共同研究プロジェクト始まる

 John Templeton財団の研究助成を受けた、「科学と宗教の対話」プロジェクト(An Exploratory Assessment of the Science and Religion Dialogue in Japanese Religious Community and Educational Institutions)が、今年度から開始された(前半の3年間の結果・評価を経て後半の3年間へと進むことが目指される)。以前に、わたくしも参加した、Global Perspectives on Science & Spirituality(GPSS)の場合と同様に、プロジェクトの事務局は南山宗教文化研究所に設置され、プロジェクトの代表は、南山大学の金承哲教授である。

 このプロジェクトの特徴は、従来の「科学と宗教の対話」が研究という視点で行われきたのに対して、「教育」(学校・大学、そして教会や寺などにおける)を中心にしていることである。「教育」の場で使用できる、教材の開発もこのプロジェクトの目標であり、しかも日本の宗教状況に即したものが目指されている。画期的・意欲的なプロジェクトであると同時に、この目標の達成は決して容易ではない。
 今後の活動は、次の4つを中心とする。
1) 科学と宗教の対話の現状を調査し、対話を研究レベルで推進すること(Research Seminar。年3回程度)。
2) 宗教共同体や関連の教育機関における「対話」の現状、特に教育カリキュラムを調査・討論すること(Curriculum Discussion Group。年3回程度)。
3) 宗教共同体や関連の教育機関における、聖職者、教師、学生、信徒を対象に調査を実施すること。
4) さまざまな関連データを収集・集積すること。

 昨日は、この第一番目の活動である研究セミナーの第一回が開催された。場所は、京都商工会議所第一会議室であり、プロジェクトのコアメンバーが集まり、プロジェクトの基本的な方向性が確認された。
 その中で、二つの研究発表が行われ(発表は各一時間程度で、それぞれの質疑応答と、最後の全体のディスカッション)、わたくしがその一人として、発表を担当した。二つの発表は次のタイトル。

・芦名定道「宗教と科学と対話の可能性─研究と教育の視点から─」
・佐々木閑(花園大学教授)「科学と仏教の間の2つの接点」

 佐々木先生のお話は、科学と仏教との接点を論ずる前提として、仏教を仏陀の仏教(仏・法・僧の三宝)として厳密に規定した上で(だから「科学と宗教」ではなく、「科学と仏教」となる。この問題は、キリスト教の視点から言えば、今年度前期金4に行ったティリッヒ『組織神学』ドイツ語版・演習において、7月18日の最終回に扱ったテキストの議論にほかならない)、近代以降の現代におたる科学の進展(物理学、生物学、数学)が自我の縮小・相対化・解消と解釈できる点で仏教と接点を有していること、また仏教サンガと科学者共同体(科学と科学技術とは区別されねばならない)が「お布施」に依拠している点で類似性していることが論じされた。ポイントは、仏教における「律」の存在であり、この律を持たない点に日本仏教の特殊性があるということである。

 わたくしの方の話は、キリスト教の視点から、「科学と宗教」の対話の現状(1980年代以降の活発な動向と)と、そも対話の理論的な基盤となる「宗教と科学」関係論が、歴史的視点、理論的視点、倫理的実践的視点において展開されねばならないことを論じた。自分自身のこれまでの研究を自己紹介的に説明しつつ、対話を論じる上で、「対話の非対称性」に留意すべきことを示した。この非対称性については、Stenmarkの議論を紹介し、その前提であるアーレントの思想に遡って説明を行った(人間の複数性という条件下で展開される対話・討論という行為actionとその脆さ)。最後に、このプロジェクトとの関連で、現在休会中の京都大学における「宗教と科学」研究会の再開の可能性と意義を提案した。

 というわけで、久しく休会中であった、「宗教と科学」研究会を、10月をめどに、再開する方向で、現在検討を進めつつあります。いずれこのテーマに関係しそうな方々に声をかけることになると思いますので、その節は、ご協力を、よろしく、お願いいたします。


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 これまで本ブログは、2013年度より2015年度まで科学研究費の交付(代表者・芦名定道)を受けて行われた研究を中心に、キリスト教思想研究に関わる情報を発信してきました。しかし、2016年度からの新しい研究プロジェクトに関連した事柄は、主に別のブログで取り扱うことにし、本ブログでは、これ以外の記事について継続的に内容を更新します(新しい科研に関するものも、記事の継続性の観点から一部はこちらでも扱います)。
 なお、本ブログにもしばしばコメントが寄せられますが、多忙のため、原則として応答その他の取り扱いはいたしません。

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