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言葉と音楽

 本ブログでは、自然神学から社会科学へという議論を、言語・聖書解釈で繋ぐことを考えてきている。もちろん、さしあたりの基本線は、このように描くことになると思われるが、宗教研究という観点からは、さまざまな他の、しかも決定的な要素を考慮することが必要になる(はじめからモデルを複雑にすると議論が進まなくなるわけであるが)。
 たとえば、音楽・音という要素である。本ブログでも、聖書翻訳ということを主に念頭におきつつ、翻訳論を取りあげてきた。しかし、キリスト教的生においては、聖書翻訳だけではなく、場合によってはさらに讃美歌(翻訳)が決定的に重要なものとなる(口語訳から新共同訳への聖書翻訳の変化も影響が大きいものの、讃美歌の変更はさらに深刻である)。また、聖書というテキストの分析は、説教という問題にも当然展開されねばならないはずである。これは、テキストの読解プロセスの研究(読解の現象学から解釈学的プロセスとしての読解論と自己論へ)に並行する説教プロセスの研究(説教の現象学から聴聞プロセスとしての説教論)というテーマである。そして、聖書テキストと説教という場にさらに讃美歌が関連することになる。
 キリスト教的生、特に信仰を論じるには、こうした議論が前提になるはずであり、いずれ、機会があれば精密な議論を展開したいと考えている(基本的に必要な素材は手元に揃っているものでなんとかなるであろうか)。
 このようなことを今回メモしようと考えたのは、先日、『礼拝と音楽』(2014 Winter No.160。日本キリスト教団出版局)をいただいたことによる。その内容について、簡単に紹介しておきたい。

特集 苦難の中で祈る──東日本大震災3周年を前に
被災地で神に祈る──終わることのない受難節(吉田隆)
東日本大震災3周年を記念して──「小集会のための祈り」と「礼拝式文」(石田学 江藤直純)
不安定の中に安心を見出す──ドイツ・バロック時代の詩人パウル・ゲルハルト(富田恵美子・ドロテア)
《やすかれ、わがこころよ》に《フィンランディア》が使用される理由──賛美歌における楽曲の意味をめぐって(山本美紀)
苦難の中から生まれた賛美──アフロアメリカン・スピリチュアル/ゴスペル(梶原壽)
[エッセイ]
 東日本大震災の中での祈り──教派を超えて(加藤博道)
 平和と信仰と美術(渡辺総一)
 「普天間基地ゲート前でゴスペルを歌う会」結成のきっかけ(神谷武宏)

 以上の特集からもわかるように、「礼拝と音楽」は本ブログのテーマともきわめて近い問題連関にある。この点に気付いたことがこの雑誌を読んだ最大の成果である。しかも、お馴染みの名前をあちらこちらに発見したことも、親近感を感じさせるものとなった。学会でお世話になっている江藤先生、黒人神学関連の翻訳(J・コーン)を通してお世話になっている梶原先生など。
 あるいは、連載でも、「ルターと賛美歌(4)」の徳善義和先生、そして「世界の教会とともに──WCC第10回総会の礼拝から(1)」の神田健次先生。神田先生とは先日も大阪でお会いして、日中韓神学フォーラムの相談をしたばかりである。

 最後に、今回この雑誌をお届けいただいた、特集執筆者の一人である、山本美紀さんの論考について。実は山本さんの著書については、以前に本ブログで、紹介したことがある。山本さんは京都大学キリスト教学研究室を会場に行われている「アジアと宗教的多元性」研究会のメンバーであり、教会音楽・讃美歌研究を専門にしておられる方である。

 今回の論考では、シベリウスのフィンランディアと讃美歌「やすかれ、わがこころよ」との関わりが取りあげられているが、「《フィンランディア》を旋律として歌うということは、神にある平和は確かに「戦い」をはらむとうことを、この賛美歌は示しているのである」との指摘は印象的である。これが東日本大震災3周年の特集と結び付くことは、福島出身者としても了解できる。
 なお、《フィンランディア》は、わたくしが中学校時代の吹奏楽部で仲間と演奏した曲、特に記憶に残る曲の一つである(讃美歌に収録されていることはその後に知った)。
 
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プロフィール

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Author:LogosOffice
 これまで本ブログは、2013年度より2015年度まで科学研究費の交付(代表者・芦名定道)を受けて行われた研究を中心に、キリスト教思想研究に関わる情報を発信してきました。しかし、内容的にこの科研のテーマ(「自然神学・環境・経済」)に限定されない諸問題を扱うことが多くなったため、本ブログのタイトルと趣旨を変更したいと考えました。新しいタイトルは「自然神学・宗教哲学・自然哲学」となります。もちろん、これまで同様にさまざまな問題を取り上げます。
 なお、本ブログにもしばしばコメントが寄せられますが、多忙のため、原則として応答その他の取り扱いはいたしません。

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