京都大学の今・職員組合のアピール

 日本の大学の近年、そして現在、大きな変革を迫られていることは、本ブログをご覧の方は、ご存じのことと思う(これが、広く共有されていないところに問題があるわけであるが)。OECD加盟国中で、高等教育への予算比率が最低の状況で、ランキング100に10の日本の大学が入ることをめざして、予算を付けるという政府方針であるが、それは、国立大学法人への運営交付金1%毎年削減という中での話である。率直に言って、お金が出さないが、根性でがんばれ、ということであり、非科学的な精神論でノーベル賞級の研究がどんどん出るくらいならば、だれも苦労はしない。ともかくも、こうした大枠を前提に行われているのが、現在の大改革である。大学院重点化、大学法人化に匹敵する、あるいはそれらを上回るこの間の「改革」の集大成である。

 こうした事態に対して、わたくしが所属する京都大学職員組合では、昨日、緊急アピールを行った。アピール文をネットに公開し、関係各所に文章で送付する。その後の運動の展開は現在検討中。
 以下にさわりの部分を転載したい。


京都大学は何処へゆく? ─教育研究組織改革案の何が問題か─

 京都大学で働き学ぶみなさん!
 今、京都大学は大きな転換を迎えようとしています。この数年来進行してきた諸改革、
すなわち、事務改革の断行、国際高等教育院の発足、そして博士課程教育リーディングプ
ログラムの開始によって、すでに京都大学の教育研究ならびに労働環境が劇的に変化しつ
つあることは、周知の通りです。そしてこれらの改革による激変は、昨年度から進められ
てきた「教育研究組織改革」において決定的な局面に達しつつあります。8月7日に松本
総長と2人の副学長の連名で教職員に送られてきたメール(総長メール)が示すように、
京都大学での教育研究組織改革は、次期国会以降への提出が取りざたされている「学校教
育法の改正」(「教授会は審議だけの機関となる」!)をも視野に入れ、この9月の決着
がめざされています。
 8月20日までに求められた対案提出に向けて、この間各部局ではさまざまな対応が試み
られてきました。文系部局を中心とした対案は、教育研究組織と教員組織の分離(二重化)
に対する反論を骨子としたものとのことですが、この分離反対の基本線においては、多く
の部局が足並みをそろえています。
 以上の学内状況のなかで、京都大学職員組合は、改革案の問題点を明らかにし、改革に
値する改革に向けた学内での議論を活性化すべく、緊急アピールを行うことにしました。
 改革案の問題点は大きく次の4点にまとめられます。

1. 「経済」「効率性」の論理だけで拙速に組織変更をしてはいないか?
 総長メールでも、改革案でも、今改革を行わねばならない理由として、社会的要因・財
政的要因が挙げられている。つまり、改革の大前提は、経済と効率性にほかならない。し
かし、改革案には日本における高等教育に対するきわめて低い財政支出状況(OECD加盟
国中、最劣位)や運営費交付金削減(それに伴い、8年間で人件費17.6%削減)に対する
批判という視点は、皆無である。まずなされるべきは、日本の教育予算の現状に対する大
学としての批判的な問題提起のはずである。この現状の根幹に対して変更を迫る議論なし
の改革は、最終的には教育と研究から創造力を奪うものとならないのか。
 5年、10年後のスパンで成果に直結することを求めても50年先の成果の芽をつぶすこと
があってはならない。

2. 「大学改革」予算獲得を第一義とすることで、京大らしさを失ってよいか?
 今回の改革は研究教育についての明確なビジョンへ向けての改革ではなく、外からのか
つ上からの改革ができる体制を確立するための改革、改革のための改革となっている。最
近の京都大学における諸改革・諸動向が現に示すように、総長案の方向では、予算獲得の
ための教育再生実行会議・文科省の大学改革の丸呑みになる可能性が高い。
 予算獲得を過度に目的化した改革が何を生み出すかは、マスコミが報道する諸大学にお
ける不祥事続出が示す通りである。京大のミッションは何であったか。画一的な枠組みを
押しつけることによって、京都大学の教育と研究を支えてきた独自性、特色あるセンター
や研究所の存在を失っていいのか。

3. 京大の業務「教育」を受ける受益者、学生にとって実益のある改革か?
 改革の当事者である教員はもちろん、教育を受ける学生の視点は、改革案には皆無で
ある。

・・・

4. 大学にふさわしいリーダーシップとは何か?
 今回の改革案から読み取れるのは、学部自治を基盤にした京都大学の現状では、「社
会的要因」「行財政的要因」から要求される「改革」が困難であり、総長の強力なリー
ダーシップとガバナンスの確立が必要との思想である。もちろん、リーダーシップは必
要である。しかし、問題は大学にふさわしいリーダーシップとは何かである。ワンマン
社長が発揮するようなリーダーシップが大学にふさわしいものなのか

・・・

 京都大学は激動の中にあります。この激動の向こうに何があるかは、京都大学に集うわ
たしたちが何をなし得るかにかかっています。今こそ、京都大学のすべての知恵と力を結
集することが求められています。
 京都大学職員組合は、この知恵と力の一翼を担うべく、以上の緊急アピールをいたしま
した。京都大学のさまざまな立場の方々が、それぞれの場で声を挙げていただくようお願
いいたします。

                  2013年8月30日
                    京都大学職員組合 中央執行委員会
                        同    教 員 部 会

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Author:LogosOffice
 これまで本ブログは、2013年度より2015年度まで科学研究費の交付(代表者・芦名定道)を受けて行われた研究を中心に、キリスト教思想研究に関わる情報を発信してきました。しかし、2016年度からの新しい研究プロジェクトに関連した事柄は、今後開設の別のブログで取り扱うことにし、本ブログでは、これ以外の記事について継続的に内容を更新します。
 なお、本ブログにもしばしばコメントが寄せられますが、多忙のため、原則として応答その他の取り扱いはいたしません。

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