キリスト教思想と哲学2

 本ブログでも、すでに紹介したように、現在、新しいアリストテレス全集(岩波書店)の刊行事業が進行中である。8月には、全集15として『ニコマコス倫理学』が刊行された。全集全体の編集委員の一人である神崎繁さんの訳である。

 本ブログでは、前回は「キリスト教思想と哲学」の初回として、まずカントを取り上げたが、現代の倫理思想・政治思想において、このカント共に、またカントとも対比される仕方で、重要な理論的源泉となっているのが、アリストテレス、特に『ニコマコス倫理学』であることは、忘れることができない。自由主義に対抗して展開されている共同体主義を理解するには、アリストテレスは不可欠の前提の一つである。
 もちろん、アリストテレスとキリスト教思想との関わりは、現代に始まったものではなく、そもそもキリスト教神学が誕生した古代において、そして何と言っても、中世のスコラ哲学において、問われるべき大きな問題群をなしている(波多野宗教哲学も、『宗教哲学』から『宗教哲学序論』への展開において、この点が意識されていることがわかる)。

 現代のキリスト教思想の理論的な問題点の一つは、自らの思想的営みの全体に存在する長い哲学的伝統を十分に理解できないままに、急速に展開する諸問題に対応しようとするところに認められる。問題状況の急速な展開と共に、キリスト教思想がとめどもなく拡散してゆくことの原因の一つはこうした現代キリスト教思想の特性に由来する。
 本格的なキリスト教思想の研究を志すならば、カント、アリストテレスとの一定の取り組みは不可欠のステップと思われる。新しい問題状況をフォローすると同時に、気の長い持続的な思想研究を継続する、この両面が必要である。
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 これまで本ブログは、2013年度より2015年度まで科学研究費の交付(代表者・芦名定道)を受けて行われた研究を中心に、キリスト教思想研究に関わる情報を発信してきました。しかし、2016年度からの新しい研究プロジェクトに関連した事柄は、主に別のブログで取り扱うことにし、本ブログでは、これ以外の記事について継続的に内容を更新します(新しい科研に関するものも、記事の継続性の観点から一部はこちらでも扱います)。
 なお、本ブログにもしばしばコメントが寄せられますが、多忙のため、原則として応答その他の取り扱いはいたしません。

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