『図書』より

『図書』2015.11(岩波書店)が届きました。いくつかのエッセイを紹介します。

1.伊能邦武「現代の「多様性」とは何か」
 10月から刊行の『岩波講座 現代』(全九巻)を念頭に、「現代」をその「多様性」という視点から論じたエッセイである。50年前の『岩波講座 現代』(全14巻、別巻二冊)に言及しつつ、「私たちの現代意識は、この五〇年の間に大きな変化を見たのだろうか」と問いが立てられる。そして、議論は、「さまざまな世界認識の極度の多様性」、「それらの間の強烈な競合、対決、抗争」、「その全地球規模での展開」という三点から、「われわれの現代」の特徴にかんするスケッチがなされる。

 ここの論点の詳細は、実際にお読みいただくこととして、哲学者にふさわしい洞察が示されている。伊藤さんのエッセイを久しぶりに拝見した。

2.池内了「緊張から弛緩へ──寅彦の泣き笑い論」
 寺田寅彦が吉村冬彦というペンネームで書いた「夏子」(妻)に対する思いが込められた文章から、寅彦の「泣き笑い論」へと展開されたエッセイ。

 自然科学者によって寺田寅彦が論じられることは、しばしば目にするものであるが、寅彦の思いに沈潜した印象的な文章である。

3.高村薫:作家的覚書「二〇一五年秋を記憶する」
「集団的自衛権行使の道を開く安保関連法が成立」
「少し前まではこんな時代がほんとうに来るとは想像しなかった自分」
「戦争を放棄した憲法が踏みにじられた大騒ぎしているのは、外から見れば未だ十分に平和であることの証ではあるだろう」
・・・
「こうして国際社会の協調性が失われ、民主主義が弱り、グローバル世界の安全に不可欠の世界経済も低調になったこの秋、日本でもついに「戦後」が終わったのだ。」

 戦後の終わりという認識から、何処へ向かうのか。これまでも「転換点」という時代認識はしばしば語られたが、この秋、個人からさまざまな共同体まで、これまでとは質的に異なった「日本」と「世界」への向かい合いの自覚・覚悟が必要ということだろう。
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