キルケゴール研究

 キルケゴール研究は、京都大学キリスト教学専修でもこれまで繰り返し取りあげられ、その専門研究者が活躍した研究テーマである。最盛期に比べれば、やや研究者の層が薄くなってきているとは言え、現在も、デンマーク語原典と正面から向き合った研究がなされている。このたび、若手のキルケゴール研究者として活躍中の方による充実した研究書が刊行されたので、紹介したい。
 2010年度に一橋大学大学院社会学研究科より博士(社会学)を授与された博士論文を基にして刊行されたものである。

須藤孝也
『キルケゴールと「キリスト教界」』
創文社、2014年。

凡例

序論

第一部 前期キルケゴールのキリスト教人間学
  第一章 実存弁証法と形而上学批判
    第一節 主体性の発展
    第二節 インコグニト、諸段階の関係
    第三節 形而上学を拒む実存
    第四節 伝達、人格、ネガティビティ

  第二章 キリスト教主義の思想
    第一節 第二倫理
    第二節 反復
    第三節 前期仮名著作の「詐術」
    第四節 前提としての信仰

第二部 キリスト教と「キリスト教界」
  第三章 後期キルケゴール思想の展開
    第一節 近世デンマーク史
    第二節 隣人愛
    第三節 大勢と単独者
    第四節 卑賤論の提示をめぐる煩悶
    第五節 義務と恩寵

  第四章 フォイエルバッハと人間主義の問題
    第一節 フォイエルバッハのヘーゲル論
    第二節 投影論と卑賤論
    第三節 フォイエルバッハの「新しい哲学」
    第四節 投影論を超克する論理
    第五節 キリスト教主義と人間主義

  第五章 キルケゴールと「キリスト教界」
    第一節 キルケゴールのキリスト教史理解
    第二節 キルケゴールの自己理解
    第三節 教会との交わり
    第四節 宗教と政治

第三部 キリスト教界内の思想家としてのキルケゴール
  第六章 「キリスト教界」批判とキリスト教主義
    第一節 現象としての「キリスト教界」と理念としてのキリスト教
    第二節 実定宗教としてのキリスト教
    第三節 信仰と演繹
    第四節 キリスト教界とその外部

  第七章 素朴性の問題
    第一節 信仰主義の反復性と素朴性
    第二節 「哲学」批判の現代性
    第三節 歴史と永遠
    第四節 「キリスト教界」という文献

  第八章 キルケゴールと現代
    第一節 世俗化
    第二節 形而上学批判の射程
    第三節 哲学と歴史学

結論

あとがき
引用文献
索引(人名・事項)

 全体の印象は、比較的最近の研究動向・方法論を反映したキルケゴール研究ということであり、キルケゴールのの思想的射程を積極的に描き出すことが心がけられているということである。個人的には、20世紀の半ばを中心とし、書としてドイツ語訳に依拠した分厚いキルケゴール研究の蓄積は、こうした動向においてはいかなる仕方で継承あるいは乗り越えられているかという点である。デンマーク語原典でのキルケゴール研究という当然の手続きを経た研究が、それ以前のキルケゴール研究を実質的にどのように深めることができているかが、問われているように思われる。
 キルケゴールのフォイエルバッハ論は、20世紀にさまざまなキリスト教思想家が取り組んだフォイエルバッハ論の中でどのように位置づけうるのであろうか。キルケゴールのフォイエルバッハ論へのまとまった論述・分析がなされていることは、本書のポイントの一つであろう。
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 これまで本ブログは、2013年度より2015年度まで科学研究費の交付(代表者・芦名定道)を受けて行われた研究を中心に、キリスト教思想研究に関わる情報を発信してきました。しかし、2016年度からの新しい研究プロジェクトに関連した事柄は、今後開設の別のブログで取り扱うことにし、本ブログでは、これ以外の記事について継続的に内容を更新します。
 なお、本ブログにもしばしばコメントが寄せられますが、多忙のため、原則として応答その他の取り扱いはいたしません。

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