『福音と世界』から

『福音と世界』2016. 5(新教出版社)が届きました。早速、内容の紹介を行います。

今回の特集は、「聖書とお金」です。
 21世紀に入って、キリスト思想においては、「経済」の問題が多くの研究者の関心を集めています。経済は、政治や環境との関連も含めて、大きな問題として再認識されつつあり、「経済の神学」の可能性も現実の課題となってきていると言ってよいでしょう。このテーマは、本ブログのメインテーマでもあり、今回の特集は、きわめて興味深いものと言えます。経済の神学の基盤の一つは、「聖書」だからです。

・「旧約聖書とお金」(長谷川修一)
・「恵みとしての献金──なぜパウロはエルサレム教会宛の献金を提案したか」(佐竹明)
・「「タラントの譬え話」でイエスは何を問いかけたのか」(山口里子)
・「地球温暖化時代21世紀の経済活動」(東方敬信)
・「神と富との間──ピューリタニズムの場合」(梅津順一)
・「資本主義に生きる教会」(南野浩則)
 
 今回は、特集以外に、次の論考が掲載されています。
・「なぜ、韓国女神学者協議会は「女性神学フォーラム」を再開しようとするのか」(李恩選。解説・堀江有里)

次に、連載(ほんの一部ですが)から。
・一色哲「南島キリスト教史入門」19
 「南島キリスト教の越境性と八重山地域の教会形成(二) 旧日基伝道による教会形成の経緯と特徴」

「一九二三年、メソジストは八重山伝道から撤退し、それ以降、日本伝道隊に伝道資源を移譲した」、「ホーリネス教会も多くの信徒がいたといわれるが、五年後の三七年に廃止されたと記録されている」、「では、これらの教会の信徒たちはどうなったのであろうか」。(62)
「メソジストや日本伝道隊時代の信徒の一部は、その後、旧日基の教会へと引き継がれていったことがわかる」、「旧日基教会の八重山伝道の発端は、一九二七年六月、日本基督那覇教会の多田武一が、古賀商店の八重山支店勤務という「名目」で石垣島に来島したことにあった。」(63)
「そのような「植村人脈」ともいえる旧日基の信徒・伝道者のネットワークは、喜界島等の南島全体の伝道にも関与している。そして、それは、本土から南島を経由して台湾に至る「民衆キリスト教の孤」を貫流して形成された。」(65)

 貴重な記録である。信徒を教派教団を超えて引き継ぐという事態は、これまで多く存在し、おそらくは、今後日本の地方教会では、大きな課題として意識されることになるだろう。

・内田樹「レヴィナスの時間論」:「『時間と他者』と読む14」
前回を受けて、議論は「被投性」から始まる。
 「レヴィナスはそこに隠された問題の霊的・歴史的次元を開示する。」
 「ハイデガーの「被投性」はただの「投げる」(werfen)の過去分詞形から作られた名詞に過ぎない。そこには「神」も「孤独」も「破壊」も含まれていない。しかし、レヴィナスにとって被投性とは単に「投げいれられていること」ではなかった。」
 「レヴィナスが「投げ入れられた」のは捕虜収容所であり、彼のリトアニアの親族たちが「投げ入れられた」のは強制収容所であった。」(53)
 「ハイデガーにおいて、ドイツ民族の根源的使命から分離されているドイツ人は存在しえないし、存在すべきではないのである。」
「ファリアス」
「たしかにそれは1933年のドイツ人にとっては、強いリアリティと喚起力を持った言葉だと思う。けれども、同じ言葉がユダヤ人にとってはまったく逆の意味を持つことになった。」(54)
 「実存者がそこに根を下ろすこともできないにもかかわらず、まさに実存者が今まさにそこに投じられている「場」のことである。」
 「レヴィナスの鍵語である「ある(イリヤ)」のこれが初出である」、「実存者なき実存すること」という事況を言い表すのにこれほど適した表現はないとレヴィナスは思ったのだろう。」(55)

 このハイデッガー問題は、ハイデッガーに限定された事態であろうか。いずれにせよ、「被投性」も「イリヤ」も、説明を要する表現である。言葉を提示しただけでは、意味は通じない。この意味を通じさせることが、最低、研究者には要求される。
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 これまで本ブログは、2013年度より2015年度まで科学研究費の交付(代表者・芦名定道)を受けて行われた研究を中心に、キリスト教思想研究に関わる情報を発信してきました。しかし、2016年度からの新しい研究プロジェクトに関連した事柄は、今後開設の別のブログで取り扱うことにし、本ブログでは、これ以外の記事について継続的に内容を更新します。
 なお、本ブログにもしばしばコメントが寄せられますが、多忙のため、原則として応答その他の取り扱いはいたしません。

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