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『図書』から

『図書』2020.5 (岩波書店)が届きました。
 今月号で取り上げたいのは、次のエッセイです。

苅谷剛彦
「人類の危機と人文学への期待──オックスフォード大学を通して考える」

 エッセイは、新型コロナウィルスの感染拡大から始まり、「人文学の貢献が、日本では目に見えにくい」、「二〇一五年に文部科学省が出したといわれる、「文系学部廃止」の通達」へと日本社会の現状へと進みます。ここまでは、お馴染みの話。しかし、このエッセイのねらいは、この日本と次のオックスフォード大学との対比であり、そこから何を学ぶかということであろう。

 その上で、「人文学の復権」を驚くべき事例として、「二〇一九年六月にオックスフォード大学が出した声明」「オックスフォード大学学長・・・ルイーズ・リチャードソン」からの教員たちへのメール、「前例のない人文学への投資が行われたこと」へと話は展開される。
 これは、「アメリカの篤志家であるステファン・シュワルツ氏が、大学に一億五〇〇〇千万ポンド(およそ二一〇億円)の寄付を行い」、「氏の名前を冠したシュワルツ人文学研究センターの設立に合意した」というニュースである。このセンターの目玉は、「AI倫理に関する研究所を作ることである。」
「「テクノロジーの発達が際立つ時代に、人文学がその中核を担うべき位置にある」ことを認めたのである。」

「人文学が過去に生み出してきた知の体系が貢献するケというだけではない。私たちがそれまでに経験したことのない未知の問題に直面したときに、私たちが必要とする能力の一端は、事態を冷静に認識し、自分たちの置かれた状況を相対的に俯瞰しつつ、そこでとりうる選択肢やその副作用について論理的に考え、実際に取り得る行動を互いに納得できるように説明・理解し合いながら、選び取っていくこと」
「批判的は思考力」。
「人文学における教育の神髄とは、こうした批判的思考力の育成にある。」
「オックスフォード大学」「徹底した少人数教育」「批判的思考力を育成できる教育技法」

 結びの部分では、この人文学センター設立にこぎ着けた、ルイーズ・リチャードソン学長に言及される。
「オックスフォード大学の八百年近い歴史の中で初めての女性学長」「オックスフォードの卒業生でもイギリス人でもない」
「実績も能力もあるリーダーに、大学に新たな変化を引き起こす舵取りを期待するからだ」、「伝統と創造の二つの微妙なバランスの妙」

 今年度は、京都大学でも総長が改選の年であり、新たな総長が誕生することになる。京都大学では、「伝統と創造の二つのバランスの妙」ははたして発揮されるのだろうか。また、危機の中で人文学の意味が問われていることも疑いない。
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Author:LogosOffice
 これまで本ブログは、2013年度より2015年度まで科学研究費の交付(代表者・芦名定道)を受けて行われた研究を中心に、キリスト教思想研究に関わる情報を発信してきました。しかし、内容的にこの科研のテーマ(「自然神学・環境・経済」)に限定されない諸問題を扱うことが多くなったため、本ブログのタイトルと趣旨を変更したいと考えました。新しいタイトルは「自然神学・宗教哲学・自然哲学」となります。もちろん、これまで同様にさまざまな問題を取り上げます。
 なお、本ブログにもしばしばコメントが寄せられますが、多忙のため、原則として応答その他の取り扱いはいたしません。

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