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ティリッヒ研究文献(41)

 今回の紹介の論集で、De Gruyter 社からの国際ティリッヒ・シンポジウムの論集刊行は終わり、次の第8回のシンポジウムの論集からは、Lit Verlagへ移ります。世紀の変わり目に応じてとも言えますが、ここには研究者(集団)と出版社との微妙な関わりが当然存在するでしょうし(これもおもしろい研究テーマかもしれませんが)、また、学会・研究会という共同研究の場に独特の動態(マンネリ化、停滞などを含む)も関与しているように思われます。学会となると簡単に終わりにはできませんが、その点研究会は小回りがきく。これはわたくしの持論です。実際、この20世紀末のあたりから、Lit Verlagの刊行物においては、ティリッヒ研究文献に関して、実験的な試みがなされており、研究者相互における新しい研究形態の模索を見て取ることが可能です。

Gert Hummel (ed.)
Being Versus Word in Paul Tillich's Theology? Proceeding of the VII. International Paul Tillich Symposium held in Ftrankfurt/Main 1998 / Sein versus Wort in Paul Tillichs Theologie? Beiträge des VII. Internationalen Paul-Tillich-Symposions in Frankfurt/Main 1998.
Walter de Gruyter, 1999.

Zur Einführung

Fundamentaltheologische Überlegungen
Wort und Sein (Oswald Bayer)
Sein oder Wort? Zu Oswald Bayers Tillich-Interpretation (Erdmann Sturm)
Tillichs letztes Blatt: Über Kant, Hamann und Oswald Bayers Kritik an der Tillichschen Ontotheologie (Gunther Wenz)
Tillichs Offenbarungsverständnis als Sein des Anstoßes und Prüfstein seiner Theologie: Eine Auseinandersetzung mit Oswald Bayers Tillich-Kritik (Hans-Christoph Askani)
Wort oder Sein? Eine fargwürdige Alternative (Jean-Claude Petit)
Was ist Sein, was ist Wort? (Yorick Spiegel)

Philosophische Annäherungen
Erkenntnis als Abstand und Nähe (Teije Brattinga)
Epistemological Incorrigibility in the Theology of Tillich (Charles Winquist)
Being and Symbol, Symbol and Word (Donald F. Dreisbach)
Erfahrung und Sprache: Die Mittelerfunktion des Wortes (Anjuta Horstmann-Schneider)
Sätze über Gott und spekulativer Satz (Joachim Ringleben)
Metaphysics and Communication: The Logos-Ontology of Paul Tillich and Habermas' Theory of Communicative Practice (A. James Reimer)
Can the God of the Philosophers and the God of Abraham be Reconciled? On God the Almighty (Wessel Stoker)
Sein non adversus Wort. Überlegungen zu 'Biblische Religion und die Frage nach dem Sein' (Aad S. L.Woudenberg)

Prüfende Anwendungen
Revising Tillich's Model of Reality by Adding Buber's I-Thou (Robison B. James)
Das Personalpronomen Gottes (Bertram Schmitz)
The "Caesarea Philippi Story" in Systematic Theology: Identiy and Difference in Personal Encounter(James Grit)
Über die Grenze von Sein und Wort: Tillichs "Neues Sein" und die paulinische Denkart (M. De Jong)
Is It All Words? (Hans Schwarz)
Being and Word in Tillich's Doctrine of Spiritual Presence: Issues of Subjectivity and Relationality (Mary Ann Stenger)
Wort und Sein in der Begegnung von Paul Tillich und Martin Buber (Anne-Marie Reijnen)
Religious Consciousness Versus Word of God: The Answers of Troelsch, Barth and Tillich (Jean Richard)
Paul Tillichs Gewissensverständnis - ein Beispiel für eine ausgewogene Seins- und Wortorientierung? (Reinhold Mokrosch)
The Holy and the Secular Versus the Sacred and the Profane (Gabriel Vahanian)
Führt die Identitätsprämisse zur Bedeutungslosigkeit des Wortes bei Tillich? (Wolf Reinhard Wrege)

 今回紹介の論集の統一テーマ「存在と言葉」は、ティリッヒとの関連で様々な視点からのテーマ設定が思い浮かべられる(ともかく、あまりにも広く漠然としている)。たとえば、ティリッヒとだれ・なにとを比較するのかという仕方でも、様々であろう。第一部がバイヤーのティリッヒ批判を取り上げていることからいえば、ルター派の言葉の神学と、ティリッヒの存在論的神学という枠が見えるし(バルトとティリッヒという定番の比較論も同様)、また収録論文のいくつかが取り上げているように、「言葉とサクラメント」とすれば、ティリッヒとカトリック神学という設定も可能である。さらには、言葉も存在も、現代思想のキイワードであることから、議論は無数に存在する。
 ともかくも、この数十年の間、この種のシンポジウムでは、類似のテーマが取り上げられ続けており、無駄な反復とさえ見えてくる(シンポジウムのテーマ設定などは、はじめにシンポジウムありきにしたがった、場当たり的なことが少なくない。主催者が苦労していることは同情に値するが)。しかし、これも見方を変えれば別の面も指摘できる。この国際ティリッヒ・シンポジウムは、論集の執筆者の顔ぶれからもわかるように、博士論文執筆まえのあるいは執筆後の若手から、長年ティリッヒ研究を継続しているベテラン・大家まで、多岐にわたっているが、継続的にシンポジウムに関わっている研究者が多く存在する(テーマ的にかなり一貫している研究者も少なくない)。博士論文前後、特にその後の時期は、研究テーマの設定に悩むことが研究者が少なくないのではないだろうか。わたくしも、ティリッヒ研究で博士論文を完成したあとは、できるだけティリッヒとは別のテーマへの研究の拡大を試みた。これには一理あるとしても、しかし、今になれば、別の研究に手を広げつつも、一方で一つのテーマへの継続的な取り組みにも大いに意味があることがわかる。博士論文程度の研究で「一丁上がり」のテーマは、そもそも博士論文のテーマとしても適切だったのか。研究指導をする側になると、博士論文の試問などで指摘され、本人も自覚している(はずの)問題を集中的にやり直した上で、まずはそれを著書として刊行し、その後も、何らかの仕方で研究を継続して、10年後くらいに、再度研究成果を見せてもらいたい、という気がしてくる。博士論文は研究者としてのスタートであり、評価すべきは、その後いかなる研究成果を示しうるかという点にこそある。もちろん、現在の日本における若手研究者を取り巻く研究状況の厳しさを考えれば、このような要求はあまりにも実態からかけ離れた過大なものである、との意見があり得ることもわかるが。

 ともかく、次回からのティリッヒ研究文献紹介は、Lit Verlag社刊行の論集へと移る。
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Author:LogosOffice
 これまで本ブログは、2013年度より2015年度まで科学研究費の交付(代表者・芦名定道)を受けて行われた研究を中心に、キリスト教思想研究に関わる情報を発信してきました。しかし、内容的にこの科研のテーマ(「自然神学・環境・経済」)に限定されない諸問題を扱うことが多くなったため、本ブログのタイトルと趣旨を変更したいと考えました。新しいタイトルは「自然神学・宗教哲学・自然哲学」となります。もちろん、これまで同様にさまざまな問題を取り上げます。
 なお、本ブログにもしばしばコメントが寄せられますが、多忙のため、原則として応答その他の取り扱いはいたしません。

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