再度、翻訳

 本ブログでは、翻訳の問題をかなりの回数、取り上げてきた。おそらく、一度、紹介はしたようにも記憶しているが、現在、執筆中の論文の関係で、改めて、読み直した、リクールの翻訳論を紹介し直したい。
 リクールの翻訳論とは、1998年10月のパリのプロテスタント神学部の開講講義、Esprit («La traduction, un choix chlturel»), juin 1999, p.8-19.であり、昨年、次のリクールの論集において邦訳(「翻訳という範型(パラダイム)」)された。

ポール・リクール
『愛と正義』(ポール・リクール聖書論集2)
新教出版社、2014年。

 リクールの翻訳論は、彼の哲学思想(言語、自己、他者、理解)から翻訳を論じるものであり、リクールの思想研究にとって興味深い小論であるが、現代の翻訳論(こちらは多くが大著)を的確に論じているという点で、翻訳についての哲学的な議論にアプローチする上で、きわめて有益な内容になっている。リクールの著作は、こうした観点からも優れた内容のものが少なくない。リクールからそれぞれのテーマへ進むというのは、研究計画に見通しを付ける上で堅実な方法と言える。
 特に、リクールが取り上げる翻訳論で注目すべきは、次の二つであり、すでに邦訳が存在する(翻訳論は日本の現代思想において注目されるテーマの一つである)。

・アントワーヌ・ベルマン『他者という試練──ロマン主義ドイツの文化と翻訳』みすず書房、2008年(原書1984年)
・ジョージ・スタイナー『バベルの後に──言葉と翻訳の諸相 上下』法政大学出版局、1999/2009年(原書初版1975年)

 もちろん、翻訳論ということならば、そのほかにも、ウンベルト・エコ『エコの翻訳論──エコの翻訳論とエコ作品の翻訳論』(而立書房、1999年)、アンソニー・ピム『翻訳理論の探求』(みすず書房、2010年)などが挙げられるべきかもしれない。
 翻訳論が共通の思想テーマになるということは、流行と言えば流行ではあるが、しかし、翻訳が現代思想・文化でいかなる位置を占めるか、その問題の広がりを考えれば、そこに注目すべき理由がある、というべきである。「単なる象徴ではない」と言われるのと同様に、「単なる翻訳ではない」となるだろうか。
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