社会脳研究の射程2

 社会脳研究も、脳科学全般、あるいは心理学がそうであるように、きわめて広範な問題領域をカバーしつつある。しかし、その中心に「認知」の問題があることは言うまでもない。自己とを他者の認知と理解、これは社会脳研究でも当然、多くの研究が為されることになる。
 ここで問われる「自己参照性」は哲学的な伝統における精神や自己の議論にも関わる問題であり、人間論を新に展開する鍵となる。「心的自己は自己についての一連の記憶によって形成され、自己概念や自己のアイデンティティの基盤ともなっているとされる。ここでは、自己表象にかかわる自己参照効果(self-reference effect: SRE)を通して、心的自己とかかわる脳内のfMRIによる探求がなされる。」(苧阪、xvi)

苧阪直行編
『自己を知る脳・社会を理解する脳──神経認知心理学からみた心の理論の新展開』
新曜社、2014年。

「社会脳シリーズ」刊行にあたって (苧阪直行)
社会脳シリーズ6『自己を知る脳・社会を理解する脳』への序 (苧阪直行)

1 アレキシサイミアと社会脳 (守口善也)
2 身体的自己の生起メカニズム (嶋田総太郞)
3 自己を知る脳──自己認識を支える脳 (矢追健・苧阪直行)
4 自己の内的基準に基づく意思決定 (中尾敬)
5 自己を意識する脳──情動の神経メカニズム (守田知代)
6 心の理論と脳内表現 (大塚結喜)
7 エージェントの意図を推定する心の理論──知覚脳からアニメーションを楽しむ社会脳へ (苧阪直行)
8 他罰・自罰の方向性を切り分ける外側前頭前野──攻撃性の方向性の神経基盤 (源健宏・苧阪直行)
9 自他を融合させる社会脳──合唱をハイパースキャンする (苧阪直行)

文献
事項索引
人名索引

 脳科学と社会科学・人文科学を繋ぐ上で重要な役割を果たしてきたのが、fMRIによる実験方法であったが、社会脳研究ではさらに先の実験方法の確立が必要であった。今回の論集で、解説されている、fNIRS(機能的近赤外分光法)やハーパースキャンといった方法は興味深い。
「fNIRSはコスト面で相対的に安価であり、装置が移動可能で体動にも比較的強いため、fMRIのように臥位(横たわる)である必要がなく、立位や座位など自然な体位で、ある程度身体が動いても実験できるメリットがある。」(226)
「ハイパースキャニングとは複数の参加者の同時計測による脳イメージングであり、同一装置による計測であるため、複数の参加者が強調や競合状態にあるときの脳の活動が見られるという画期的な方法である」(227)。

 宗教現象の社会脳研究についても、状況が整いつつあるといえる。さて、どうなるだろうか。
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 なお、本ブログにもしばしばコメントが寄せられますが、多忙のため、原則として応答その他の取り扱いはいたしません。

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