本年度のティリッヒ演習から

 昨年は、ティリッヒ歿後50年ということもあって、京都大学のキリスト教学研究室では、紀要において特集を企画した。日本におけるティリッヒ研究は必ずしも活発と言える状況にはないが、しかし、世界のティリッヒ研究(ドイツ語圏、英語圏、フランス語圏を中心に)は着々と研究成果を生み出している。
 大学における「演習」という科目は、こうした世界的なレベルでの研究を視野に入れて行われるべきものであるが(京都大学キリスト教学専修では、このような意識をもって教育・研究がなされてきた。実際にそれがどの程度実現されてきたかは別にして)、今年度のティリッヒ演習においても、この点は当然意識されている。使用されるテキストは次のものである。

Paul Tillich, Frühe Vorlesung im Exil (1934-1935)
(Ergänzungs- und Nachlaßlände zu den Gesammelten Werken XVII, De Gruyter, 2012)

 ティリッヒは、1933年に大学を停職そして解雇され、その後アメリカ亡命を選択することになる。アメリカにおけるティリッヒは、1933年からコロンビア大学とユニオン神学校で客員講師・教授として講義を行うようになり、最終的には1940年にアメリカ市民権を獲得する。この時期は、ティリッヒ研究においては、前期(1920年代)と後期(1950年代)の間という意味で、中期と言うべきものであるが、従来、この時期のティリッヒの思索については、利用可能な文献の制約があり、十分な解明がなされてこなかった。しかし、しだいにこの状況も未刊行であった資料の刊行によって改善されつつあり、今後の世界的なティリッヒ研究の一つの中心的は、中期ティリッヒの思想研究ということになると予想される。
 今年度の演習に上のテキストを取り上げるのは、そのような意図からである。このテキストは、中期ティリッヒの最初の時期の講義録(コロンビア大学とユニオン神学校での)であり、内容的にも、ドイツ時代=前期の思索を踏まえつつ、後期に繋がる新しい動きも確認することができる。
 特に、ユニオン神学校での1934年~35年に講義された「人間論」(3.Lehre vom Menschen)の中の「3.4」を中心に、中期ティリッヒの思想の特徴を確認することが目指される。わたくしは、博士論文において、前期の意味の形而上学と後期の存在論的人間学とを、弁証神学という問題連関で分析したが、その際の空白時期が、今回の演習のテーマとなるということもできる。
 
 ティリッヒ思想についての研究文献も継続的に刊行されてきているので、それについても、随時紹介を続けたい。
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