リクールの翻訳論2

 La traduction, un choix culturel (Esprit, juin 1999,p.8-19)
 「翻訳という範型」(1998年10月パリのプロテスタント神学部での開講講義)
の続きです。

(2)実践的二者択一──忠実さ対裏切り──へ
・バベル神話(創世記11.1-9)の再解釈
  「非難せず確認するもの」、「言語の分離の歴史を仕上げる」(214)
  創世記10.31,32では、「言語の複数性が事実上の所与とみなされている」
    「事柄を好意的に見る、単なる好奇心」
     ↓
    「使命」=「人間の活動が継続的していけるためになすべきこと」
       アーレント『人間の条件』
   「いかなる不平も、いかなる嘆きも、いかなる糾弾もない」(217)
    「この生の現実から、翻訳しよう!」

・翻訳する欲望、翻訳願望
  ベルマン『他者という試練』:ドイツの思想家を鼓舞したもの
   〈聖書〉の翻訳者ルター:聖書を「ドイツ語化」しようとする彼の意志
     「自国語の地平の拡大」「教養」
      ↓
   「よい翻訳の絶対的基準はない」:「忠実さ/裏切りの二律背反」
     出発点のテクストと到達点のテクストを比較するための「第三のテクスト」は存在しない。
      ↓
   「よい翻訳とは、論証可能な意味の同一性にはもとづいていず、推定される等価性
    をめざしうるのみ」「同一性なき等価性」
      ↓
   「再翻訳」できる

・「異国的なものの試練」
 「完全翻訳の夢を放棄すること」
 「自国のものと、異国のものとの間ののりこえられない違いを認めること」
   ローゼンツヴァイク「翻訳するとは二人の主人に仕えること」
   シュライアマハー「読者を著者のもとにつれてゆく」「著者を読者のもとにつれてゆく」
   フロイト「想起の作業と喪の作業」(220)
「完全な翻訳という理想そのものの断念」
   「異国的なもの」:われわれの言語的アイデンティティへの脅威
                 → 恐怖、憎悪に動機づけられた内面の抵抗
   翻訳は、この内的な抵抗の克服

・「同一言語共同体内部での翻訳の問題」「倫理的問題」(221)
 バベル以降では「理解することは翻訳することなり」(222)
 考えることは魂のそれ自身との対話(プラトン)
     ↓
 誤解、無理解の現象。これが解釈を引き起こす(シュライアマハー)
   「完全言語と生きた言語との隔たりの理由は、無理解の原因と正確に同じ」(222)

・「同じことを別様に言うことはつねに可能」=言語活動の再帰性(223)
  「理解されなかった議論を言い直すとき」
     ↓
  「同じ意図の二つの言い方を等価にするとみなされる、発見されえない同一の意味と
  いう謎」
  「これには際限がない」「しかも説明することで、しばしば誤解を深めてしまう」
  と同時に、「内的翻訳」と「外的翻訳」との間が架橋される。
  「同じ言語共同体内部で、理解には少なくとも二人の対話者を必要とする」
       「他者であり」「近しい他者」「日常接している他者」(サール)
          「どんな他者のうちにも外国人の部分がある」(223)

・語、文、テクスト→「レトリック」「説得するという真摯な意図を犠牲にした誘惑や威嚇」(226)

・「思想と言語、霊と文字の間の複雑な関係について、また意訳か直訳かの果てしない問題」「ある言語から他の言語への翻訳をめぐるこうした厄介な問題のすべては、その起源を言語の自己再帰性」(226)にもっている。
スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

LogosOffice

Author:LogosOffice
 これまで本ブログは、2013年度より2015年度まで科学研究費の交付(代表者・芦名定道)を受けて行われた研究を中心に、キリスト教思想研究に関わる情報を発信してきました。しかし、2016年度からの新しい研究プロジェクトに関連した事柄は、主に別のブログで取り扱うことにし、本ブログでは、これ以外の記事について継続的に内容を更新します(新しい科研に関するものも、記事の継続性の観点から一部はこちらでも扱います)。
 なお、本ブログにもしばしばコメントが寄せられますが、多忙のため、原則として応答その他の取り扱いはいたしません。

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
Translation(自動翻訳)
FC2カウンター
カレンダー
09 | 2017/10 | 11
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31 - - - -
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR