現代フランス思想の射程

 フランスは、日本における現代思想の中心、憧れの地となって、すでに久しい時が流れている。フランス思想への関心は、現象学や構造主義からさらにポストモダン、脱構築まで、延々と続いており、現在も途切れることがない。宗教思想、宗教哲学の分野も同様である。
 こうした中で見過ごすことがきないのが、マルクス主義系の思想動向である。フランスさらにはイタリアのこの半世紀余りのマルクス主義系あるいは社会主義系の思想の動きは、日本における社会思想・政治思想の活性化・刷新にとって大きなポテンシャルを秘めている。こうした現代思想の動向を日本に紹介し、また主体的に取り組んできた人物として、西川長夫さんを挙げることができるのではないだろうか(本ブログでも以前にアルチュセールを取り上げた際に、西川さんの翻訳書を用いた)。最近刊行の論集(「あとがきに代えて」では、「本書は私の最後の論集となるはず」と書かれている)を紹介したい。32の論考が収められている。紹介は収録論考のタイトルのみ。

西川長夫
『植民地主義の時代を生きて』
平凡社、2013年5月。

まえがき

I 国金国家論再論
 1 帝国の形成と国民化
 2 フランスの解体?──もうひとつの国民国家論
 3 グローバル化と戦争──イラク占領の「日本モデル」について
 4 グローバル化に伴う植民地主義とナショナリズム
 5 欧化と回帰──ナッショナルな表象をめぐる闘争について
 6 ナショナリズムと民族主義──孫文とタゴールの民族主義を手がかりにして
 7 フランス革命再論──革命は植民地主義を克服したか
 8 『ルイ・ボナパルトのブリュメール一八日』再読──ボナパルティズムについての私的な回想

II 植民地主義の再発見
 9 六八年革命再論
10 植民地主義と引き揚げ者の問題
11 植民地主義の再発見
12 私にとっての朝鮮──遅れてきた青年の晩年について
13 二つの廃墟について
14 東日本大震災が明らかにしたこと──原発とグローバル化の問題について

III 多言語・多文化主義再論
15 多言語・多文化主義をアジアから問う
16 多文化主義の不正義
17 ヴァナキュラーな言語と教育言語──グローバル化のなかの言語とアイデンティティ
18 差異とアイデンティティのための闘争の先に見えてくるもの──タゴールとイリイチを手がかりに
19 多文化共生と国内植民地主義
20 言語による独裁制と植民地化──『プラスチック・ワード』を読む
21 文化の国境をいかに越えるか──東アジアにおける共同無形文化遺産の事例を手がかりに
22 焼かれた国境──ヨーロッパの「郊外暴動」について

IV スタンダールと戦後文学
23 スタンダールの晩年──冬のイタリア紀行
24 偽名とロマネスク──スタンダールの変名趣味をめぐって
25 織田作之助とスタンダール、あるいは京都の織田作之助について
26 再び生きられたフランス革命──スタンダールの戦後
27 ギゾーとスタンダールの文明観をめぐって
28 戦後文学再考──9・11のあとに
29 太宰治再読──弱者のユートピアをめぐって
30 日本におけるスタンダール受容の問題──<私>はいかにスタンダールを読んだか
31 作家の死と復活──La Vie Murmurée(『日々の呟き』)を観て
32 廃墟と生体実験──3・11のあとに

あとがきに代えて
西川長夫・略歴と著者目録(内藤由直)

 全体が600頁を超える論集であり、扱われる問題も多岐にわたる(しかし決してばらばらではない)。全体を通読するのは大変であるが、いくつかの論考は、この夏、ぜひ読んでみようと考えている。
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 これまで本ブログは、2013年度より2015年度まで科学研究費の交付(代表者・芦名定道)を受けて行われた研究を中心に、キリスト教思想研究に関わる情報を発信してきました。しかし、2016年度からの新しい研究プロジェクトに関連した事柄は、主に別のブログで取り扱うことにし、本ブログでは、これ以外の記事について継続的に内容を更新します(新しい科研に関するものも、記事の継続性の観点から一部はこちらでも扱います)。
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