現代聖書学から、クロッサン5

 ジョン・ドミニク・クロッサン『イエスとは誰か──史的イエスに関する疑問に答える』から、ポイントを抜き出して、紹介します。
 今回は、第5章で、奇蹟です。福音書においてイエスは奇蹟を行った者として登場しますが、奇蹟物語をどのように理解すべきか、奇蹟は実際に起こったのかどうか、といったところは、聖書を読み際に多くの人が抱く疑問です。クロッサンの聖書学的議論、特に社会的奇蹟に関わる論は、奇蹟を単純な「ある・なし」という枠で捉える発想を脱却する上で有用です。

5 イエスは奇蹟を起こしたのか
「古代人の馬鹿げた話を賢い私たちが実話ではなく寓話と捉えてやるのではありません。うまい隠喩(あるいは譬え)の話し方を心得ているのが古代人で、それを事実と捉えてしまうくらい馬鹿なのが私たち現代人なのです」、「自然奇蹟とは権威の譬え話なのです。イエスの超能力ではなくて、教会の中の弟子たちの権威について話です。」(86)
「信仰は癒すのです。これは確実です。ある状況である人とのある病気は、信仰で治るかの生が高いのです。」(87)
「もちろん、苦しんでいる個人を癒すことは大事です。ただ、この話はもっと深い。社会全体についての譬えになっているのです」、「身体は社会の象徴である」(88)
「ユダヤ人の国は、自分よりも強い帝国の文化に吸収されてしまうのではないかといつも脅える社会でした。こうした政治的、軍事的、文化的、宗教的に抑圧される社会は、社会の境界線を守るのです」(89)
「「らい病人」」「身体の境界線が崩れることは、社会全体の清潔と安全が脅かされることを象徴するのです」(90)
「イエスがしたのは、追い払われたのけ者を共同体の中に迎え入れることでした。この歓迎が癒しだったのです」、「疾患を治すことと病を癒すことを区別しましょう」、「疾患は問題を生理的にと耐えます。病は問題を広く心理的、社会的に捉えます」(91)
「イエスは疾患よりも病を癒したのです」、「イエスは物理的世界に介入して疾患を治したのではなくて、社会的世界に介入して病を癒したのでしょう」(92)
「神の民の共同体にらい病人を呼び戻すことで、イエスは社会の境界線の番人に挑戦しようとしているのです」、「当然それは社会制度を揺るがすと見なされました」、「境界線を管理する神殿の祭司たちを直ちに衝突します」(93)
「征服された国は、いわば多重人格障害を負います。一面では抑圧者を憎んで蔑みながら、別の面ではその強い力を羨んで讃える。身体が社会の象徴だとすれば、ちょうどそれと同じ分裂を個人も自分の中で経験するかもしれません。一世紀の精神状態では、悪霊の憑依と帝国の抑圧とが結びついていたのだろうと思います」(97)
「レギオン」「植民地の搾取が悪霊憑きに具体化しました」(98)
「イエスは神の王国を論じるだけではなく演じたのです」(99)
「超自然や神聖というのは、普通の自然界や人間界の表面を何かで突き破ることではありません」(100)
「私に言わせれば深刻な誤りは、聖なるものを自然の秩序の割れ目や裂け目にしか認めず、その上下左右前後内外のいたるところに認めようとしないことなのです。私の信じる奇蹟とは、個人や集団が神の働きを見る場です。イエスは奇蹟です」(101)
「神の王国での自分の身体と希望と人生を取り戻したという体験はよみがえりと理科したのではないでしょうか」(103)
「古代人が文字通りに伝えた話を象徴的に捉えてやるほど今の私たちが賢いのではなくて、古代人が象徴的に語ったものを文字通りに捉えてしまうほど今の私たちが鈍いのです。古代人は自分のしていることが分かっていた。私たちは分かっていないのです。」(104)
「イエスの家族は彼の力と教えを信じていたけれども、彼のやり方を全く信じていなかったのではないかと私は思うのです」、「家族が放浪するイエスに手を焼いたのは、家族がイエスをナザレの実家に居座らせてそこを癒しの儀式の場にしたかったからでしょう。彼が親分になる、家族は斡旋人になる、農民に噂が広まれば病人は子分として癒してもらいに来る」(105)
「ペテロはイエスを居座らせて、自分の親分を病気の子分に斡旋しようとしている。しかしイエスは、自分を必要とするすべての人に斡旋人のきの王国を提供するために、移動しようとする」、「神の王国とは、既存の斡旋人や固定した場所を介さずに、人も神も直に触れ合う平等な共同体なのです」(106)

 以上の第5章からの抜き書きについて、冒頭に引用した言葉は印象的です。
 「古代人の馬鹿げた話を賢い私たちが実話ではなく寓話と捉えてやるのではありません。うまい隠喩(あるいは譬え)の話し方を心得ているのが古代人で、それを事実と捉えてしまうくらい馬鹿なのが私たち現代人なのです」。前近代人も、わたしたち以上に理性的で合理的な思考を行っている、これは当然です。
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