FC2ブログ

佐藤吉昭

 佐藤吉昭先生(1927-2010)は、わたくしが学生時代にお世話になった恩師の一人であり、その点は先に紹介の森田雄三郎先生と同様である。しかし、佐藤先生の場合は、水垣先生がドイツ(テュービンゲン大学)に在外研究で一年京都大学を留守にされた際に(この当時は、キリスト教学研究室は学生が最も少人数の時期であり、大学院生がゼロで、学部生・聴講生のみの状況であり、わたくしのほか、学部生では、現在明治学院大学に勤務の久山氏などの顔が思い出される程度である)、キリスト教学講義(概論、今は無い文学部旧本館で講義が行われた)を担当されるなど、特にキリスト教学研究室との関わり、教父コロキウムとの関わりでお世話になった。

 先生のご専門はラテン教父であり、京都大学の特殊講義では、テルトゥリアヌス、キプリアヌスについての講義、古代キリスト教思想研究の方法論などについての講義が記憶に残っている。そのほかに、授業では、先生がミュンヘン大学で助手をされていたときのエピソードや、日本基督教学会学術大会の様子などについてもしばしば話題になった。きわめて明晰で説得的な授業であり、専門外のわたくしも、多くの有益な事柄を学ぶことができた(その一部は身についているだろうか)。学会や研究会などでの先生の的確な論評と指摘は、まさに「スマート」であり、先生が質問されると場が整えられた。なかなか先生のようには行かないのが多くの現実である。

 特に、今回紹介したいのは、先生の研究の集大成であり、京都大学で博士の学位を取得された研究である。内容はキリスト教における殉教をテーマにしたものであるが、キリスト教古代の殉教論という先生のご専門はもちろん、第一部に日本キリシタンの殉教を扱った点に特徴がある。わたくしは、日本キリスト教思想史研究について、それがキリスト教思想史全体にいかに位置づけられ解釈されるべきかが重要であると考えているが、佐藤先生の殉教研究は、キリシタンを西洋キリスト教全体の歴史的文脈に有機的に位置づけるものであり、日本キリスト教思想研究にとって、重要な問題提起であると思われる。目次は以下の通りである。

佐藤吉昭
『キリスト教における殉教研究』
創文社、2004年。

序論

第I部 殉教とは何か
第一章 通俗概念の混乱とのの使用範囲の広がり
第二章 日本キリシタンにおける殉教問題
  一 日本キリシタン殉教録の文学類型
  二 キリシタン研究と殉教
  三 日本キリシタンから古代殉教教会への遡上

第II部 殉教録・殉教社行伝の成立と殉教者崇拝
第一章 古代教会における殉教者崇拝文書の成立とその宗教的役割
第二章 古代教会典礼の視点から見た殉教者崇拝

第III部 古代教会に出現した迫害・殉教の研究とその史観
第一章 古代キリスト教殉教研究のあらたな検討課題
第二章 倫理行為としての殉教史観
第三章 古代キリスト教社会における女性殉教者と教会指導者たち
第四章 古代教会における殉教希求の分析

第IV部 古代教会における「棄教論」の再考察
第一章 キプリアヌスの『棄教論』に関する歴史的課題
第二章 『棄教論』の執筆動機
第三章 『棄教論』の内容分析

第V部 アンティオキアのイグナティオスにおける殉教思想
第一章 イグナティオスの殉教
第二章 イグナティオスにおける殉教思想の分析とその検証
第三章 イグナティオスの殉教思想研究における史的展開と課題分析

付録
原典訳 一 キプリアヌス『棄教論(棄教者について)』
原典訳 二 テルトリアヌス『殉教者たちへ』

あとがき
索引

 こうした優れた先行研究の土台の上に、現在のキリスト教研究が可能になっていることを銘記したい。なお、佐藤先生については、『基督教学研究』(京都大学基督教学会)の最新号(31号、2011年12月)に水垣渉先生の「佐藤吉昭氏の逝去を悼む」の追悼文(189-190頁)が掲載され、佐藤先生のキリスト教研究の特徴が説明されている。
スポンサーサイト



プロフィール

LogosOffice

Author:LogosOffice
 これまで本ブログは、2013年度より2015年度まで科学研究費の交付(代表者・芦名定道)を受けて行われた研究を中心に、キリスト教思想研究に関わる情報を発信してきました。しかし、内容的にこの科研のテーマ(「自然神学・環境・経済」)に限定されない諸問題を扱うことが多くなったため、本ブログのタイトルと趣旨を変更したいと考えました。新しいタイトルは「自然神学・宗教哲学・自然哲学」となります。もちろん、これまで同様にさまざまな問題を取り上げます。
 なお、本ブログにもしばしばコメントが寄せられますが、多忙のため、原則として応答その他の取り扱いはいたしません。

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
Translation(自動翻訳)
FC2カウンター
カレンダー
04 | 2012/05 | 06
- - 1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31 - -
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR