自然神学・聖書・社会科学

 本ブログの目的は、自然神学を社会科学へと拡張するという作業を、聖書解釈という媒介によって遂行する試みであるが、これについては、いつくかのポイントを示すことができる。

・なぜ社会科学なのか。
 本ブログでは、東アジアという思想圏を念頭に議論を進めているわけであるが、この思想圏においては、古典的なキリスト教自然神学に展開の場を提供した古代地中海世界とは異なる思想状況が存在する。それは、古代地中海世界のような宇宙論タイプの宗教の共有という状況が、東アジアでは顕著ではなく、古典的なキリスト教自然神学とは別の問題設定に注目する必要があるという点である。この点で、注目すべきは、東アジアにおける儒教の存在である。これは、しばしば儒教文化圏といわれる東アジアの状況であるが、これを考慮するならば、キリスト教と東アジアとの関連性は宇宙論的な宗教ではなく、「家族と国家、家族から国家」という問題設定に即して行うことが必要あるとの見通しを得ることができる。そして、「家族と国家、家族から国家」という問題設定は、自然科学ではなく、むしろ社会科学を直接の視野に入れることを要求するのである。したがって、自然科学的な問題設定に基づく古典的なキリスト教神学を社会科学へと拡張する作業が必要なるのである。

・自然科学や社会科学とは別の視点
 しかし、自然科学あるいは社会科学のいずれを自然神学の典型として選択するのかという論点とは別に、より根本的な議論をすることも必要であり、また可能である。それは、科学や知において問われる「真理」自体である。真理論というまさに古典的な哲学的問いが、ここで重要や役割を果たし、それが聖書解釈とも内容的なレベルを含めて接続することになるのである。
 たとえば、聖書的な真理論として、はずせないのは、ヨハネによる福音書の真理論であろう。

「8:31 イエスは、御自分を信じたユダヤ人たちに言われた。「わたしの言葉にとどまるならば、あなたたちは本当にわたしの弟子である。32 あなたたちは真理を知り、真理はあなたたちを自由にする。」33 すると、彼らは言った。「わたしたちはアブラハムの子孫です。今までだれかの奴隷になったことはありません。『あなたたちは自由になる』とどうして言われるのですか。」34 イエスはお答えになった。「はっきり言っておく。罪を犯す者はだれでも罪の奴隷である。35 奴隷は家にいつまでもいるわけにはいかないが、子はいつまでもいる。36 だから、もし子があなたたちを自由にすれば、あなたたちは本当に自由になる。37 あなたたちがアブラハムの子孫だということは、分かっている。だが、あなたたちはわたしを殺そうとしている。わたしの言葉を受け入れないからである。38 わたしは父のもとで見たことを話している。ところが、あなたたちは父から聞いたことを行っている。」
「14:6 イエスは言われた。「わたしは道であり、真理であり、命である。わたしを通らなければ、だれも父のもとに行くことができない。」

 「真理」は、これらの聖書箇所のキーワードであり、ヨハネ福音書は、独特の真理論を内包しているという議論は決して荒唐無稽ではない。すぐに気がつく範囲でも、真理とは、イエス自身であり、それは人間の「自由」(罪の奴隷状態から解放)に関わることがわかる。問われているのは、社会的人間関係を典型とする実践的真理であり、「真理」「あなたたち」「自由にする」は、「イエスは人間の解放者=救い主」であるというキリスト教的メッセージの核心を、ここに確認することができる。真理は、社会的実践レベルにおいて具体的な人間関係において解放機能を果たすものであり、それは、イエスという歴史的出来事において実現したという議論がここに見出される。これは、自然科学における真理と無関係ではないものの、自然科学を典型とする知とは別のタイプの知に即して展開されるにふさわしいものと思われる。
 自然神学の社会科学への拡張は、キリスト教的知・真理論自体の動態に属していると言えよう。ここが重要なポイントである。
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 これまで本ブログは、2013年度より2015年度まで科学研究費の交付(代表者・芦名定道)を受けて行われた研究を中心に、キリスト教思想研究に関わる情報を発信してきました。しかし、2016年度からの新しい研究プロジェクトに関連した事柄は、主に別のブログで取り扱うことにし、本ブログでは、これ以外の記事について継続的に内容を更新します(新しい科研に関するものも、記事の継続性の観点から一部はこちらでも扱います)。
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