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森田雄三郎(2)

 今回は、森田先生の『キリスト教の近代性』創文社、1972年、を紹介したい。
 本書は、森田先生の主著であり、きわめて水準の高い学術であり、19世紀から20世紀のプロテスタント思想史を、歴史性・個体性という視点から一貫して論じた点で、画期的なものである。もちろん、出版から40年が経過し、個々の論点については、その後の専門研究によって乗り越えられた面もあるが(例えば、シュライアマハーやトレルチ研究が、1980年代以降大きな展開と発展を示したことを考えれば、おわかりいただけるであろう)、どの章も、類書を凌ぐものとして、現在もその意義を失っていない。特に、19世紀のプロテスタント神学研究の部分は、日本語の文献としてはまず最初に参照すべきものと言える。
 目次は以下の通りである。

第一章 キリスト教の本質の問い
第二章 神学的領域における歴史的個体性の発見(シュライエルマッハー)
第三章 歴史的運動としてのキリスト教(F・C・バウルの神学的歴史理解)
第四章 神学的歴史理解における人格性の意義(A・リッチュルの価値判断)
第五章 宗教史としての神学の意味、キリスト教的エトスの歴史性(トレルチの意義)
第六章 神の言の弁証法としての歴史性(弁証法神学の出発点と方向づけ)
第七章 「信仰の類比」の救済史(バルト神学への反省)
第八章 神学の実存論的歴史性(ブルトマン神学における歴史理解)
第九章 キリスト教の弁証の歴史性(実存論神学と「伝道の神学」と「弁証神学」)
第一〇章 結語
あとがき
索引

 以下、いくつかのポイントを指摘しておきたい。

・第一章の論述から判断して、森田先生の立場は、トレルチときわめて接近しているように思われる。それは、弁証法神学、特にバルトへの批判的な議論として展開しており、日本におけるバルト系譜の神学思想と一線を画する姿勢が明瞭である。

・19世紀の自由主義神学として包括される神学的展開、シュライアマハーから、バウル、リッチュル、トレルチへという系譜については、きわめて説得的な議論が展開されている。歴史、人格、価値、弁証法、二焦点・・・。こうした19世紀の思想史の理解が欠けているところでは、現代神学、現代キリスト教思想と言っても、議論は浅い、表面的なものになる(流行を後追いするだけならばそれでも言いわけではあるが)。

・わたくしの専門に関わるティリッヒについては、本書では第九章で扱われているが、そこで提起されたティリッヒへの批判的問いは、その後のティリッヒ研究では避けて通れない問いのはずである。『組織神学』の第一・二巻と第三巻の構造レベルでの整合性の問題、そして第三巻における本来は解決を目指されるべき「われとわれわれ」(個と共同性)との関連の精密な分析の問題である(この問題の定式化は、わたくしのものである)。これらの問いへの納得のゆく解答は未だ提出されていないというのが、わたくしの私見である。こうした問いを知らぬかのように(あるいは実際に知らずに)、ティリッヒ神学を論じるというのは、こまった状況である。思想研究の世界でも、科学研究の世界でも、問いが答えられることなく、その問いがなかったかのように次の問題状況に移行するということはしばしば生じる事態ではあるが、それが学問の進歩であるかは疑問が残るところである(新しい問いを探すことは、研究者にとって重要なテーマではあるが)。

・第一〇章の結語では、モルトマンとパネンベルクが取り上げられており、本書の思索が、『現代神学はどこへ行くか』に所収の諸論考へと発展することは、ここに読み取ることができる。
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Author:LogosOffice
 これまで本ブログは、2013年度より2015年度まで科学研究費の交付(代表者・芦名定道)を受けて行われた研究を中心に、キリスト教思想研究に関わる情報を発信してきました。しかし、内容的にこの科研のテーマ(「自然神学・環境・経済」)に限定されない諸問題を扱うことが多くなったため、本ブログのタイトルと趣旨を変更したいと考えました。新しいタイトルは「自然神学・宗教哲学・自然哲学」となります。もちろん、これまで同様にさまざまな問題を取り上げます。
 なお、本ブログにもしばしばコメントが寄せられますが、多忙のため、原則として応答その他の取り扱いはいたしません。

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