ティリッヒ歿後50年を記念して

 ティリッヒは20世紀を代表するプロテスタント神学者・宗教哲学者の一人に数えられる思想家であり、本ブログでは、比較的お馴染みの人物である。ティリッヒが逝去したのは、1965年10月22日であり、今年が歿後50年にあたる。
 わたくしが所属する京都大学キリスト教学研究室は、さまざまな点で、ティリッヒと関わりのある研究室である。
 
 初代の波多野精一は、ティリッヒと同時代人であり、思想的にもきわめて近い宗教哲学者であったが、ティリッヒへの言及などはほとんど確認できない(むしろ、確認できないことが不思議なところである。波多野のもとで、講師を務めた松村克己になると、ティリッヒについての論文を残しており、関わりは明瞭になる)。

 ティリッヒとの関連が明確になるのは、波多野の次の教授となった有賀鐵太郎であり、有賀は同志社時代にティリッヒを演習で取り上げていたとの証言があり、またハヤトロギアを展開した『キリスト教思想における存在論の問題』では、存在論の代表者としてのティリッヒについてかなり立ち入った議論を行っている。特に、ティリッヒが1960年の来日の際して、京都大学で講演を行ったときに、有賀は通訳を行い、『ティリッヒ博士講演集 文化と宗教』(岩波書店、1962年)では、武藤一雄を始め、キリスト教学研究室の関係者が関与している。
 ティリッヒへの積極的な言及という点では、続く教授、武藤一雄の場合も同様であり、論考の随所でティリッヒへの本格的な分析がなされている(特に、『神学と宗教哲学との間』で)。武藤はティリッヒ研究者とも言いうる面を有している。武藤一雄の時代に、白水社から『ティリッヒ著作集』が刊行されたが、この著作集を担った翻訳者には、武藤一雄と、続く研究室の教授である、水垣渉、片柳栄一らが含まれている。
 この武藤一雄から水垣渉、片柳栄一にかけてのキリスト教学研究室の出身者には、ティリッヒについて本格的な議論を行っている方々が含まれている。具体的には、今井晋、森田雄三郎、金子晴勇、田辺明子らの諸氏である。

 こうした研究室の伝統の元で、ティリッヒについての博士論文を書く研究者がキリスト教学研究室から現れるようになり(わたくしもその一人であるが)、特に課程博士制度が定着以降は、ティリッヒにかかわる博士論文は、キリスト教学研究室に関連した博士論文の中で、もっとも目立つテーマとなっている(4人)。特筆すべきは、1999年度~2006年度までティリッヒに共同研究を行った「ティリッヒ研究会」であり、『ティリッヒ研究』は、11号を数えた。

 以上の概観からもわかるように、京都大学キリスト教学研究室は、決してティリッヒ研究に特化した研究室でないことは当然であるが、日本におけるティリッヒ研究と密接な関わりを有していることも否定できないのである。こうした研究室であるため、ティリッヒ歿後50年に際して、何か記念になることを企画するのは、自然なことかもしれない。

 現在、2016年3月刊行予定の『キリスト教学研究室紀要』第四号で、ささやかなものではあるが、「ティリッヒ特集」を企画している。キリスト教学研究室の出身の方に、すでに論文執筆を依頼中であり、特集という言える形を整えることはできそうな見通しである。
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 これまで本ブログは、2013年度より2015年度まで科学研究費の交付(代表者・芦名定道)を受けて行われた研究を中心に、キリスト教思想研究に関わる情報を発信してきました。しかし、2016年度からの新しい研究プロジェクトに関連した事柄は、主に別のブログで取り扱うことにし、本ブログでは、これ以外の記事について継続的に内容を更新します(新しい科研に関するものも、記事の継続性の観点から一部はこちらでも扱います)。
 なお、本ブログにもしばしばコメントが寄せられますが、多忙のため、原則として応答その他の取り扱いはいたしません。

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