と自然の神学という問題において参照するのにふさわしい思想家である。その意味で、ティリッヒ研究者がこの問題を共有するのは有益なことであろう。
・ティリッヒの多様な思想的側面をこの問題において集約することは可能であり、この研究論集におけるテーマの広がりは、このような視点から整理できるであろう。自然哲学(ティリッヒの思想形成の時期から始まって。特にヘーゲルとシェリング。生命論から次元論へ)、自然神学(宗教哲学としても)、諸学の体系・学問論における自然科学、神学・哲学・自然科学の相互連関・対話の問題、科学技術と環境(サクラメント論や都市論も含め)、人間存在の諸相(性、精神分析、芸術)、こうした諸問題が、ティリッヒでは複雑にしかも生き生きと交差している。
・では、こうしたティリッヒ思想の可能性をティリッヒ研究者は十分に継承しきれているだろうか。個々には、部分的には、様々な試みがあり、魅力的な取り組みはある。しかし、全般的は、まだまだ研究者の側の力不足は否めない(わたくしを含め)。ティリッヒの思索の理解ですらまだまだのところで、それを継承展開するといっても、結局はティリッヒのパラフレーズ(しかもへたな)に終わるだけである。
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Author:LogosOffice
 これまで本ブログは、2013年度より2015年度まで科学研究費の交付(代表者・芦名定道)を受けて行われた研究を中心に、キリスト教思想研究に関わる情報を発信してきました。しかし、内容的にこの科研のテーマ(「自然神学・環境・経済」)に限定されない諸問題を扱うことが多くなったため、本ブログのタイトルと趣旨を変更したいと考えました。新しいタイトルは「自然神学・宗教哲学・自然哲学」となります。もちろん、これまで同様にさまざまな問題を取り上げます。
 なお、本ブログにもしばしばコメントが寄せられますが、多忙のため、原則として応答その他の取り扱いはいたしません。

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