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野呂芳男(7)

 今回はいよいよ野呂先生の最初のまとまった著作であり、その後の思索の原点と言える『実存論的神学』(創文社、1964年)を取り上げます。

 この著作は実存論的神学として展開された野呂神学の出発点であると同時に、その後の思索の多くは凝縮された形でここに見出すことができる(「論述の展開の方法は、らせん状の進展である」(1)とは、この著書だけでなく、野呂神学自体のスタイルと言うべきものであろう)。「実存論的神学」とは、「聖書の実存論的解釈を土台にした場合、どういう形態の組織神学が成り立つものであるか」(1)という問いをめぐる神学的思索であり、論究される神学思想は広範に及んでいる。なお、1970年3月23日に、『実存論的神学』について、京都大学から文学博士の学位が授与されている。審査は、武藤一雄、武内義範、野田又夫の三教授である。京都大学に学位論文として提出されたのは、浅野順一の勧めもあったとのことであるが、この経緯を考えれば、野呂神学を本ブログで取り上げるのは、決して奇異なことではないとも言える(日本のキリスト教界また学問の世界は、いがいに狭い)。

野呂芳男
『実存論的神学』
創文社、1964年。

まえがき

第一章 現代状況と福音の世界
第二章 話し合いの問題と神学的認識論
第三章 啓示と実存
第四章 ポール・ティリックの存在論
第五章 神学における主観─客観の構造の超克
第六章 キリストとしてのイエスの出来事
第七章 時と永遠
第八章 死後の命

あとがき
索引(事項・人名)

・本書は、バルトあるいはティリッヒ以降のキリスト教神学の状況と可能性を理解する上で参照すべき「状況」の証言となっている。その点で、以前に本ブログで紹介した森田雄三郎と野呂芳男は多くを共有していると思われる。思想史的問題設定の視点を共有しつつも、両者の違いは、森田がより宗教哲学的あり、野呂がより組織神学的である、とまとめることが可能かもしれない。宗教哲学にせよ、組織神学にせよ、森田あるいは野呂の次の世代とも言える現代においては、いっそうその存立が困難になってきており(この自覚が必ずしも共有されていないということ、つまり宗教哲学や組織神学がいわば自明であると思われているところに、問題の深刻さがある)、「キリスト教研究の軌跡」はその土台を問い直すという意図をもっている。

・第四章のティリッヒ論は、1960年代から70年代の典型的なティリッヒ研究であり、その点で限界のある内容である。後期ティリッヒの『組織神学』の第一巻第二巻で、ティリッヒの神学・宗教哲学を抽出し、論究するというスタイルは、その後のティリッヒ研究を経た上で、再度やり直される必要があるが、そのような仕方での本格的なティリッヒ研究はほとんど存在しない。ここで野呂が批判的に論究するティリッヒ理解において代表されるティリッヒ論は、その再考が求められている。

・「時と永遠」「死後の命」に関して、波多野精一への言及が皆無な点は、どのように理解すべきであろうか。本書では、未来と将来との区別という点で、一カ所だけであるが、波多野への言及がなされており(158)、野呂が波多野を読んでいないとは考えられない(また、野呂の先生の一人はあのマイケルソンである!)。日本のキリスト教思想、特に神学における波多野宗教哲学の無視(?)は、何を意味しているのであろうか。日本のキリスト教思想が欧米神学の紹介に多大な努力を傾けてきたことだけが理由であろうか(日本のキリスト教思想研究では、日本人による優れた研究をまったく参照しない例が少なくない。欧米=最先端ということであろう)。あるいは、本格的な哲学的思索との折衝を、日本の神学が回避してきたということであろうか。日本のキリスト教思想史を論じる上で、これは重要なポイントかもしれない。
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Author:LogosOffice
 これまで本ブログは、2013年度より2015年度まで科学研究費の交付(代表者・芦名定道)を受けて行われた研究を中心に、キリスト教思想研究に関わる情報を発信してきました。しかし、内容的にこの科研のテーマ(「自然神学・環境・経済」)に限定されない諸問題を扱うことが多くなったため、本ブログのタイトルと趣旨を変更したいと考えました。新しいタイトルは「自然神学・宗教哲学・自然哲学」となります。もちろん、これまで同様にさまざまな問題を取り上げます。
 なお、本ブログにもしばしばコメントが寄せられますが、多忙のため、原則として応答その他の取り扱いはいたしません。

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