民主主義とは何か

 民主主義は、キリスト教と政治を論じる場合の基本的な事柄である。しかし、民主主義とは何かという問題は、その見かけとは異なりかなりの難問である。これは、民主主義との関わりで論じられるべき、自由主義や社会主義についても当てはまる問題状況である。こうした基礎概念が、きわめて広範な事例について用いられ、厳密な概念規定が困難であること、ここに理論的な難問がある。
 現在、本ブログでの研究テーマとの関わりもあって、京都大学におけるわたくしの特殊講義では、民主主義とキリスト教との関わりを含めた、現代の政治哲学・政治思想、キリスト教的政治論を論じているところであるが、少なくとも次の点に留意している。

・民主主義の成立の場としての古代ギリシャのポリス:ハンナ・アーレントの政治哲学のポイントの一つはここにある。
・聖書の政治思想:現代の聖書学の議論を視野に入れる必要がある。
・キリスト教的政治理論の多様性と民主主義への親近性:バルトの一連の政治的論考などを含めて
・近代の議会制民主主義とプロテスタント・キリスト教との関わり:リンゼイ・テーゼをめぐって
・宗教的寛容をめぐるプロテスタント的理念と歴史的プロテスタンティズムの限界:宗教的寛容論と政教分離論の多様な形態
・近代の政治的状況を規定する要因としての国民国家と資本主義:啓蒙主義はこの文脈にある
・自由主義と民主主義という二つの伝統の区別(原理的にも)と19世紀中頃における自由民主主義の成立:政教分離のシステムを採用した国民国家における自由主義と民主主義の緊張・対立、建前としての普遍的人権を有する個人の自由主義と現実の特殊な「国民」(的同質性)における民主主義。
・人間の多元性と同質性という二つの条件を満たす民主主義とは何か:ムフの多元的で闘技的な民主主義
・シュミット、アーレント、アガンベン、ハーバーマス、ロールズ、ムフ、ベンハビブなど、相互の関係性がきわめて複雑な思想を視野に入れた議論が必要になる。

 なお、自由主義と民主主義、そして自由民主主義の相互関係(自由主義と民主主義の、政治的自由主義と経済的自由主義の区別)については、次の文献が古典的である。

マクファーソン
1.『現代世界の民主主義』
岩波新書、1967年。

序文
第一講 民主主義の新旧の次元
第二講 非自由主義的民主主義 共産主義型
第三講 非自由主義的民主主義 低開発国型
第四講 権力の体制としての自由-民主主義
第五講 最大化の神話
第六講 近い将来における民主主義と人権

訳者あとがき

2.『自由民主主義は生き残れるか』
岩波新書、1978年。

はしがき
I モデルとその先行理論
 一 探究の性格
 二 モデルの使用
 三 自由民主主義の先行理論
II モデルI 防禦的民主主義
 一 民主主義的伝統における断絶
 二 功利主義の基礎
 三 ベンサムの立法の諸目的
 四 政治的必要条件
 五 ジェームズ・ミルのシーソー遊び
 六 市場人にとっての防禦的民主主義
III モデル2 発展的民主主義
 一 モデル2の出現
 二 モデル2A J・S・ミルの発展的民主主義
 三 民主的選挙権は飼い馴らされる
 四 モデル2B 二〇世紀の発展的民主主義
IV モデル3 均衡的民主主義
 一 企業家的市場のアナロジー
 二 モデル3の適切さ
 三 モデル3のつまずき
V モデル4 参加民主主義
 一 この考えの出現
 二 より多くの参加がいま可能か
 三 参加民主主義の諸モデル
 四 自由民主主義としての参加民主主義

文献案内
訳者あとがき
原著者注



スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

LogosOffice

Author:LogosOffice
 これまで本ブログは、2013年度より2015年度まで科学研究費の交付(代表者・芦名定道)を受けて行われた研究を中心に、キリスト教思想研究に関わる情報を発信してきました。しかし、2016年度からの新しい研究プロジェクトに関連した事柄は、主に別のブログで取り扱うことにし、本ブログでは、これ以外の記事について継続的に内容を更新します(新しい科研に関するものも、記事の継続性の観点から一部はこちらでも扱います)。
 なお、本ブログにもしばしばコメントが寄せられますが、多忙のため、原則として応答その他の取り扱いはいたしません。

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
Translation(自動翻訳)
FC2カウンター
カレンダー
09 | 2017/10 | 11
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31 - - - -
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR