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現代宗教学の基本文献34

 現代宗教学というカテゴリからは、やや脱線しつつありますが、フロイトに関連する事柄を取り上げます。
 『人間モーセと一神教』については、一方で、特に旧約聖書学においては、「天才フロイトの珍説」(山我哲雄『一神教の起源 旧約聖書の「神」はどこから来たのか』筑摩書房、2013年、43頁以下)とも言われるように、ほとんど顧みられない状況であるが、他方では、それの歴史的事実性とは別の仕方で、しかし歴史の問題として注目する見解が見られる。評価が大きく分かれる文献である。
 この後者の例として、本ブログでも、以前に別のカテゴリで紹介の、ヤン・アスマンの議論は、改めて、取り上げるに値するものであろう。歴史は、近代歴史学が事実として再構成し提示する事柄だけでなく、「内側に向かって結束性とアイデンティティを形成する一方で、自己の周囲にある他の文化に関しては異者性を産出する」文化をその作用の歴史として掘り起こすことにも関わるかたである。これは、記憶の歴史(記憶史)と呼ばれる問いである。

ヤン・アスマン
『エジプト人モーセ ある記憶痕跡の解読』
藤原書店、2017年。

「フロイトの本はエジプト学、宗教史、旧約聖書学に対する挑戦だった。わたしはこの挑戦を常に感じ、そして、彼の本にこれらの分野がかくもわずかしか応えていないことを、いぶかしく思ってきた。肝要なのは、フロイトが犯した歴史学上の誤りを訂正することではなかった。そうではなく、現在が過去に向けている根本的な問い、エジプト学がその答えではないとしても、少なくともそれに対する関心を期待してしかるべき問いを、フロイトをきっかけとして思い出すことだった。・・・本書でわたしが試みるのは、一種の想起の作業として、これらの埋もれた問いを再び明るみに出すことであり、それらの問いに答えることではない。本書は扱うのは、イスラエルとエジプトの象徴的な対決を舞台として展開される、宗教的な敵対関係の「記憶史」である。わたしはこの点に関して、反ユダヤ主義の歴史的分析にも何らかの寄与をすることができるのではないかと期待している。」(22-23)

 このように考えるとき、フロイトの思索は、まだ閉じていないことがわかるだろう。
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Author:LogosOffice
 これまで本ブログは、2013年度より2015年度まで科学研究費の交付(代表者・芦名定道)を受けて行われた研究を中心に、キリスト教思想研究に関わる情報を発信してきました。しかし、内容的にこの科研のテーマ(「自然神学・環境・経済」)に限定されない諸問題を扱うことが多くなったため、本ブログのタイトルと趣旨を変更したいと考えました。新しいタイトルは「自然神学・宗教哲学・自然哲学」となります。もちろん、これまで同様にさまざまな問題を取り上げます。
 なお、本ブログにもしばしばコメントが寄せられますが、多忙のため、原則として応答その他の取り扱いはいたしません。

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