キリスト教と福祉

 キリスト教と近代の福祉とが密接な関わりにあること、特に近代日本の福祉にキリスト教が大きな貢献をおこなってきたことは、しばしば指摘される通りである。今年の日本宗教学会学術大会の公開シンポジウムで、パネリストの木原活信(「社会福祉とスピリチュアリティ」)は、この点を確認した上で、太平洋戦争敗戦以降、政教分離という観点からの国家による福祉が推進される中で、キリスト教と日本の福祉との関わりは後退することになったと指摘した。いわゆる戦後の福祉国家構想である。しかし、その後、高度経済成長の終焉とバブル崩壊を経て、急速な高齢化の進展などによって国家による福祉の限界が意識されることになる。介護保険導入にもかかわらず、介護の産業化も多くの問題を抱えたままである。こうして福祉は、再度、国民の(つまり家族の)責任、自己へ責任へと回帰することになる。
 地域コミュニティーの消滅というのは地方の問題にとどまらず、東京の現実である(日本経済新聞Web、「老いる首都、団地は限界集落 介護の将来、「広域」で描く」)。

 こうした現状において、最近、「キリスト教と地域福祉」という問題に本格的に取り組むことの必要性が意識されるようになってきている。この動向には、キリスト教教育機関も大きく関与している。再度、「キリスト教と地域福祉」を考え実践する場合に、明治期以降のキリスト教の先駆的働きの再評価と、太平洋戦争後状況下での福祉への取り組みの掘り起こしが、重要な作業となるように思われる。

 東京都日野市で、1960年代から80、90年代にかけて、教会(日野台教会)を中心に地域の障害者福祉に担ったものに、「やすらぎ会」の活動がある。会の中心になったのが、上亨牧師(わたくしの叔父)と石川左門氏(息子の正一さんが難病筋ジストロフィー患者)であったが、この会は教会をはるかに越えて、地域に、日野市心身障害者を守る会、障害幼児の通園施設「希望の家」、愛隣舎などを生み出してゆくことになる。
 この「やすらぎ会」の会報「やすらぎ」の復刻版が、このたび、上恵子夫人(わたくしの叔母)によって刊行された。

上恵子(企画者)
『やすらぎ《復刻版》』
2014年8月31日。

・「私たちの声 発題として〈ちえおくれの子を持つ親の立場から〉」(上亨)
・「やすらぎ」No.1(1963.1)~No.42(1985.5.11)
・「上亨 召天10周年記念原稿」
・「御挨拶」(上亨)

 この復刻版は寄贈いただいたものがわたくしの手元にあるので、関心のあるかはお見せすることができる。
 最後に収録された「御挨拶」に次のような言葉がある。

「やすらぎ会の目的とするものは福祉でありますが信仰です。障害者の問題は深刻な悲しい問題です。それだけに信仰でなくては解決できないものです。」
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