戦争論、罪と責任

 8月も最終日となり、いよいよ明日から9月です。早速、9月の学会シーズンの準備といったところでしょうか。8月ということで、本ブログでは、戦争に関わる記事を何度か掲載しましたが、本日は、罪と責任に関わる問題を取り上げます。戦争責任という問題は重い問題であり、しかも感情的にもこじれがちな扱いにくい問いです。日本においては、キリスト教諸教派を含めた宗教が、それぞれの太平洋戦争に対する責任を告白・反省してかなりの年月が経過しました。しかし、戦争責任という問題は、こうした宗教諸団体においてどのような意味で了解され継承されているでしょうか。キリスト教に関していえば、この点はすっきりしない状態で徐々に過去の問題になりつつあるように感じられます。
 もちろん、戦争責任は、日本だけの問題ではなく、きわめて思想的な思索を要求する問いであり、たとえば、ドイツの哲学者ヤスパースの一連の著作は、繰り返し取り上げるに値するものと思われます。邦訳でも読める次の文献を、紹介します。

ヤスパース
『戦争の罪を問う』
平凡社、1998年(原著は1946年の出版)。



ドイツにおける精神的状況に関する講義の序説
  大学の現状、新たな自由
   1 語り合うということ
   2 われわれ相互間の著しい相違
   3 以下の論述の骨組

罪の問題
  序説
  A 区別の図式
  B ドイツ人としての問題
    序説
    一 ドイツ人としての罪の区分
    二 弁解の可能性
    三 われわれの罪の清め
      1 清めの回避
        (a)泥仕合
        (b)身を投げ出すか横柄に構えるか
        (c)罪の清めを回避して、それ自体としては正しいが。
          罪の問題にとっては枝葉末節の特殊問題にのがれる態度
        (d)罪の清め回避して一般問題にのがれる態度
      2 清めの道

一九六二年のあとがき
訳者あとがき
解説 罪責の内に苦悩している理性 ヤスパースとハイデッガーの悲劇 (福井一光)
解説 戦後的思考の原型 (加藤典洋)

 罪と責任、弁解と回避について、ざまざまな論点を区分整理しながら、問いを突き詰めようとする態度が印象的です。どうようの作業は、現在の日本でも必要なはずです。歴史修正主義は、弁解の回避、清めの回避の諸区分のいずれかに分類可能です。70年近く前にヤスパースが行った作業がいまだ果たされない現実、これが日本である。
 こうした思索の背後には、「真理→自由→平和」という哲学的思惟が存在します。これについては、次の著作。

ヤスパース
『真理・自由・平和』(ヤスパース選集21)
思想社、1966年(原著は1958年)。

真理、自由、平和
  一 序
  二 平和の諸前提──真理→自由→平和
  三 自由世界の非真理
  四 真理とドイツ人
  五 ドイツ的実体の自覚へ
  六 著述家の使命
  七 結語

自由と権威
  一 今日における自由と権威の問題
  二 権威の本質の概観
  三 権威開明の方法
  四 現代の権威の診断
  五 誤れる権威の治療処置
  六 終わりに

集団と個人
  一 集団と個人との両極性と集団の内部における両極性
  二 双方の両極性と技術
  三 現代の神話と本来の個人

全体主義との闘争において
  一 全体主義
  二 ドイツにおえる全体主義の発展
  三 政治的認識の特色
  四 全体主義の地盤
  五 自己喪失・欺瞞・不安──全体主義の原理
  六 自由のための闘争

訳者のあとがき (斎藤武雄)
  一 ヤスパース哲学の体系における政治哲学の位置と意味
  二 解説
  三 ヤスパースについて

 ヤスパースの政治哲学は、カント、シェーラー、アーレントなどの文脈で再読したい内容です。さらに、ティリッヒとを介してキリスト教政治思想との関連づけることは十分に可能である。
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