キュンクとキリスト教思想史

 ハンス・キュンクは、20世紀後半を代表するカトリック神学者の一人であり、現在に至るまで、発言・発信を続けている。若い頃のヘーゲル論から、教会論と教皇庁との軋轢、カトリック神学部からの追放などを経て、宗教間対話や世界倫理の提唱など、その足跡は波乱に満ちつつも、確かなものがある。
 こうした思想家を理解する上での重要な手がかりは、その思想家が歴史・思想史をどのように理解しているかという点に注目することである。バルト、ティリッなどは、そうしたアプローチが有効な思想家であるが、キュンクにも同様かもしれない。今回紹介する文献は、最近邦訳が出版されたものであるが、キュンクの見たキリスト教思想が鮮やかに描かれている。いずれ、本ブログとは別の場で、内容の紹介を行うことになっているが、ここでもそれに先行して、触れておきたい。

ハンス・キュンク
『キリスト教思想の形成者たち──パウロからカール・バルトまで』
新教出版社、2014年10月。

序──神学への小さな入門書

パウロ──キリスト教の世界宗教への夜明け
オリゲネス──古代とキリスト教精神の偉大な統合
アウグスティヌス──ラテン的・西洋的神学の父
トマス・アクィナス──大学の学問と教皇の宮廷神学
マルティン・ルター──パラダイム転換の古典的事例としての福音への回帰
フリードリヒ・シュライエルマッハー──近代の薄明の中の神学
カール・バルト──ポストモダンへの移行における神学

エピローグ──時代にかなった神学への指針

訳者あとがき

 取り上げられる思想家は選び抜かれ厳選された少数の者であるが、キュンクがキリスト教思想史を時代状況との相関において、パラダイムの転換として理解していることをよく示している。これらの思想家は、キリスト教思想のどの時期どの領域を専門にするにせよ、研究者は自らの思索の場において了解しておいてしかるべき思想家である(謙遜でよく知らない、と言うのはわかるが、ほんとうに分からないというのはおそらく論外)。キュンクの叙述は、年表や注を加え、簡潔ではあるが、ゆきとどいた内容である。確かに入門書として優れているが、個々の思想家を同時代の様々な思想家を視野に入れつつ描いており、キュンク独自の視点が示されている。たとえば、バルトを論じる中で、ボンヘッファー、ティリッヒ、ブルンナー、ブルトマンらに触れることをキュンクは忘れていない。バルト理解にとって、これらの思想家との関わりが重要な位置を占めていることから考えれば、当然のことではあるが。
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 これまで本ブログは、2013年度より2015年度まで科学研究費の交付(代表者・芦名定道)を受けて行われた研究を中心に、キリスト教思想研究に関わる情報を発信してきました。しかし、2016年度からの新しい研究プロジェクトに関連した事柄は、主に別のブログで取り扱うことにし、本ブログでは、これ以外の記事について継続的に内容を更新します(新しい科研に関するものも、記事の継続性の観点から一部はこちらでも扱います)。
 なお、本ブログにもしばしばコメントが寄せられますが、多忙のため、原則として応答その他の取り扱いはいたしません。

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