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現代世界と宗教

 現代世界はグローバル化における単一化圧力と多元化の促進という一見相反するベクトルがせめぎ合い、複雑な動態を描いている。その中で、宗教はそのファクターの一つとして、あるいは重要なプレイヤーとして存在する。ここに、多元化社会という現実と、共生あるいは対話という課題が浮かび上がる。
 こうした問題意識は、1980年代頃から共有されて現代にいたっており、その間、すでに多くの議論が蓄積されてきた。日本の宗教研究においても同様であり、2014年の日本宗教学会・第73回学術大会(同志社大学)でのテーマは、「宗教と対話──多文化共生社会に中で」であった。この問題に対する日本宗教学会における本格的な取り組みは、さらに10年前の国際宗教学宗教史会議第19回世界大会(2004年、東京にて)に遡るであろう(あるいはさらに、2001年の『宗教研究』の特集号のテーマは、「近代・ポスト近代と宗教的多元性」であった。この特集号には、わたくしの論文が掲載されている)。
 2014年の同志社大学での日本宗教学会・学術大会の成果とその発展を内容とした論集が、刊行されたので、紹介したい。

小原克博・勝又悦子編
『宗教と対話──多文化共生社会に中で』 
2017年、教文館。

巻頭言 (小原克博・勝又悦子)

第Ⅰ部 様々な対話の可能性
  第一章 国際政治から見た宗教研究への期待 (村田晃嗣)
  第二章 社会福祉におけるスピリチュアリティ──宗教と社会福祉の対話 (木原活信)
  第三章 宗教と対話──多文化共生社会の可能性と宗教間教育の意義 (小原克博)

第Ⅱ部 宗教間・文化間の対話
  第四章 宗教間対話運動と日本のイスラーム理解 (塩尻和子)
  第五章 エジプトにみる聖家族逃避行伝承をめぐる宗教共存──ムスリムとコプト正教徒の関係 (岩崎真紀)
  第六章 イスラームの平和──慈悲と慈愛の信仰構造を通して (四戸潤弥)

第Ⅲ部 「民主主義」との対話
  第七章 ユダヤ教文献にみる「自由」と「支配者」像──多文化共生への他者理解に向けて (勝又悦子)
  第八章 中世ユダや思想における「民主主義理解」──アバルヴァネルを中心に (平岡光太郎)
  第九章 イスラームと奴隷 (森山央朗)

あとがき (小原克博)

 キリスト教・ユダヤ教・イスラームを中心とした問題領域における多様な動向が視野に入れられた論集である。こうした論集をもとにして、それを理論的なレヴェルで集約する作業が今後必要になるように思われる。 
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 本ブログは、2013年度以降に、芦名定道を代表者として交付を受けた科研費による研究内容を中心に、キリスト教思想研究に関わる情報を発信してきました。この間、ブログのタイトルは、「自然神学・環境・経済」から、「自然神学・宗教哲学・自然哲学」へと変化したが、趣旨は一貫しており、かなり自由にさまざまな問題を取り上げきました。2021年4月より、このブログの作成者は、所属する大学が変わりましたが、当面は、同様の内容でこのブログを運営する予定です。
 なお、本ブログにもしばしばコメントが寄せられますが、多忙のため、原則として応答その他の取り扱いはいたしません。

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