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資本主義をどう見るか

 現代世界の最大の問題は、資本主義の行方をめぐるものであることは、言うまでもない。環境問題が、経済との密接な関わりにおいてはじめて分析可能になることは、これまで、このブログでも指摘してきたことである。しかし、と同時に、この最大の問題が、必ずしも十分に解明されていないというのも、現代の状況である(古典的な問題でもあるが)。

 今回紹介する文献は、資本の謎をタイトルに掲げるものであり(果たして謎は解けたのか)、話題のものでもある。著者デヴィッド・ハーヴェイは、地理学、地政学から経済学へと思索を展開した人物であり(地理学の経済的視点からの革新という言い方もあるが)、現代のマルクス主義の再構築の担い手の一人と言われる。すでにいくつかの著作が邦訳されている。原発やTPPという問題を抱えた日本にとっても、共有すべき問題は少なくないだろう。

デヴィッド・ハーヴェイ
資本の〈謎〉──世界金融恐慌と21世紀資本主義
作品社、2012年。

序文 (デヴィッド・ハーヴェイ)

第1章 なぜ金融恐慌は起こったのか!
 階級的力関係の劇的変化、有効需要と金融化、金融投機の異常な発達、経済成長と過剰資本、新自由主義的転換の政治経済学

第2章 どのように資本は集められるのか?
 資本流通とその潜在的諸制限、本源的蓄積と貨幣権力の集積、信用の発達と「国家─金融結合体」

第3章 どのように資本は生産をしているのか?
 労働供給と過剰人口、生産手段の調達と部門間の不比例性、自然の希少性と自然的限界、建造環境とインフラ投資、技術と組織形態のイノベーション、労働過程の統制

第4章 どのように資本は市場を通るのか?
 種々の恐慌理論

第5章 資本主義発展の共進化
 資本主義的進化の七つの活動領域、資本主義の共進化の考察枠組み、資本主義の断続的発展と変革の可能性

第6章 資本の流れの地理学
 資本主義の地理的環境、三つの地理的空間と共進化、第一の原則──地理的限界の克服と空間的支配、第二の原則──地理的集中と地理的差異、空間的立地をめぐる競争と戦略、都市空間の形成と過剰資本の吸収、グローバルな都市空間の形成と恐慌、「都市の地理」と文化、政治、暴力、地代と資本蓄積

第7章 地理的不均等発展の政治経済学
 土地に対する創造的破壊、資本主義における時空間編成の矛盾、場所の想像と領土的組織、資本主義的領土化の諸特徴、さまざまな領土的単位とその独自の役割、戦争と領土間競争、権力の領土的論理と資本主義的論理、地政学と地理的ヘゲモニー、地理的不均等発展の政治経済学

第8章 何をなすべきか? 誰がなすべきか?
 古いオルタナティブから新しいオルタナティブへ、共─革命的理論の構築に向けて、精神的諸観念の変革、反資本主義運動と批判的知識人の役割、略奪された人々の二大カテゴリー、同盟の構築とその諸困難、変革主体の諸潮流と組織形態、新しい反資本主義運動に向けて

[ペーパーバック版あとがき]
恐慌の反復か、資本主義からの転換か
 金融恐慌の地理的不均等発展、新自由主義の不平等のさらなる進化、米国と中国──ヘゲモニー・シフトの徴候、複利的成長の継続か反資本主義的転換か

[日本語版解説]
「資本の謎」の謎解きのために(伊藤誠)
  本書の主題、ハーヴェイの恐慌論、日本経済との関わり、何をなすべきか?

訳者解題(森田成也)

付録1 主要な債務危機の緊急支援(一九七三~二〇一〇年)
付録2 アメリカにおける金融イノベーションとデリバティブ支場の拡大(一九七〇~二〇〇九年)

典拠資料と参考文献、役立つサイト
著者紹介、訳者・解説者紹介

 大部な本ではあるが、解説、付録と親切な作りとなっている。
 現代のキリスト教思想でも、環境論との関わりから、従来の歴史と時間のみをもっぱら基礎にした理論の枠組みから、地理と空間という枠組みの再考の提案がなされている(モルトマンを見よ)。近代プロテスタント神学は、近代思想と、歴史や時間の枠組みを共有しつつ展開してきた。神学的な環境論の十全な仕方での構築は、こうした枠組みの転換を必要とするのかもしれない。
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プロフィール

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Author:LogosOffice
 これまで本ブログは、2013年度より2015年度まで科学研究費の交付(代表者・芦名定道)を受けて行われた研究を中心に、キリスト教思想研究に関わる情報を発信してきました。しかし、内容的にこの科研のテーマ(「自然神学・環境・経済」)に限定されない諸問題を扱うことが多くなったため、本ブログのタイトルと趣旨を変更したいと考えました。新しいタイトルは「自然神学・宗教哲学・自然哲学」となります。もちろん、これまで同様にさまざまな問題を取り上げます。
 なお、本ブログにもしばしばコメントが寄せられますが、多忙のため、原則として応答その他の取り扱いはいたしません。

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