研究者の責任

 科学者、学者、研究者、さまざまな言い方があるが、こうした職業についている者について、その倫理性が問われている。職業倫理、専門職倫理、研究者倫理という言い方も可能である。特に、研究内容が一定以上の社会的影響を持つ場合に、この倫理性あるいは責任は重大な意味をもつことになり、しかも、現在、問われているのはこの倫理性・責任の欠如が引き起こす問題である。政府の教育研究予算の縮小の中で競争資金の獲得が求められる中、この倫理・責任が保ち得ているのか、そこに個々人の努力や自覚を超えた構造上・制度上の問題はないのかなど、問われる事柄は少なくない。3・11以降の日本、原発や災害といった問題に関わる専門家は、いったい誰に対して責任を果たそうとしてのから問われざるを得ない状況にある。

 こうした中で問題化しているのが、「御用学者」という研究者の在り方である。なぜ、研究者は御用学者と言われる状況に陥るのか、そのメカニズムは何なのか。これは、わたくしのような、「御用」の声がかかりそうもない研究分野の者にとっても、まったく無関係とは言えないものであり、大学の役割や存在意味といった点に不可分と言わねばならないだろう。

 今回取り上げるのは、ずばりこの問題を論じたものであり、著者は、地球科学の専門家として地震などの問題に取り組んできた自然科学者である。いわば現場からの考察と言えうるであろうか。取り上げられる事例は広範に及ぶが、「人はなぜ御用学者になるのか」の要点は、序章にまとめて書かれている。

島村英紀
『人はなぜ御用学者になるのか──地震と原発』
花伝社、2013年。

まえがき

序章 人はなぜ御用学者になるのか
1章 地震と科学者
  1 イタリアの地震予知裁判──他人事ではない日本の体質
  2 続発する「政府の想定外」の地震
  3 地震予知五〇年、一度も成功せず
  4 津波警報の問題点
  5 防潮堤を過信していなかったか
  6 気象庁の緊急地震速報のまやかし
  7 地震情報とその伝えかた

2章 地震と原発
  1 福島原発で東北地方太平洋沖地震のときになにが起こったのか
  2 いままで原発が作られて来たときの「基準」
  3 いままで原発が作られてきたときに地震学はどのように利用されてきたのか
  4 原発事情は日本だけではない

3章 科学と政治の舞台裏
  1 工業活動が公害を引きおこした──水俣病を隠蔽したチッソ
  2 政府の悪あがきの果てに
  3 その昔の大気汚染と水質汚染、そしていま
  4 「地球温暖化」をめぐる国際政治と巨大産業の思惑

4章 巨大科学と社会の危うい関係
  1 科学者と社会
  2 科学者とメディア
  3 日本の自動車技術「神話」をあばく
  4 「いかがわしさ」漂わせ始めた近代科学
  5 社会は「危険な科学」を規制できるのか
  6 巨大科学の「宿命」に失望した科学者

5章 科学者の孤独
  1 科学者も人間
  2 地震研究の最前線と冒険譚
  3 「地球の新説」に挑む南極科学者の哀愁

6章 警告はなぜ生かされなかったのか
  1 関東大震災を予測した地震学者・今村明恒の悲運
  2 スマトラ沖地震──大津波・先住民・伝承した知恵

あとがき
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 これまで本ブログは、2013年度より2015年度まで科学研究費の交付(代表者・芦名定道)を受けて行われた研究を中心に、キリスト教思想研究に関わる情報を発信してきました。しかし、2016年度からの新しい研究プロジェクトに関連した事柄は、主に別のブログで取り扱うことにし、本ブログでは、これ以外の記事について継続的に内容を更新します(新しい科研に関するものも、記事の継続性の観点から一部はこちらでも扱います)。
 なお、本ブログにもしばしばコメントが寄せられますが、多忙のため、原則として応答その他の取り扱いはいたしません。

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