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ティリッヒ研究文献(42)

今回から、Lit Verlag社刊行の論文集へ移るが、その前に、Lit Verlagからの刊行物で、興味深いものをここで、指摘しておきたい。先の記事でも述べたように、20世紀から21世紀の転換の時期に、ドイツのティリッヒ研究においては、国際シンポジウム報告論集の出版社が変わっただけでなく、新しい共同研究構築の試みがなされている。

 それは、「Tillich Journal」の刊行であり、わたくしの手元にあるものとしては、1997年から1999年までに第一号から第三号までが出版されていることが確認できる。創刊号の序(Vorwort, S.5)で、この雑誌の目的などが簡単に説明されているが、それは、雑誌の副題の「interpretation・vergleichen・kritisieren・weiterentwickeln」が示すように、ティリッヒの思想をそのテキストの解釈し、ほかの思想家の諸テキストとの比較する、そしてティリッヒの批判とそれに基づくさらなる展開を試みることとまとめられる。

 編集者や執筆者の顔ぶれから、この雑誌は、若手のティリッヒ研究者(博士論文執筆の前後の時期の研究者)が新た
な研究の展開を行い、自分たちの研究の場を確保し積極的に発信することを目指したものと思われる。

 メインの主論文を巻頭に置き、ティリッヒのテキストについての諸情報(未公刊テキストの新しい紹介など)、執筆者の研究紹介(研究ノートとしてはややコンパクト)、短いエッセイ、「仕事場」「運指法練習」「継続中の事柄」と題された短文(レポートや試験準備といった様々な形での諸研究を含む)など、多岐にわたる内容が企画されている。それぞれの区分相互の区別や関係などは、やや不明な感もあるが、全体的に意欲を感じる構成である。こうした若手研究者の積極的な活動が企画され、それを形にする体制が存在すること、これが、ドイツのティリッヒ研究の基盤をなしているのではないだろうか。

 こうした斬新な試みは、現在は、やはりLit Verlag社から、「Tillich Preview」というシリーズに継承されているようにも見うけられる(このシリーズは、まだ手にしていないので、はっきりしたことはわからない)。編集に関して、Karin Grau, Peter Haigis, Ilona Nord im Auftrag der Deutschen Paul Tillich-Gesellschaft (Hg.) とあるが、彼らは、Tillich Journalの関係者でもあった。この新企画は、2007年からスタートし、2010年までに、3号が刊行されている(3号を超えて継続できるかがポイントかもしれない)。

 以上のようなLit Verlag社に関連したティリッヒ研究の展開は、21世紀に入り多くの研究成果を生み出し、現在の世界的なティリッヒ研究をリードしているのである。次回からは、この動向の一端を紹介することにしたい。
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Author:LogosOffice
 これまで本ブログは、2013年度より2015年度まで科学研究費の交付(代表者・芦名定道)を受けて行われた研究を中心に、キリスト教思想研究に関わる情報を発信してきました。しかし、内容的にこの科研のテーマ(「自然神学・環境・経済」)に限定されない諸問題を扱うことが多くなったため、本ブログのタイトルと趣旨を変更したいと考えました。新しいタイトルは「自然神学・宗教哲学・自然哲学」となります。もちろん、これまで同様にさまざまな問題を取り上げます。
 なお、本ブログにもしばしばコメントが寄せられますが、多忙のため、原則として応答その他の取り扱いはいたしません。

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