日本キリスト教思想史研究、方法論5

 日本キリスト教思想史研究は、「日本」(宗教の宗教文化を含め、日本の歴史的文脈・地平)と「キリスト教」(キリスト教思想史全般の文脈・地平)、そして「の」(多様な問題設定を可能にする相互交流の場・融合)のそれぞれを視野に入れることが方法論的に必要になる。ここまでは、すでに論じたところである。その上で、さらに方法論的に問題は「思想」あるいは「思想史」である。
 思想・思想史については、一方で観念史として提示され得る思想の内的な連関・歴史的展開が存在するが(ハルナックの教理史のこうした特質を有する)、それに対して、20世紀の思想史研究は、思想を歴史的社会的コンテクストで捉える方向に展開し(トレルチの社会教説)、それは近年の社会史的な思想研究にかなりのウェートをかける方向性を示している。主にテキストにおいて確認可能な思想の担い手の内的問題意識・問題設定や思想の論理性に即した研究と、思想の担い手の社会的文脈との二つのものはいずれも、思想を理解する上で重要であり、決してあれかこれかの関係ではない。問題は、この関係性にどのように方法論的にアプローチするかである。
 今回注目したいのは、こうした思想史研究にとって鍵となるものの一つとして、「評伝研究」をあげることができる点である。思想家の生涯をその歴史的社会的文脈で描き、それを著作を結びつけ、著作に現れた思想を概観する、こうした評伝研究は、思想研究の土台であり、すぐれた評伝の存在が思想研究にとっていかに有益であるかは、思想研究に関わった者ならばある程度了解いただけるであろう。
 日本キリスト教思想研究に関連しても、すぐれた評伝研究の存在を指摘することができる。

まず、佐藤敏夫による次の著作。
『高倉徳太郎とその時代』新教出版社、1983年。
『植村正久』(植村正久とその弟子たち1)新教出版社、1999年。

そして、最近次々に出版された、雨宮栄一の一連の評伝研究(いずれも、新教出版社)。
 ・『青春の賀川豊彦』『貧しい人々と賀川豊彦』『暗い谷間の賀川豊彦』2003-2006年。
 ・『若き植村正久』『戦う植村正久』『牧師植村正久』2007-2009年。
 ・『評伝 高倉徳太郎 上』『評伝 高倉徳太郎 下』2010-2011年。
 ・『評伝井上良雄─キリストの証人』2012年。

 なお、9月の新刊案内として、關岡一成『海老名弾正 その生涯と思想』(教文館)を目にしたが、600頁近い著書であり、海老名の評伝研究として期待される。
 
スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

LogosOffice

Author:LogosOffice
 これまで本ブログは、2013年度より2015年度まで科学研究費の交付(代表者・芦名定道)を受けて行われた研究を中心に、キリスト教思想研究に関わる情報を発信してきました。しかし、2016年度からの新しい研究プロジェクトに関連した事柄は、主に別のブログで取り扱うことにし、本ブログでは、これ以外の記事について継続的に内容を更新します(新しい科研に関するものも、記事の継続性の観点から一部はこちらでも扱います)。
 なお、本ブログにもしばしばコメントが寄せられますが、多忙のため、原則として応答その他の取り扱いはいたしません。

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
Translation(自動翻訳)
FC2カウンター
カレンダー
09 | 2017/10 | 11
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31 - - - -
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR