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日本キリスト教史研究の方法論的視点

 日本キリスト教思想は、本ブログとも関連する分野の一つであるが、私見では、いまだ学的基礎、特に方法論的には、形成途上の面が少なくない(研究的な蓄積は量的にすでに十分であるが)。こうした点で、注目すべき研究成果を次々と刊行し、研究をリードしてきたのが、土肥昭夫(1927-2008年)である。わたくしも、土肥先生のお顔を拝見したこと、同じ集まりの席に同席したことはあるが(わたくしは後ろの隅の方に、先生は中央に。学生時代の30年ほども前のことである)、個人的にお話を伺う機会はなかった。したがって、わたくしが土肥先生から学んだのは、書物を通してである。

 今回、紹介するのは、土肥先生の日本キリスト教研究の中心テーマであった、「天皇制とキリスト教」に関する諸論考から奥様(土肥淳子氏)が編集された論文集である。土肥キリスト教研究のライフワークの一端がここにある。以前に本ブログで詳細に紹介した、宮田光雄『国家と宗教』(岩波書店)の第二部と合わせて読まれてはいかがであろうか。

土肥昭夫
『天皇とキリスト教──近現代天皇制とキリスト教の教会史的考察』
新教出版社、2012年。

I 天皇制とキリスト教
第一章 天皇制をうつもの
  1 今日の天皇制
  2 キリスト教の二つの声明
  3 天皇制と民衆
  4 作為としての天皇制イデオロギー
  5 家族国家論の幻想性
  6 結びに

第二章 キリスト教の歴史的検討(その一)
  1 天皇制イデオロギーとキリスト教
  2 天皇制形成期のキリスト教
  3 天皇制確立期のキリスト教
  4 結びに

第三章 キリスト教の歴史的検討(その二)
  1 柏木義円と木下尚江
  2 天皇制安定期のキリスト教
  3 天皇制ファシズム期のキリスト教
  4 おわりに

II 近代日本のキリスト教メディアにみる天皇制
第四章 『東京毎週新報』とその系列誌──一八八三年~一九〇九年
  1 帝国憲法発布以前
  2 帝国憲法発布、帝国議会開設
  3 社会のキリスト教排撃への対応
  4 キリスト教の天皇・天皇制意識(1)(一八八九~九五)
  5 両大戦下における天皇・天皇制意識
  6 天皇制国家のキリスト教政策への対応
  7 キリスト教の天皇・天皇制意識(2)(一八九六~一九〇五)
第五章 『教団時報』『日本基督教新報』など
  1 教団組織の動向
  2 教団の諸活動
  3 論説・論文

III 近代天皇制下のキリスト教指導者
第六章 小崎弘道の天皇制論
  はじめに
  1 草創期の見解
  2 社会の批難に対する弁明
  3 天皇制国家の教学
  おわりに

第七章 植村正久の天皇制論
  はじめに
  1 人間像と思想の特質
  2 天皇制確立期における見解
  3 伝道者・牧者として
  おわりに

IV 近代天皇制下の人権・学校・天皇代替わり
第八章 天皇制形成期のキリスト教──一人権問題との関連において
  はじめに
  1 神道国教化政策
  2 カトリック信徒への弾圧
  3 プロテスタント宣教師たちの対応
  4 政府のキリスト教政策の変容
  5 日本人キリスト者の国体観
  おわりに

第九章 天皇制確立期のキリスト教系私学
  はじめに
  1 天皇制国家の教育政策
  2 キリスト教系私学の動向とその尋常中学校設置
  3 同志社の綱領削除とその復活
  4 文部省訓令第一二号(一八九九年)とキリスト教系私学
  おわりに

第一〇章 近代日本における天皇即位とキリスト教
  はじめに
  1 明治大礼について
  2 キリスト教の見解
  3 大正大礼について
  4 キリスト教の対応(1)
  5 昭和大礼について
  6 キリスト教の対応(2)
  おわりに

V 近現代天皇制を考える
第一一章 近代天皇制とキリスト教(一)──一帝国憲法発布より日清戦争まで
  1 はじめに
  2 帝国憲法発布、帝国議会開設
     i 帝国憲法発布への対応
     ii 君権神授説をめぐって
    iii 帝国議会開設への対応

  3 内村鑑三不敬事件
     i 内村鑑三の言動
     ii キリスト教指導者たちの論評
  4 「教育と宗教の衝突」論争
     i 井上哲次郎のキリスト教攻撃
     ii キリスト教指導者たちの弁明
  5 教会・キリスト教系学校の天皇・天皇制意識(1)
     i 教会・キリスト教系学校への問いかけ
     ii 教会・キリスト教系学校の奉祝活動とその論理
  6 教会・キリスト教系学校の天皇・天皇制意識(2)
     i 熊本英学校教師解雇事件
     ii 山鹿小学校児童退校事件
    iii 田村直臣『日本の花嫁』事件
  7 日清戦争・天皇制・キリスト教
     i キリスト教の戦時協力
     ii 天佑・天職論
  8 おわりに

第一二章 近代天皇制のキリスト教(二)──一日比谷焼打事件より虎の門事件まで
  1 世論のキリスト教排撃への対応
     i 日比谷焼打事件
     ii 「国体とキリスト教」論争
    iii 大逆事件
  2 国家の宗教利用政策への対応
     i 三教会同
     ii 政府の宗教家招待
  3 天皇制の諸行事に関する見解
     i 天皇の代替わり
     ii 天皇家の慶弔事
    iii 国家の祝祭日、新嘗祭
  4 天皇制下のキリスト教学校
     i 金城女学校
     ii 同志社諸学校
  5 天皇制関連の諸問題をめぐる対応
     i デモクラシーの問題
     ii 虎の門事件
  6 おわりに

第一三章 天皇制狂奔期を生きたキリスト教──一日本基督教連盟を中心として
  1 キリスト教の大勢
  2 十五年戦争より
  3 連盟の諸活動より
  4 天皇制をめぐる諸事件より
  5 おわりに

第一四章 天皇制下の日本基督教団
  1 教団の設立より
  2 教団組織の確立と統合より
  3 教団の諸活動より
  4 八・一五前後の天皇・天皇制と教団の対応
  5 おわりに

VI 象徴天皇制とキリスト教
第一五章 戦後の天皇制と教会
  1 戦後の天皇制
  2 戦後の教会
  3 実践的課題

第一六章 戦後天皇制とわたしたち

あとがき
人名索引

 淳子夫人のあとがきによれば、「土肥が元気で存命しておれば戦後の天皇制についてしっかりとした論文を書き、また今まで書いた論文に関しても加筆修正を施してそのご期待応えていただろう。残念ながらそれは望むことができない」(522)。確かに本論文集は、「戦後天皇制とキリスト教」に関して未完に終わった。だれがその後を続けるのであろうか。
        
     

 
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プロフィール

LogosOffice

Author:LogosOffice
 これまで本ブログは、2013年度より2015年度まで科学研究費の交付(代表者・芦名定道)を受けて行われた研究を中心に、キリスト教思想研究に関わる情報を発信してきました。しかし、内容的にこの科研のテーマ(「自然神学・環境・経済」)に限定されない諸問題を扱うことが多くなったため、本ブログのタイトルと趣旨を変更したいと考えました。新しいタイトルは「自然神学・宗教哲学・自然哲学」となります。もちろん、これまで同様にさまざまな問題を取り上げます。
 なお、本ブログにもしばしばコメントが寄せられますが、多忙のため、原則として応答その他の取り扱いはいたしません。

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