キリスト教社会教説の基盤

 本ブログでは、キリスト教社会教説について、キリスト教神学と社会科学とを媒介するものとして位置づけてきた。こうしたキリスト教社会教説の基盤に、聖書の隣人愛が存在することは、容易に想像できるかもしれない。もちろん、社会教説の前提には、人間社会の現実があるのは当然ではあるが。
 では、この聖書的基礎は古代キリスト教世界においていかなる具体的な実践を生み出すことになったのであろうか。この問題を論じるには、キリスト教教父と呼ばれる古代キリスト教思想の担い手たちの文献を精密に読解分析することが必要であり、わたくしは、こうした点については、信頼できる優れた研究に依拠して議論を行うという方針をとってきた。
 このたび、まさにこうした研究が刊行されたので、目次を中心に紹介しておきたい。

土井健司
『救貧看護とフィランスロピア──古代キリスト教におけるフィランスロピア論』
創文社、2016年。

まえがき

序論 問題としてのフィランスロピア──古代ギリシア・ローマ、古代ユダや思想、初期キリスト教──

第一部 カッパドキア教父以前のフィランスロピア論の生成
 第一章 使徒教父と弁証家におけるフィランスロピアの用法と救貧思想
 第二章 アレクサンドリアのクレメンスにおけるフィランスロピア論の形成
 第三章 疫病とフィランスロピア──トゥキュディデス、ディオニュシオス、エウセビオス──

第二部 カッパドキア教父における救貧とフィランスロピア
 第四章 どうすれば貧者の苦しみがあなたには見えるのか──飢餓とカエサリアのバシレイオス──
 第五章 カエサリアのバシレイオスと「バシレイアス」──古代キリスト教における病院施設の一考察──
 第六章 ナジアンゾスのグレゴリオスとレプラの病貧者──第一四講和における救貧思想──
 第七章 フィランスロピアと終末論──ニュッサのグレゴリオスにおける救貧の思想──
 第八章 ニュッサのグレゴリオスにおける救貧と否定神学
 第九章 なぜ神は人間になったのか──受肉論・フィランスロピア・救貧──

結論

補遺一 新約外典文書におけるフィランスロピアの用例
補遺二 「キュプリアヌスの疫病」考
補遺三 ニュッサのグレゴリオスにおける「レプラ」の用法と意味

付 録 バシレイオス 説教「飢餓と旱魃の時期に」

あとがき
エウセビオス『教会史』におけるφιλανθρωπιαならびに関連語の用例一覧
文献表
文献略語表
索引(人名・文書)

 著者が長い間粘り強く取り組んできた研究成果であり、これが著者の生命倫理研究に関連していることも了解できる内容である。
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 これまで本ブログは、2013年度より2015年度まで科学研究費の交付(代表者・芦名定道)を受けて行われた研究を中心に、キリスト教思想研究に関わる情報を発信してきました。しかし、2016年度からの新しい研究プロジェクトに関連した事柄は、主に別のブログで取り扱うことにし、本ブログでは、これ以外の記事について継続的に内容を更新します(新しい科研に関するものも、記事の継続性の観点から一部はこちらでも扱います)。
 なお、本ブログにもしばしばコメントが寄せられますが、多忙のため、原則として応答その他の取り扱いはいたしません。

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