ショック・ドクトリンの現在、過去

 ナオミ・クラインの『ショック・ドクトリン』は日本でも話題になった文献であり、現代の新自由主義経済政治体制への批判を行う上で、重要なものとなっている。
 ミルトン・フリードマンらの提出した経済理論である新自由主義(ネオリベラリズム)は、1980年代以降(ケインズ主義からネオリベへ)、世界の先進国を席巻し、第三世界の経済状況にも大きな影響を及ぼし、現在に至っているものであり、日本の経済政策はこの潮流のなかに存在すると言える(この潮流への反論も一定程度の広がりをもちつつあるが)。そのポイントは、規制緩和による財政削減という政策を前面にもちだすことによって、大企業や富裕層の経済活動を自由にしかつ税負担を軽減する、それによって経済の活力を回復するという主張にある。自民党、民主党の政権交代が行われたが、この新自由主義的経済政策という点では、政権交代はほとんど何ももたらさなかった。
 この政策は、少数のエリートへの富の集中と多くの国民(中産階層以下)における「痛み」という帰結をもたらすことになる(いわゆる格差社会)。したがって、選挙を土台とする民主主義が健全な仕方で存在する場合、この新自由主義的政策の理想的な実現は困難であるということになる。そこで、登場するのが、「ショック・ドクトリン」である。戦争や自然災害という「非常事態」において、社会が混乱し、国民が呆然としている中で、急進的な経済政策を間隙を突くかのように導入するという手法である。
 このショック・ドクトリン(ショック療法)という手法は、東日本大震災以降の被災地で進められている政策の中に読み取ることは困難ではないだろう。TPPも先日引き上げられた消費税も、その論理構造はほぼ同一である。
 しかし、このショック・ドクトリン自体は、古代から支配者が政策実現のために繰り返し用いてきた手法である点に留意すべきである。大災害における社会の麻酔した状況において、通常には導入できない急進的な政策を強行する、これは、支配・権力の基本的な性向とも言える。そして、それを現在になっているのが、ネグリ=ハート的に言えば「帝国」なのである。
 このような視点で、聖書に記録された古代イスラエルからローマ帝国までの歴史を分析したらどうなるだろうか。

 さて、前置きが長くなったが、このナオミ・クラインの『ショック・ドクトリン』が、映画化され、DVD(DVD Book)で昨年発売された。

ナオミ・クライン原作
マイケル・ウィンターボトム/マット・ホワイトクロス監督
『ショック・ドクトリン』
句報社、2013年。

 日本語字幕付、本編82分、ガイドブック(書き下ろし解説)付である。
 ショック・ドクトリンが現代史のさまざまな出来事において行使され、どのような結果を生んできているかは、経済神学といった試みをする場合に不可欠の視点となる。
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