カルト研究

 カルトと言えば、多くの方はオウム真理教を思い出すかもしれない。カルト、新宗教、こうした現代の諸問題は、宗教研究にとって常に気になる問題の一つであり、実際、多くの研究がなされてきた。
 今回紹介する文献は、カルト問題に長年、研究テーマとして取り組んできた研究者の専門研究であり、カルト問題に関連した多岐にわたる議論を、裁判・メディア・宗教研究の各領域で批判的に検討し、それによって現代日本における宗教問題をめぐる公共性の構築過程を解明するとの構想を形にしたものである。本書によって、カルト研究も新しい水準に到達したと言えるように思われる。関心のある方は、一読いただきたい。

櫻井義秀
『カルト問題と公共性──裁判・メディア・宗教研究はどう論じたか』
北海道大学出版会、2014年。

はじめに
  カルト問題とは何か
  信教の自由とカルト裁判
  本書の構成

第I部 カルト論の構図
第一章 カルト論の射程
  一 終わらないカルト問題
  二 カルトとは何か
  三 カルト論の諸相
  四 カルト論の現代的射程

第二章 カルト問題におけるフレーミングとナラティブ
  一 宗教調査の困難
  二 入信の理論と社会的フレーミング
  三 ナラティブの構築性と社会的争点
  四 脱会カウンセリングと信教の自由
  五 カルト問題研究者の当時者性

第三章 カルトと宗教のあいだ
  一 宗教と倫理
  二 カルト問題の社会的構築
  三 教会のカルト化
  四 教勢拡大のための布教体制と信仰のあり方
  五 カルトと宗教を分かつもの

第II部 カルト問題の構築
第四章 マスメディアによるカルト、マインド・コントロール概念の構築
  一 マスメディアとカルト問題
  二 カルトの用例
  三 マインドコントロールの用例
  四 まとめ

第五章 麻原裁判とオウム真理教報道
  一 オウム真理教事件の報道
  二 東京地裁での麻原判決および弁護側書面の特徴と論点
  三 麻原判決報道の特徴
  四 報道の嵐の後に

第III部 マインド・コントロール論争と裁判
第六章 「宗教被害」と人権・自己決定
  一 カルト問題と人権
  二 マインド・コントロール論争における宗教的自己決定
  三 霊感商法被害から違憲伝道訴訟へ
  四 札幌地裁判決
  五 違憲伝道訴訟の展開
  六 宗教と公共性

第七章 強制的説得と不法行為責任
  一 違法伝道批判とマインド・コントロール論
  二 説得と統制の詐欺的・間接的技術に関する専門調査部会報告
  三 法廷助言書をどう読むか
  四 臨床・実践の方法と認識の方法

第IV部 宗教研究がひらく公共性
第八章 宗教社会学とカルト問題研究
  一 宗教社会学の研究動向
  二 真如苑調査におけるナラティブ研究の進展
  三 統一教会調査におけるトライアンギュレーション
  四 研究の実践性

第九章 カルト問題と公共性
  一 本書第八章までの要約
  二 現代社会における公共性
  三 社会秩序と宗教
  四 カルト批判運動が参画する公共空間

引用文献
あとがき
初出一覧
オウム真理教報道資料(二〇〇四年)
  I 麻原判決関連の新聞(全国紙)特集記事
  II 麻原判決関連の雑誌記事一覧
索引

 キリスト教との関連でも統一教会をはじめとした新宗教はおそらくは重要な問題として扱われるべき事柄である(デリケートではあるが)。キリスト教自体のカルト性、あるいは伝道と自己決定・人権という問題は核心的な問いとなり得るのではないだろうか。
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 これまで本ブログは、2013年度より2015年度まで科学研究費の交付(代表者・芦名定道)を受けて行われた研究を中心に、キリスト教思想研究に関わる情報を発信してきました。しかし、2016年度からの新しい研究プロジェクトに関連した事柄は、主に別のブログで取り扱うことにし、本ブログでは、これ以外の記事について継続的に内容を更新します(新しい科研に関するものも、記事の継続性の観点から一部はこちらでも扱います)。
 なお、本ブログにもしばしばコメントが寄せられますが、多忙のため、原則として応答その他の取り扱いはいたしません。

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