『図書』から

 岩波の『図書』(2014.2)から二つの論考を紹介・コメントします。

・逸見龍生「文人たちの結社」
 取りあげられているのは、ディドロ-ダランベールによる『百科全書』である。この百科全書という構想は、たとえば、ドイツのキリスト教思想にも、現代に至る、大部な神学辞典の成立に受け継がれるなど、キリスト教思想をも含めた、知的世界への影響はきわめ大きいことが知られている。
 「原則的には誰もが等しく同じ権利をもって、多様な学知の吟味に平等に参加することができる新たな場」としての「『百科全書』の構想」、「新しい公共的知の方向が示す」「学知と技術知との統合」(4)は、決して昔の歴史の一コマではなく、現代にも再度活性化すべき試みなのではないだろうか。近代以降の知を担ってきた「大学」という場が、その存在基盤を揺るがし始めている日本的な状況においては、そろそろこの新しい知を担う場の構想を具体的に追及すべきときかもしれない。もちろん、それが辞書という形態を取るかはべき問題ではあるが。

・李成市「二一世紀の日本史研究へ」
 昨年秋から始まった、『岩波講座・日本歴史』刊行に関連した、インタヴューである。その中で、近代歴史学の基本性格について、「近代に作り出された歴史学、普遍的な学知と思われていた歴史学そのものが、実は国民国家を前提していた」という点が指摘され(8)、そこから、「東アジアという地域設定の問題」(10)、さらに「グローバル・ヒストリー」「普遍的な日本史」へと議論が進められている。
 「国民国家」を自明視するとこから、「日本史を普遍的なものの考え方のなかに位置づけなければならない」(12)という方向への転換が、日本史研究に求まられており、その具体化の試みが、東アジアという問題設定になる、と言えるであろうか。
 そもそも、国民国家を超える代表的な視点の一つであったはずのキリスト教においても、ここで思想的に試みるべき課題があるように思われる。これが、本ブログでも考えている、東アジアという問いが含意するものと言える。
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 これまで本ブログは、2013年度より2015年度まで科学研究費の交付(代表者・芦名定道)を受けて行われた研究を中心に、キリスト教思想研究に関わる情報を発信してきました。しかし、2016年度からの新しい研究プロジェクトに関連した事柄は、主に別のブログで取り扱うことにし、本ブログでは、これ以外の記事について継続的に内容を更新します(新しい科研に関するものも、記事の継続性の観点から一部はこちらでも扱います)。
 なお、本ブログにもしばしばコメントが寄せられますが、多忙のため、原則として応答その他の取り扱いはいたしません。

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