シュライアマハー研究に向けて

 1980年代以降、シュライアマハー研究は、ルネサンスと呼びうる活発な状況にある。しかし、日本では、この動きは十分に捉え切れていない。その理由の一つは、シュライアマハーの基礎文献の信頼できる邦訳が揃っていないことにある。『宗教論』については、確かに複数の邦訳が存在するが、あとはと言えば、ほんの僅かである。少なくとも、『信仰論』の邦訳が存在しないことには、シュライアマハー研究に挑戦する新しい研究者も生まれにくい、研究者の裾野が広がらない、という現状を打開できないだろう。
 この日本の困難な状況下で、『信仰論』の理解にとって重要な「リュッケ書簡」(これは回覧書簡としていわば公の性格を有するものであり、『信仰論』初版の出版後の批判に応えることによって第二版の準備を行うという意図をもっている)がドイツ語原文からの優れた邦訳として出版された。これは、わたくしも、学生時代に、その当時関西学院大学神学部で組織神学を担当されていた高森昭先生が京都大学で特殊講義の授業を担当された際に、学んだ文献(Schleiermacher-Auswahl mit einem Nachwort von Karl Barth, に所収)であり、その点でも、懐かしいものである。訳者は、京都大学キリスト教学の先輩である安酸敏眞さん(北海学園大学人文学部教授)である。安酸さんには、来月9月7日(月)~11日(金)の期間に、京都大学文学研究科での集中講義も担当をお願いしている。

F.D.E.シュライエルマハー著/安酸敏眞訳
『『キリスト教信仰』の弁証──『信仰論』に関するリュッケ宛ての二通の書簡』
知泉書簡、2015年。

凡例

第一の書簡
  書簡の目的/間違った批判に対する態度/知識と敬虔の関係/依存感情についての誤解/神意識/贖罪者としてのキリストに関する逸脱/汎神論であるとの告発/神学と哲学の関係

第二の書簡
  書簡の目的/『信仰論』の再構成に関する問い/現在の構造が引き起こしたいろいろな誤解/再編成の利点/再編成しないとの決断/自然科学によって唱えられる異議/近代の世界観にかんがみてのキリスト論/永遠の契約/歴史学によって唱えられた異議/合理主義者を教会に包摂するためのキリスト教の定義づけ/教義学体系化の本質/教義学的命題の三つの形式/文体的な修正/序論における諸変更/教義学と哲学の言語/特殊教理の取り扱い/宗教と哲学の関係/合理主義と趙合理主義の抗争

解題 シュライアマハーと『キリスト教信仰』

訳者あとがき

索引

 大きさから見ても、夏の間に読むのにピッタリの重要文献。関心が生じれば、ドイツ語原文を読み、そして『信仰論』へ。
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 これまで本ブログは、2013年度より2015年度まで科学研究費の交付(代表者・芦名定道)を受けて行われた研究を中心に、キリスト教思想研究に関わる情報を発信してきました。しかし、2016年度からの新しい研究プロジェクトに関連した事柄は、主に別のブログで取り扱うことにし、本ブログでは、これ以外の記事について継続的に内容を更新します(新しい科研に関するものも、記事の継続性の観点から一部はこちらでも扱います)。
 なお、本ブログにもしばしばコメントが寄せられますが、多忙のため、原則として応答その他の取り扱いはいたしません。

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