アーレントとキリスト教

 ハンナ・アーレントは、現代思想の広範な分野(哲学、政治学、倫理学、宗教学、そしてキリスト教学など)で注目される思想家である。特に、政治思想・政治哲学においては、中心的な位置の一角を占めると言っても過言ではない。アーレントについては、キリスト教との関わりにおいても、これまでもしばしば取り上げられてきたが、その思想の核心部分からアーレントとキリスト教との関わりに迫り、一定の成果を示した研究は決して多くはない。
 今回、紹介の文献は、この研究テーマについて正面から取り組んだ研究成果であり、アーレント研究においても独自のものと言える。

今出敏彦
『ハンナ・アーレントの『人間の条件』再考──世界への愛』
近代文藝社、2013年8月。

まえがき

序論
第一章 アーレントの現代理解の視点を求めて
  第一節 「世界疎外」(World alienation)と社会の勃興
  第二節 全体主義と反ユダヤ主義──『人間の条件』へ

第二章 「実践的生」(Vita activa)を導入する
  第一節 「公的なもの」(the Public)
  第二節 近代市民社会の評価による公共性論

第三章 Vita activaとしての精神の生
  第一節 Vita activaとしての精神の生の構想
  第二節 行為の源泉としての意志
  第三節 この世界に新しい〈始まり〉を出現させること

第四章 世界への愛(Amor mundi)
  第一節 「公的」と「私的」の間
  第二節 赦しと約束の力
  第三節 アーレントのアウグスティヌス解釈

結論

あとがき

注釈と参考文献

 本書は、著者の今出さんが、京都大学に提出し博士学位を取得した博士論文をもとにした専門研究であり、京都大学キリスト教学出身の方が、その学問的成果を公刊させたことについては、現在、この専修を担当している者として共に喜びたいと思う。
 博士論文は大学院教育の最大の目標であり、博士学位を取得し、それを公にすることは、自立した研究者としてのいわばしるしとでもいうものである。もちろん、博士の学位を取得すれば、それで研究者としての目標を達成したということではなく、博士の学位はあくまでも研究者としての出発点に位置するものであり、研究者としては学位取得後の研究の展開が問われると言うべきではあるが。次の研究テーマへの展開という意味では、学位論文の出版は大きな区切りとして重要な意味を有しているように思われる。現在の問題の一つは、優秀な学位論文を刊行するシステムが整備されていない点にある。電子出版ではその評価がやや不安であるし、しかし、私費出版となると多額の費用がかかる。出版助成は、常勤の研究教育職につくことができれば、一定の道が開けることがそれなりにあるが、非常勤職のままではきわめて狭き門である。となると、従来の形態の書籍の形での出版であっても、安価(といっても数十万程度)な支出ですむシステムが必要になる。現在、このシステムの開発中である。
スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

LogosOffice

Author:LogosOffice
 これまで本ブログは、2013年度より2015年度まで科学研究費の交付(代表者・芦名定道)を受けて行われた研究を中心に、キリスト教思想研究に関わる情報を発信してきました。しかし、2016年度からの新しい研究プロジェクトに関連した事柄は、主に別のブログで取り扱うことにし、本ブログでは、これ以外の記事について継続的に内容を更新します(新しい科研に関するものも、記事の継続性の観点から一部はこちらでも扱います)。
 なお、本ブログにもしばしばコメントが寄せられますが、多忙のため、原則として応答その他の取り扱いはいたしません。

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
Translation(自動翻訳)
FC2カウンター
カレンダー
07 | 2017/08 | 09
- - 1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31 - -
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR