ヤスパース研究

 カール・ヤスパースは20世紀の代表する哲学者・思想家の一人であり、日本においても、広く知られ多くの研究がなされてきた。このたび、新しいヤスパースの研究書が刊行された。京都大学文学研究科に提出され博士学位を授与された博士論文に、修正を行ったものである。学位審査に副査として関与した者として、このような形で、学位論文が刊行されたことを喜びたい。

布施圭司
『ヤスパース 交わりの思惟──暗合思想と交わり思想』
昭和堂、2016年。

はじめに

第一章 ヤスパースにおける「実存」の概念と内実──キェルケゴールとの比較
   1 ヤスパースのキェルケゴールへの評価
   2 キリストの模倣──キェルケゴールにおける実存
   3 現実における暗号解読──ヤスパースの実存
   4 両者における現実の意義

第二章 「思惟の思惟」としての哲学的論理学と「交わりへの信仰」としての哲学的信仰
   1 哲学的論理学と哲学的信仰の概観
   2 ヤスパースの哲学的論理学としての包越者論
   3 実存の信仰としての哲学的信仰──思惟を伴う信仰
   4 哲学的論理学と哲学的信仰の関係

第三章 暗号思想の展開
  第一節 『哲学』における「可能性なし絶対的現実」としての「暗号」
  第二節 『真理について』における暗号──内在者における真理への運動
  第三節 『啓示に面しての哲学的信仰』における「暗号」の闘争と暗号からの超出

第四章 交わりの思想の展開
  第一節 『哲学』における実存の規定としての「交わり」
  第二節 『真理について』における「理性」と「交わり」──交わりの非完結性と超越者
  第三節 『啓示に面しての哲学的信仰』における「哲学的信仰」と「啓示信仰」の「交わり」──思惟と啓示

第五章 「交わりとしての思惟」に関する他の思想との比較
  第一節 カントにおける「共通感覚」とヤスパースにおける「交わり」
  第二節 「非対象的思惟」──キェルケゴールの「逆説」、東洋思想の「レンマ」、ヤスパースの「超越する思惟」としての理性
  第三節 田辺元における対他関係とヤスパースにおける「交わり」

結び

ヤスパースの著作と略号

参考文献
謝辞

人名索引
事項索引

 博士論文は現在の課程博士制度が普及する以前には研究者がその研究者生涯を賭けて挑む目標であったが、博士論文の研究者にとっての位置づけは大きく変化したとは言え、やはり、博士論文がきわめて重要な意義を有していることは確かである。実際、博士論文作成は一大事業であり、博士課程に進学したすべての者が到達するわけではない。さらに、それを出版するとなると、その苦労は大変なものである。上に紹介の著書の著者である布施さんが、「謝辞」で、「研究に一区切りをつけられたことは大きな喜びである」と述べているのは、その通りであろう。「一区切り」とは、博士論文刊行がこれまでの研究成果の提示であり、新しい研究の出発点であるということである。布施さんの今後の研究の新展開に期待したい。
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 これまで本ブログは、2013年度より2015年度まで科学研究費の交付(代表者・芦名定道)を受けて行われた研究を中心に、キリスト教思想研究に関わる情報を発信してきました。しかし、2016年度からの新しい研究プロジェクトに関連した事柄は、主に別のブログで取り扱うことにし、本ブログでは、これ以外の記事について継続的に内容を更新します(新しい科研に関するものも、記事の継続性の観点から一部はこちらでも扱います)。
 なお、本ブログにもしばしばコメントが寄せられますが、多忙のため、原則として応答その他の取り扱いはいたしません。

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