仏教から見た、日本の宗教状況

 昨年発表された日本創成会議の「消滅可能都市」は、多くの人々が漠然と感じていた現実・近未来(2040年には全国自治体の49.8%が消滅する可能性がある)について、具体的な実態を示すものであり、大きな衝撃を与えた。この衝撃は、宗教界にとっても、他人事ではなく、まさにその意味するところは、日本の宗教にとっての最大の問題と言ってもよいだろう。日本の伝統宗教は、地域と家族共同体に基盤を有する仕方で存立しており、自治体の消滅は宗教の消滅と大きく重ならざるを得ないからである。そして、この事態はキリスト教にとっても深刻である。地方における教会消滅、これは決して遠い未来のことではなく、近未来の、そして現在進行中の事態である。
 こうした事態の背後には、「人口動態」という基本構造が存在する。宗教も人間の活動である限り、「人口動態」の制約の外に存在することはできないのである。
 以上の状況において、仏教の現時点での動向を調査分析した著書が刊行された。筆者は、京都のお寺の生まれで、僧職を有し、経済記者をされているとのことであり、この著書には、僧侶にしてジャーナリストという著者の立ち位置が現れている。三章の歴史的な分析は、キリスト教との関わりでも興味深い。

鵜飼秀徳
『寺院消滅──失われる「地方」と「宗教」』
日経BP社、2015年。

はじめに

一章 地方から寺と墓が消える
  ・島を去る住職、来る住職 ある在家出身僧侶の奮闘記
  ・地方と都市を彷徨う墓地 福澤諭吉のミイラと改葬
  ・世界遺産の恩恵はどこへ 限界集落の空き寺
  ・もう住職はいらない 空き寺で起きる仏像盗難 
  ・再建できない被災寺院 政教分離が復興を阻む
  ・絶滅寸前の尼僧 尼寺に拾われて
  賢人に聞く1:宗教は「時代遅れ」でもいい(玄侑宗久)

二章 住職たちの挑戦
  ・「ゆうパック」で遺骨を送る時代
  ・火葬場で読経一〇分、増える「直送」
  ・「本当に感動する葬儀をやりたい」
  ・タマニュータウンにできた”民家”寺院
  ・企業人が仏教界を立て直し
  賢人に聞く2:二五年後に三五%の宗教法人が消える(石井研士)

三章 宗教崩壊の歴史を振り返る
  ・寺は消えてもいいのか
  ・鹿児島が迎えた寺院・僧侶の「完全消滅」
  ・国家と宗教の争い
  ・戦争に加担した日本仏教
  ・農地改革に翻弄された寺
  ・寺がサイドビジネスに手を出す理由
  賢人に聞く3:「僧侶に「清貧さ」は必要か」(戸松義晴)

四章 仏教教団の調査報告
  序論/浄土宗/曹洞宗/浄土真宗本願寺派/日蓮宗/臨済宗妙心寺派

日本仏教史
おわりに

解説(佐藤優)
参考文献
取材協力者

 二番の目の賢人である、石井さんの次の言葉は重い。
「基本的には宗教というのは精神文化の中核に位置しています。だから日本の宗教団体がダメになっていくというのは、恐らくわれわれの文化がダメになっていく現れ、指標なんだと思います。」(168)
 
スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

LogosOffice

Author:LogosOffice
 これまで本ブログは、2013年度より2015年度まで科学研究費の交付(代表者・芦名定道)を受けて行われた研究を中心に、キリスト教思想研究に関わる情報を発信してきました。しかし、2016年度からの新しい研究プロジェクトに関連した事柄は、主に別のブログで取り扱うことにし、本ブログでは、これ以外の記事について継続的に内容を更新します(新しい科研に関するものも、記事の継続性の観点から一部はこちらでも扱います)。
 なお、本ブログにもしばしばコメントが寄せられますが、多忙のため、原則として応答その他の取り扱いはいたしません。

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
Translation(自動翻訳)
FC2カウンター
カレンダー
09 | 2017/10 | 11
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31 - - - -
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR