ティリッヒの新しい評伝研究

 思想家の思想とその生活(社会・時代)との関係は、密接な関わりがあると同時に、単純には連続しないという複雑な関わりにある。ティリッヒの場合も同様であり、それを繋ぐ役割を果たすのが、評伝研究である。ティリッヒの評伝研究としては、従来パウクのものが有名であり、参照されてきた。しかし、パウクの評伝研究には、これまでもさまざまな不備が指摘されてきており、新しい、少なくともパウクのものを補足・修正する研究が試みられてきた。こうした研究は、現在進行中と言われる、グラーフによる研究によって、大幅に改善されることが期待されているが、それに先駆けて、日本において、ティリッヒの評伝研究が刊行された。これまで、関連の研究を精力的に進めてきた著者による研究のいわばまとめと言えるものであり、大きな研究成果と言える。

深井智朗
『パウル・ティリヒ──「多く赦された者」の神学』
岩波書店、2016年。

序章 彼は「ジキルとハイド」だったのか
第1章 神学者となるまで、あるいは父からの脱出
第2章 世俗の中での神学者、あるいは教会制度からの脱出
第3章 アメリカへの亡命、あるいは民族からの脱出
第4章 ブロードウェーでのデビューと成功まで、あるいは自分自身からの脱出
第5章 永遠の解放と自己演出
終章 パウル・ティリヒという生き方

参考文献一覧
あとがき

 本書は、「ジキルとハイド」という言い方、あるいは「もうひとりのティリヒ」という表現から分かるように、思想家としてその思想体系が研究対象となるようなティリッヒではなく、いわば人間ティリッヒ(あまりにも人間的で人間くさい近代人)を新しい資料によって描きだす試みであり、「体系と生」の繋がりを問うことを目指している。
 本ブログで扱う「思想」「思想史」とは研究スタイルにおいて大きく異なっているが、本来、こうしたさまざまな研究手法は、補足し合うべきものであろう。問題は、そこまで手間暇かけて論じるべき思想家であるのか、あるいは思想家の思想を研究する意義はどこにあるのか、ということにならざるを得ない。
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 これまで本ブログは、2013年度より2015年度まで科学研究費の交付(代表者・芦名定道)を受けて行われた研究を中心に、キリスト教思想研究に関わる情報を発信してきました。しかし、2016年度からの新しい研究プロジェクトに関連した事柄は、主に別のブログで取り扱うことにし、本ブログでは、これ以外の記事について継続的に内容を更新します(新しい科研に関するものも、記事の継続性の観点から一部はこちらでも扱います)。
 なお、本ブログにもしばしばコメントが寄せられますが、多忙のため、原則として応答その他の取り扱いはいたしません。

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