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佐藤敏夫(3)

 2000年前後(やや幅をとって)、日本キリスト教研究においては、植村正久(1858-1925)に関する研究書がかなりまとまって出版された。雨宮栄一の評伝三部作『若き植村正久』(2007)、『戦う植村正久』(2008)、『牧師植村正久』(2009、いずれも新教出版社)は、その代表ではあるが、この雨宮の著書だけではない(わたくしも、この時期に植村研究の論文をいつくか発表した)。次に紹介する佐藤の著作は、その一冊と言える。没後75年が経過し、植村についても本格的な研究を行うに相応しい状況となったと言うべきかもしれない。なお、下記の著書の「おわりに」において、佐藤は、この書が『植村正久とその弟子たち』という企画の最初の一冊(第一巻)であり、続いて、高倉徳太郎、柏井園、金井為一郎、逢坂元吉郎、小野村林蔵について書くという構想を示しているが、残念ながら、この構想は実現されなかった。

佐藤敏夫
『植村正久』
新教出版社、1999年。

第一章 植村は長老主義者であったか
  一 ロンドン宣教会と東洋伝道の方針
  二 福音同盟会と日本の教会
  三 日本基督教会とは

第二章 植村は信条主義者であったか
  一 プロテスタンティズムと信条
  二 植村と信条

第三章 植村はカルヴィニストであったか
  一 植村についての誤解
  二 佐藤繁彦と高倉徳太郎

第四章 植村と弁証学(『真理一斑』)
  一 弁証学と教義学
  二 『真理一斑』の特質

第五章 植村とキリスト論論争
  一 論争の前提
  二 論争への経過
  三 植村と海老名はどこがすれ違ったのか

第六章 植村の聖書に対する態度──特に聖書批評学に対して
  一 逐字霊感説でもなく、神の言葉としての聖書の否定でもなく
  二 時代に柔軟に、時代に流されず

第七章 植村と救い
  一 刑罰代償説
  二 救いの内容について
  三 福音的信仰について

第八章 植村と教会
  序 植村にエクレシオロジーはあったか
  一 植村と伝道
  二 植村と制度

第九章 植村における国民教会と国民の救い
  一 国民的自由教会の建設
  二 日本国民とキリスト教

第一〇章 『福音週報』の発刊
  一 文運隆昌
  二 『福音週報』の目指すもの

第一一章 明治学院から東京神学社へ
  一 明治学院
  二 東京神学社

第一二章 一致と組合の合同問題
  一 仮牧師バラ
  二 新島襄への招聘
  三 日本基督教会の合同体質

第一三章 内外協力の問題
  一 植村と田村の確執
  二 ミッション派と独立自給派
  三 東北地域の伝統と独立自給
  四 東北教区と奥羽教区の分離

第一四章 植村の伝道局支配
  一 発端
  二 任地の問題
  三 伝道局の発足

第一五章 植村の家庭と家族
  一 植村の子供たち
  二 植村夫人季野

付論一 植村と『キリスト教神学概論』
付論二 植村と『系統神学』講義

おわりに

1)150頁程度のコンパクトな大きさに、上記の問題が凝縮されている。植村について問題となる事項が、整理され展開されている。第一~三章は、植村についての通常のイメージを再検討しつつ、植村のキリスト教の背景を描くことが試みされている。また、第四、五章は、植村の神学思想について問題になる二つのポイントをおさえ、その上で、第六~八章の聖書、救済、教会というテーマが取り上げられる。第九章~一四章は、明治の時代を生きた植村の言論活動(社会の木鐸として)、神学教育、教会合同、ミッションとの関わりと伝道活動(伝道局)という、植村の公の活動が展開された三つの活動領域に即した論述がなされている。最後の第一五章は、植村の私的な事柄として家族が取り上げられている。植村の神学教育の内容に関わる二つの付論を含めて、以上によって、キリスト者植村の思想と実践が立体的に描かれた。

2)わたくしも、本書の第三、四、九、一〇章の内容に対応し植村について議論したことがあるので、関心のある方は、以下を参照。
・「アジア・キリスト教研究に向けて(1)-その視点と方法-」、現代キリスト教思想研究会『アジア・キリスト教・多元性』第3号、2005年3月、pp.71-88。(http://repository.kulib.kyoto-u.ac.jp/dspace/handle/2433/57687)
・「アジア・キリスト教研究に向けて(2)-方法と適用-」、現代キリスト教思想研究会『アジア・キリスト教・多元性』第4号、2006年3月、pp.43-62。(http://repository.kulib.kyoto-u.ac.jp/dspace/handle/2433/57696)
・「植村正久とキリスト教弁証論の課題」、現代キリスト教思想研究会『アジア・キリスト教・多元性』第5号、2007年3月、pp.1-22。
・「植村正久の日本論(1)」、現代キリスト教思想研究会『アジア・キリスト教・多元性』第6号、2008年3月、pp.1-24。(http://repository.kulib.kyoto-u.ac.jp/dspace/handle/2433/57669)
・「植村正久の日本論(2)」、現代キリスト教思想研究会『アジア・キリスト教・多元性』第7号、2009年3月、pp.1-20。(http://repository.kulib.kyoto-u.ac.jp/dspace/handle/2433/74753)

      
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Author:LogosOffice
 これまで本ブログは、2013年度より2015年度まで科学研究費の交付(代表者・芦名定道)を受けて行われた研究を中心に、キリスト教思想研究に関わる情報を発信してきました。しかし、内容的にこの科研のテーマ(「自然神学・環境・経済」)に限定されない諸問題を扱うことが多くなったため、本ブログのタイトルと趣旨を変更したいと考えました。新しいタイトルは「自然神学・宗教哲学・自然哲学」となります。もちろん、これまで同様にさまざまな問題を取り上げます。
 なお、本ブログにもしばしばコメントが寄せられますが、多忙のため、原則として応答その他の取り扱いはいたしません。

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